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景気が拡大と縮小を繰り返すのはなぜか。教科書の説明はもう古い!?

LIMO / 2021年9月5日 19時45分

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景気が拡大と縮小を繰り返すのはなぜか。教科書の説明はもう古い!?

景気は自分では方向を変えないので、財政金融政策と海外経済の動きを見ながら景気を予想すべきだ、と筆者(塚崎公義)は考えています。

在庫循環等は過去の話

景気は循環しますが、その理由については教科書の説明と現実が異なっているので注意が必要です。教科書には在庫循環、設備投資循環などが紹介されているのですが、それらは過去のものだからです。

かつて、経済に占める製造業の比率が高く、在庫管理技術も未熟だった頃は、景気が拡大すると各社が一斉に増産し、行き過ぎると在庫が増えるので各社が一斉に減産し、在庫が減りすぎると各社が一斉に増産し…といったことで在庫変動が景気を変動させていたこともあったようです。

しかし、今では経済に占める製造業のウエイトが低く、在庫を持たないサービス業が経済の中心ですし、製造業も在庫管理技術が進歩したので、経済全体に占める在庫変動のウエイトは大きくありません。

また、設備の寿命が概ね10年であった頃は、景気拡大時に設備投資が盛り上がり、その後10年経つと既存設備が一斉に更新期を迎えるので設備投資が著増し、それが景気を拡大するといったこともあったようです。

しかし最近では、コンピューターなど更新サイクルが短い設備投資も多いので、すべての設備が一斉に更新期を迎えるといったことは起きにくくなっています。

今でも在庫投資や設備投資は増減しますが、それが景気の方向を変えるというよりは、企業経営者の予想に反して景気が悪化を始めたために在庫や設備が増えすぎてしまい、それを減らすための減産等が景気の落ち込みを増幅したという程度でしょう。

景気は自分では方向を変えない

在庫循環等の影響が無視できるとすると、景気は自分では方向を変えません。景気が回復してくると、企業の売上が増えるので増産します。そのために企業が失業者を雇うので、雇われた元失業者は給料を受け取って消費をします。それによって企業の売り上げがさらに増え、さらに増産するといった好循環が働くからです。

もちろん、反対に景気悪化の時には売れないから作らない、作らないから雇わない、雇われないから給料がもらえない、給料がもらえないから買えない、買わないから売れないといった悪循環が生じるわけですね。

企業が増産すると設備が不足するので設備投資が行われます。それによって鉄やセメントや設備機械等の需要が増加するわけです。銀行も、景気が拡大している時には企業が黒字ですから設備投資資金を喜んで貸してくれるでしょう。

基本は財政金融政策による景気の方向転換

景気は自分では方向を変えないということは、景気が下を向いている時は景気が無限に悪化していくということになります。それは困るので、政府・日銀が財政金融政策で景気を良くしようと頑張るわけです。

政府は公共投資や減税で需要を増やそうとします。日本では減税より公共投資が使われることが多いようですが、米国では減税の方が多いようです。両者は一長一短ですから、好き嫌いということもあるのでしょう。

日銀は、金融を緩和して景気を回復させようとします。通常であれば、金利を下げることで「金利が下がったから、借金をして設備投資をしたり住宅を建てたりする企業や個人が増えるだろう」と期待するわけですね。

今はゼロ金利で、金融緩和というのは世の中に資金を出回らせることですが、それが景気に与える影響については議論があります。筆者はあまり効果があるとは考えていませんが。

反対に、景気が過熱してインフレが心配な時には、政府は公共投資等を控えめにし、日銀は金利を引き上げることで景気を悪化させようとします。まあ、日本でインフレ抑制が必要になったことは何十年もありませんでしたから、この話は読者の興味を引かないかもしれませんが(笑)。

実際には海外経済の影響を受ける場合も多い

実際には、景気は海外経済の影響を受ける場合が多く、海外の景気が悪化すると輸出が減って、輸出企業が減産をして、雇用を減らして景気が悪化するといったことが頻繁に生じています。

リーマン・ショックによる景気悪化は10年以上前のことですが、記憶に強く焼き付いていますし、それ以外にもITバブル崩壊等々、海外の景気悪化によって国内の景気が腰折れしたことは何度もありました。

バブル崩壊後の長期低迷期に、国内景気が回復を始めても過熱に至らなかったのは、その間に海外の景気が悪化して国内の景気の腰を折ってしまったからですね。もちろん、簡単に腰折れするくらい弱々しい景気回復であったことが背景にあるわけですが。

海外の景気が拡大し、日本の輸出が増えて景気を回復させる場合も、当然あります。もっとも、そうした場合には政府・日銀の必死の景気対策も行われているはずですから、海外の景気拡大の影響度がどの程度であったか、あまり明確でない場合が多いですが。

バブルとその崩壊も景気循環の一因

以上のほか、バブルとその崩壊も景気の方向を変えます。もっとも、バブルが景気を回復させる可能性は大きくなさそうです。景気の底で人々が悲観的な時にはバブルは生じにくいからです。

一方でバブルの崩壊は、景気の絶頂期に何の前触れもなく株価や不動産価格が暴落して景気を急速に悪化させるので、株価予想屋にとってはもちろん、景気予想屋にとっても恐ろしいものです。まあ、投資家の感じる恐怖と比べればかわいいものでしょうが(笑)。

バブルというのは珍しい現象だと考えている人も多いでしょうが、実はそうでもありません。日本で平成バブルが崩壊して10年後に米国でITバブルが崩壊し、その数年後に米国で住宅バブル(リーマン・ショックの原因)が崩壊したわけですから、バブルというのは比較的頻繁に生じるものなのです。

もしかすると、今の株価高騰も、振り返ってみたらバブルだったということになるかもしれませんよ。そうだとすれば、景気の底で金融緩和バブルが発生して景気を回復させたという稀な例なのかもしれませんね。まあ、バブルか否かはその時にはわからないものですから、今がバブルか否か本稿はコメントを控えておきますが。

バブル以外の撹乱要因として、新型コロナのような事態も起こり得ます。あまり考えたくないことですが、大地震も万が一起きれば景気に甚大な影響を与えるでしょう。まあ、そのあたりは景気予想屋が予想できないリスクなので、起きないことを祈るだけですが。

本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。

<<筆者のこれまでの記事リスト(http://www.toushin-1.jp/search/author/%E5%A1%9A%E5%B4%8E%20%E5%85%AC%E7%BE%A9)>>

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