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変わる大学入試「高大接続改革」とは? 高校生の学力格差は縮まるのか

LIMO / 2021年5月11日 18時55分

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変わる大学入試「高大接続改革」とは? 高校生の学力格差は縮まるのか

2020年度に小学校の学習指導要領が改訂となり、2021年度からは中学校でも新指導要領が導入されました。中でも英語学習では「覚える英単語が激増する」という話を耳にした方も多いことでしょう。

この教育改革の動きは小学校や中学校だけではありません。高校から大学への進学も大きな変革期を迎えています。いわゆる「高大接続改革」がそれに当たります。

高大接続改革という言葉だけでは何のことやらよくわかりませんが、ざっくり言うと高校〜大学入試〜大学を一体とした改革のこと。「急速に変わりゆくグローバル社会で力を発揮するため、義務教育で育成してきた学力の3要素を高校で確実なものとし、大学でさらに伸ばす」という教育方針です。

ゆとり教育とは違う一貫型改革を目指すが混乱も

かつて「ゆとり教育」の時は義務教育のみが対象となり、大学入試自体は従来のままというズレができてしまいました。それに対して今回は、小学校から大学入試まで「一貫した教育改革」を行うことを文部科学省は打ち出しています。

これまでも大学附属の小中高または中高を持つ私立学校では、それぞれの教育理念に基づく大学までの一貫教育を掲げている場合がほとんどです。そして、基礎学力の定着を図るだけでなく、大学でどういったことを学ぶのかに触れる機会を設け、大学の教職員を招いた授業等を行うことも珍しくありません。

しかし、中学生や高校生でこうした高等教育機関での学びを体験できるのは一握り。多くの子どもたちは公立小に通っており、こうした環境に身を置いてはいません。

今回の「一貫した教育改革」では、先行き不透明な社会を生き抜くために必要なスキルとして、学力の3要素「1. 知識・技能」「2. 思考力・判断力・表現力」「3. 主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」を小中学校で育てていき、高校で定着させ、大学などの高等教育機関に進学した際はさらにその能力を伸ばすことが提案されています。

今年(2021年)1月に行われた、センター試験に代わる「大学入学共通テスト」もその一環で、「知識の理解の質を問う問題や、思考力・判断力・表現力等を発揮して解くことが求められる問題作成を行う」ことを主眼としています。

大学入学共通テストでの記述式導入案も思考力や表現力を測る目的で出てきたものですが、公平性や採点の正確性の確保が困難という懸念から、結果として実施が見送られました。

記述式問題は英語の民間試験活用とともに「高大接続改革」の目玉でした。しかし、それが思うように進められなかったのと同様に、今後、方針が二転三転しないとも限りません。

背景に、勉強する高校生と勉強しない高校生の学力格差

文部科学省が2020年8月に発表した「第18回 21世紀出生児縦断調査」は、2001年出生児を対象とした調査結果です(調査実施は2019年、高校3年生相当・回答者数2万4654人)。

その中の「休日の勉強時間」に関する問いに対し「3時間以上勉強する」と答えたのは全体36.4%でした。一方、「勉強しない」と答えたのは30.3%と、高校生の間に「勉強する・勉強しない」の二極化が生じていることが浮き彫りになっています。

この他にも大学進学以降に問題視されているのが、入試制度の違いによる学生の学力格差です。高校3年生や既卒生の短大・大学への進学率は56.8%を記録し、進学自体は珍しいものではなくなりました。その一方で、入学方法も多種多様になっています。

当初、高大接続改革では「高等学校基礎学力テスト」を実施し、AO入試や推薦入試での受験生の学力確認にも利用する動きがありましたが、結局は見送られています。

こうした経緯もあり、文部科学省は各大学に受験生の学力把握を義務付けました。とはいえ、AO入試に変わる総合型選抜や、学校推薦型選抜(旧推薦入試)で受験生の学力を測る方法として、小論文、プレゼンテーション、口頭試問や実技、科目試験のどれを実施するかは各大学に委ねられたのです。

しかし、総合型選抜や学校推薦型選抜でも一般入試組と遜色のない学力を求め、独自試験や大学入学共通テストを必須としている大学は少数派であるため、高校生間の学力格差問題の解消には時間がかかりそうです。

静かに登場した基礎診断テスト

実施が見送られた「高等学校基礎学力テスト」の代わりのように登場したのが「高校生のための学びの基礎診断」。テスト結果で進学が左右されるわけではないため、大学入学共通テストほどメディアなどで取り上げられることはありませんが、学習内容の定着度や理解度を測るテストです。

高校1年生、2年生向けに2019年度から実施されており、現在は国語、英語、数学の3教科が提供され学校単位で受験します。テストの作成は文部科学省が認定した複数の民間企業によって行われ、各企業によってコース設定も値段設定も様々ですが、3教科型だと概ね1回3000円から4000円程度の受験費用がかかります。

在学している高校がこのテストの導入を決定している場合、大学進学を希望している生徒は模試を受け、学校の定期試験を受け、そして年に最大3回「高等学校基礎学力テスト」もこなさなければいけません。

高校は偏差値によって「難関校」や「中堅校」などと区分けされます。また、大学入学の難易度にもピンからキリまであるのが現実です。文部科学省が推し進める高大接続改革もこうした実情を踏まえ、複数のパターンで大学進学後に学生の能力を伸ばせる仕組みを構築していく可能性もあります。

今後も高校での教育や大学入試に関しては変更点が出てくるという前提で、子どものいる世帯はより一層情報に敏感になる必要がありそうです。

参考資料

第18回 21世紀出生児縦断調査(https://www.mext.go.jp/content/20200902-mxt_chousa01-000009574_1rrrrr.pdf)(文部科学省)

高大接続改革 関係資料(https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shougai/033/shiryo/__icsFiles/afieldfile/2015/09/01/1361400_03.pdf)(文部科学省)

学校基本調査-令和2年度(https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/kekka/k_detail/1419591_00003.htm)(文部科学省)

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