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世界を繋ぐ海を守るために~海を取り巻く諸問題を考える~

LIMO / 2021年5月22日 10時35分

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世界を繋ぐ海を守るために~海を取り巻く諸問題を考える~

ビニール袋やプラスチックスプーンの有料化、また原子力発電所の処理水の海洋放出など、最近は海洋汚染にまつわる話題が巷間を賑わせています。世界的な海の重要性については、SDGs(持続可能な開発目標)においても、17のゴールのなかで「14. 海の豊かさを守ろう」といったかたちで、世界的に解決すべき社会課題として大きく扱われていることからもわかります。

そこで今回は、より多くの方が視野を広げて世界を繋ぐ海を守ることへ関心を寄せていただくために、海を取り巻く諸問題とは何かについて、大きく4つに分けてお伝えしていきます。


海を取り巻く諸問題―①有害物質の生物濃縮

海洋汚染は、陸上や船舶から排出される油・プラスチックごみなどの廃棄物・有害液体物質などにより引き起こされます。このような海の汚染は、ごみの漂着や赤潮などにより景観が損なわれるだけでなく、生態系に影響がある他、生物濃縮によって私たちの健康を害する危険性をはらんでいます。

生物濃縮とは、海洋全体と比較するとごく僅かな量の殺虫剤などに含まれる有害な化学物質が、食物連鎖を繰り返すことで大型の魚や水鳥、クジラやイルカといった生物の体内に蓄積され高濃度になることです。

全ての化学物質が蓄積されるわけではなく、海中に排出されるものや分解されるものもありますが、水銀やマイクロプラスチックなどは蓄積すると考えられています。そうした有害物質を蓄積した海産物を食べてしまうことで人体にも影響が出る可能性があります。

なお、原子力発電所の処理水海洋放出で議論されている水の状態のトリチウムについては、生物濃縮は起こらないといわれています。

海を取り巻く諸問題―②プラスチックゴミ・マイクロプラスチックゴミ

海洋汚染の1つである海洋ゴミは、漁船などから捨てられる釣り糸などの他、私たちが普段の生活で排出するプラスチックゴミが原因です。海洋のプラスチックゴミのほとんどが、陸地から風で飛ばされ、川などから流れてくるものです。海や川でポイ捨てを防止するだけでは、海洋のプラスチックごみを減少させることができません。

最終的に海に到着したプラスチックゴミは、世界中を漂っています。これを海洋生物が食べてしまい、生態系に悪影響を及ぼしています。たとえば、海鳥の消化管がプラスチックで詰まってしまった事例、消化管が傷つけられた事例が相次いで報告されています。また、胃にプラスチックごみが大量に詰まったクジラの死体が打ち上げられることもあり、問題は深刻化しています。

問題はそれだけに止まりません。プラスチックゴミが、波などによって細かく(5ミリメートル以下)破壊され「マイクロプラスチック」となることで、先に述べた生物濃縮が起きつつあります。マイクロプラスチックを食べた魚介類に有害な化学物質が蓄積し、さらに魚介類を食べる我々の人体にも悪影響を及ぼすことが懸念されているのです。

現在日本で回収されたプラスチックゴミの大半は熱源として焼却利用される(サーマルリカバリー)他、資源として中国などのアジア各国に輸出されています。アジア各国に運ばれたプラスチックゴミは、低コストでリサイクルできるものは活用されますが、高コストのものについては廃棄処分されています。

日本から直接的に海洋へ流出するゴミの量は相対的にそれほど多くありませんが、日本から途上国に輸出され、リサイクルされずに廃棄されるゴミの量は相当数であるのが実状です。

こうした事態が問題視され、有害廃棄物の国境を越えた移動を規制する「バーゼル条約」が締結され、2021年以降はプラスチックゴミの輸出ができなくなる見込みです。日本の環境省は国内の全てのプラスチックゴミを国内で処理できるよう準備を進めています。

このように、経済合理性だけでは解決できない点が海洋ゴミ問題の難しいところです。

海を取り巻く諸問題―③富栄養化

富栄養化とは、下水や工業排水の流入などにより流れの少ない湖や河川、入江などの海の水質が悪化することです。赤潮やアオコの発生、魚介類の死滅の原因となります。

富栄養化が進むことによって一時的にプランクトンが増加しますが、夜になると光合成の停止により水中が酸欠状態となり、プランクトンや魚類が死滅、ヘドロが堆積します。悪臭や有毒物質の発生にも繋がるため、生態系を崩さない水質を保つことが肝要となります。

特に新興国においては人口増加によりし尿などの生活排水が増加する一方、上下水道の整備が追いついておらず富栄養化による被害が深刻です。

海を取り巻く諸問題―④海洋酸性化と乱獲による生態系破壊

二酸化炭素排出量が世界中で増える中、海水の酸性度も少しずつ高まっています。大気中の二酸化炭素が、海洋に溶け込んでいるのです。これは、日本の沿岸でも起こっています。多くの海洋生物は海水の酸性度が一定以上になると生息が難しくなってしまいます。

また、乱獲によって海洋資源が枯渇していくのも大きな問題です。国際連合食糧農業機関(FAO)によると、持続不可能なレベルにまで乱獲された海域別魚種資源の割合は1974年が10%、1989年は26%、2008年には30%以上、2015年には33%と急激に増加しています。このまま乱獲が続けば多くの魚が絶滅の危機に瀕することになります。

結び

海洋汚染防止や海洋資源保全の問題は、温暖化問題と構造が似ています。ある国の海が汚染された場合に、その被害に遭うのはその国だけではありません。「私たちの海だから、汚そうが乱獲しようが勝手でしょ」という理屈は通じません。ある国の行為がグローバルな影響を及ぼします。

冒頭でもお伝えしたように、海は世界を繋いでいるわけですから。一つの国が努力をして海洋汚染を食い止めようとするだけでなく、世界全体で一丸となって問題解決に向けて意識を高め、実際に動いていくことが必要不可欠です。

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