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介護費の自己負担「2割」になるかも?財政審が意見書

LIMO / 2021年6月1日 18時35分

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介護費の自己負担「2割」になるかも?財政審が意見書

財務省の財政制度等審議会(財務省の諮問機関)は5月21日、新型コロナウイルスへの対応や社会保障などの財政健全化をまとめた建議(意見書)を、麻生太郎財務相に提出しました。

特に社会保障の見直しについて、75歳(後期高齢者)が急増する2022年度からの3年間は「一貫した改革努力」が必要としました。

ただ財政審の建議と聞いても、なかなか耳慣れないのではないでしょうか。そこで今回は財政審の建議の意味や、建議のなかでも我々の生活に直結する社会保障の分野に絞って解説していきます。

財政審の建議とは

建議とは、立場が上の人や機関について、意見を述べることです。よく似た言葉に「答申」もありますが、これは上位の人や行政官庁の問い(諮問)について、意見を述べることです。

この建議書の内容が、政府が6月に決定する経済財政運営の指針、いわゆる「骨太の方針」に反映されていく、というのが通常の流れです。

それでは、建議書にはどういった内容が含まれているのでしょうか。

高齢者1人を現役世代2人以下で支える時代に

まず、社会保障全般については、「受益(給付)と負担の不均衡を是正し、制度の持続可能性を確保するための改革が急務。団塊の世代(1947~49年生まれ)が後期高齢者になり始める2022年度以降、歳出改革の取組を強化していく必要」があると提言されました。

この内容から、解説していきます。

「日本は少子高齢化が進んでいる」というのは聞いたことがあると思いますが、実は世界の中でも飛びぬけて急速に進んでいます。

財務省によると、2014年において、日本の総人口は1億2708万人。そのうち65歳以上の方は3300万人です。

65歳以上の方ひとりを20~64歳の方2.2人が支えていることになります。

ところが2022年度以降、団塊の世代が65歳となり、基礎年金の受給がはじまることなどから、社会保障の給付金は増大することが見込まれています。

2025年には、65歳以上の方の人口は3657万人に。65歳以上の方ひとりを20~64歳の方1.8人で支えることになると推計されています。 

その後、2040年には第2次ベビーブーム世代(1971年~74年生まれ)が、全員65歳以上になるのです。

その間、20~64歳人口は急速に減少、2040年以降も減少が続くことが見込まれています。つまり、支えなければいけない高齢者が増え続けるのに対し、それを支える現役世代は減り続けるのです。 

こうした状況を踏まえ社会保障、とりわけ費用の大きい医療と介護分野をどう見直していくかが喫緊の課題となっているのです。

それでは、さいしょに医療分野の提言について見ていきましょう。

約370万人が医療費の自己負担増に

さっそく建議書の内容を細かく見ていきましょう。医療分野は増大する医療費を削減するため、以下の内容が提言されました。

後期高齢者医療制度の更なる見直し

都道府県医療費適正化計画の在り方の見直し

国保改革の徹底

生活保護受給者の国保等への加入 など

このように課題は山積みですが、特に後期高齢者医療制度について見ていきます。

先述の通り、少子高齢化が急速に進む中で、社会保障制度は限界を迎えつつあります。

そこで、一定以上の所得のある後期高齢者(75歳以上)の自己負担を増やすことが決まっています。具体的には、2022年度後半より、現在の1割から2割に増える見込みです。

課税所得が28万円以上かつ年収200万円以上の人(単身世帯の場合。75歳以上が複数の世帯は320万円以上)が対象で、約370万人が対象となります。 

こうした医療費の自己負担の割合はご自身の生活に直結する数字なので、しっかりチェックするようにしておきましょう。

介護の自己負担は2割になる可能性がある 

次に、介護分野についての提言も見ていきます。

介護分野は、「利用者負担の更なる見直しやケアマネジメントへの利用者負担の導入など、介護保険給付範囲の見直しを進めることが必要」 という内容が盛り込まれました。

介護費用は現在、約90%の利用者が1割負担となっています。これを"原則2割負担"へ引き上げるよう求めています。 

なぜ、このような意見を求めたのかを解説します。

そもそも、介護保険制度の財源である保険料を支払うのは、原則40歳以上からです。ところが医療制度と同様に、40歳以上人口が2023年をピークに減少し、特に40~64歳の支え手の割合が減少していくことが見込まれています。

一方で、要介護認定率や一人あたり給付費が高い75歳以上の高齢者は今後も増加していきます。 

このような状況のもと、介護保険制度の持続可能性を確保するためには、利用者負担を引き上げて財源を確保するしかないのです。

端的に言えば、後期高齢者の負担が増える話なので、政府も慎重にコトを進めているのです。次の2024年度の制度改正で大きな焦点となるでしょう。

社会保障制度の維持には「痛み」がともなう

ここまで、財政審の建議の意味と、その内容について見てきました。

難しい内容に感じられたかと思いますが、要点はカンタンです。

社会保障制度の活用頻度が高い後期高齢者が増える一方、それを支える主役である現役世代が減る。このままでは現役世代が支えきれなくなってしまうので、高齢者にも自己負担増という「痛み」を飲んでほしい、というのがポイントです。

社会保障制度はあなたの生活に直結する話が多いので、定期的にチェックするようにするといいでしょう。

参考資料

財務省「2025年、高齢者1人を現役世代何人で支える?」(https://www.mof.go.jp/zaisei/matome/thinkzaisei11.html)

財務省「日本の財政関係資料」(https://www.mof.go.jp/budget/fiscal_condition/related_data/202104_03.pdf)

財政制度等審議会「財政健全化に向けた建議」(https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/report/zaiseia20210521/02.pdf)

財政制度等審議会「財政健全化に向けた建議」参考資料(https://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/report/zaiseia20210521/04.pdf)

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