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中高年サラリーマンには無理? 働き方に「越境」が求められる時代に

LIMO / 2021年6月13日 19時35分

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中高年サラリーマンには無理? 働き方に「越境」が求められる時代に

「越境」という言葉が働き方のキーワードとして注目を集めています。越境の意味をググると、“境界線や国境を越えること"と出てきます。自分が子供の頃は、“越境入学" “越境通学"なんて言葉がよく使われていました。最近では“越境飲み"でしょうか。あまり推奨はできませんが。

働き方における“越境"。なんとなくイメージはできるわけですが、その内容や背景を今回は詳しくみていきます。

越境は社外だけでなく、社内にもある

最近のネット記事で「NTTグループの総務・人事部長らが語った『越境活動の意義と期待』」というものがありました。

これは、NTTグループの有志団体「O-Den」が、今年(2021年)4月に開催した「【本業 × 複業】新たな働き方とキャリア形成 ~NTTグループ経営層と越境実践者が語る パラレルワーク最前線~」というオンラインイベントのレポートです。

いくつかの発言を紹介します。まずNTTデータの事例。

「2003年に整備された『プロフェッショナルCDP(Professional Career Development Program)』は、社員一人ひとりが専門性を向上するための仕組み。会社の中でどういったキャリアがあるのかを明確にし、社内で認定していく。認定の機会は年に2回あり、面談などを通じて行われる」

「社員としては自分がどういうキャリアを歩むことができるのかが見えるのと同時に、社内でどういう仕事の機会が得られるのかが分かる。越境は社外だけでなく、社内にもある」

やはり、大企業ですからね。“越境は社外だけでなく、社内にもある"という言葉は、大企業在籍の方には、うなずけると思います。

ちなみにNTTデータでは経験者採用にも力を入れており、現在、数百人単位で経験者採用を進めているとのことです。

社外での出向起業の事例も

次にNTTコミュニケーションズ(NTT Com)の事例。同社では20周年を機に「企業理念検討プロジェクト」を立ち上げているそうです。公募で集まった約100人のプロジェクトメンバーが、会社の未来づくりの指針となる企業理念を検討中とのこと。

また、社内起業から出向起業となった事例もあるそうです。同社ヒューマンリソース部部長の発言から。

「社内ビジネスコンテストから起業したものの、社内だと窮屈で、スピードや人材が追いつかない。ということで、社外に出て出向起業という形で、経産省のサポートをいただきながら代表取締役CEOをやっている社員もいる」。

NTTグループというと、一般的には古い日本型企業の代表で“保守的/硬直的"というイメージがありますが、“越境"にもかなり積極的に取り組んでいるようです。

この背景にあるのが、現在のNTTグループ中期経営戦略「Your Value Partner 2025」。

これは、B2B2Xモデル推進を掲げたもので、情報のデジタル化、IoT、AIといった社会的・技術的な流れのなかで、B2B2Xモデルを加速させていくというものです。

NTTの社長インタビューなどを読むと、“Smart World実現への貢献"が強調されていますし、やはり相当にGAFAを意識しているようです。社会課題解決を事業の主軸におくデジタル・ソリューション企業は、その人材活用において“越境"が欠かせないワードということのようですね。

経産省の考える”越境”と企業人材育成

働き方において“越境"が注目されている背景には、政府の意向もあります。たとえば経済産業省では、「越境学習によるVUCA時代の企業人材育成」というホームページを立ち上げています。VUCAとは“予測不可能"という意です。

ホームページから引用します。

「正解の無い中で自ら課題を発見して解をつくり出し、事業を創造・変革していくことが求められます。イノベーションに必要な、従来のビジネスを深化させつつ、その延長線上ではない新たな事業の探索も行う“両利きの経営"を、どうしたら実現できるのでしょうか」

経産省は、一人ひとりの「キャリア自律」が求められる現在、「越境学習」が重要だと提言しています。経産省の定義では、越境学習とはビジネスパーソンが所属する組織の枠を越え(越境)学ぶことであり、「知の探索」によるイノベーションや、自己の価値観や想いを再確認する内省の効果が期待されるとしています。

キーワードとしては「社会課題の現場(例:NPOへの越境)」「価値観の摩擦から学ぶ」「多様なステークホルダーとの関係構築」などがあげられています。

要は「リカレント教育」の重要性ということですね。リカレント教育とは生涯にわたって教育と就労のサイクルを繰り返す教育制度。実は昨年末の経産省「DXレポート2」でも、DX推進に必要な要素として、リカレント教育がジョブ型雇用と並んであげられています。

中高年は荒野をめざせるか

さて、最後は働き方における“越境"への雑感です。まず、ごく最近までの日本企業、日本人の働き方において越境は“禁じ手"でした。法律にこそ書いていませんでしたが。

他企業のカルチャーなどは全く関心ナシ。大企業では社内他部署も同様。そもそも仕事の仕方が“自分の関係のない業務には口出ししない"が美徳でしたから。

自分は零細規模の企業(広告プロダクション)で長年働いていましたが、楽しみのひとつが中途で入ってくる人間、つまり“越境者"でした。「どんなヤツなのか、なにができるのか」とワクワクしたものですが、これは零細企業の特異例でしょう。

得意先の大企業を見れば、職位が上がれば上がるほど内向きになります。つまり分かりやすく言えば、“越境者"なんて邪魔者だったわけです。経産省の提言は、本来、天地逆転ほどのインパクトがあることだと思います。

実は、若い層は“予測不可能な時代"も“越境"の意味も、ハダ感覚で判っている気がします。自分の働く会社が未来永劫あるなんて思っていませんから。

要は、問題は自分を含めた中高年ということになります。この層は頭ではわかっていても「オレが働くのは、あとxx年だから逃げ切れるな」と思いがち。

数十年前に「青年は荒野をめざす(五木寛之)」というベストセラー小説がありました。当時、この本を読んでいた少年・青年、つまり現・中高年が、そういった熱い気持ちを再び取り戻せるかが、実は日本の未来を握っているのかもしれませんね。

参考資料

NTTグループの総務・人事部長らが語った「越境活動の意義と期待」(https://japan.cnet.com/article/35170240/)(CNET Japan)

越境学習によるVUCA時代の企業人材育成(https://www.learning-innovation.go.jp/recurrent/)(経産省)
 

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