【生き残り戦略】オンワードなどアパレル各社が強化する「OMOストア」の特徴
LIMO / 2021年9月9日 18時15分
【生き残り戦略】オンワードなどアパレル各社が強化する「OMOストア」の特徴
アパレル各社は、店舗とネットを連動させることで消費者が商品を購入しやすくなる「OMOストア」の出店を強化しています。これは顧客がサイトで選んだ服を店舗に取り寄せて試着したり、指名予約した販売スタッフによる接客を受けたりできる仕組みです。
大型サイネージを通じたコーディネート提案や、ECと連動した試着専用店舗の導入など、コロナ禍を機に加速するアパレルOMOの取り組みの具体例を紹介します。
顧客を店舗に誘導し、その体験をサイトに反映させる場所
コロナ禍で店舗への来店者は減少しましたが、ネット通販の売り上げは拡大しています。衣料品の需要も高いことから、アパレル各社はネット顧客の店舗への誘導にも力を入れています。
そこで重要視されているのが、店舗(オフライン)とネット(オンライン)を連動させて顧客の利便性や満足度を高める「OMO」(Online Merges with Offline)施策。「試着したい」などの要望を店舗で満たしながら、その体験をサイトにも反映させる戦略的な場が「OMOストア」と呼ばれる店舗とネットの融合店になります。
従来のアパレル企業は、多くの顧客を相手に同じような商品やサービスを提供してきました。ただ、コロナ禍で来店客が減少したのを機に、顧客ごとにパーソナルな提案を行う手法へと少しずつ舵を切りつつあります。
お気に入りの販売員による接客や、その人に向くコーディネート提案、サイズに合わせた商品の試着など、顧客を“個人”として捉え、その要望に応える取り組みが重要だと気づいたのです。
「OMOストア」はこういった顧客ニーズをすくい上げ、ブランドへの満足度を高める重要な役割を担っているといえるでしょう。
オンワードは取り寄せ試着や接客スタッフ指名、サイズ直しなどを展開
オンワードは今年4月、「ららぽーとTOKYO-BAY」をはじめ、「イオンモール羽生店」、「mozoワンダーシティ店」と3店のOMOストアを相次ぎオープン。
自社サイト「オンワード・クローゼット(ONWARD CROSSET)」の商品を店頭に取り寄せして試着できるなど、店舗とサイトを組み合わせた顧客目線のサービスを掲げています。
たとえば「クリック&トライ」サービスは、「オンワード・クローゼット」で扱う商品を最大5点まで店舗に取り寄せて試着できるものです。ネット限定商品や店頭にはないサイズの商品も取り寄せることができ、試着や購入が可能です。
「パーソナルスタイリング」サービスには、販売スタッフが画面越しに個別接客する「オンライン接客」と、店舗でスタイリング提案を受けられる「サロン接客」があります。どちらも、接客担当の販売スタッフをオンライン上で選んで指名できます。
「カスタマイズ」サービスは、人気ブランド「23区」の定番パンツ3型から商品型番、カラー、サイズを選択し、ウエストと裾丈のサイズを自分向けに直せるものです。サイトのシミュレーションを使って商品を確認したうえで予約すれば店舗で採寸してもらえ、仕上がった商品は自宅に配送されます。
大型デジタルサイネージでコーディネート提案するアダストリア
アダストリアも今年5月、自社サイト「ドットエスティ」と連動した初のOMOストアを「ららぽーとTOKYO―BAY」と「ミッテン府中」に出店しました。
「ドットエスティ」が持つ機能をデジタルサイネージで実店舗に落とし込み、顧客の買い物をサポートしながら関係性を高めるサービスを提供しています。
店内に設置した大型デジタルサイネージでは、「ドットエスティ」の人気コンテンツ「スタッフボード」を展開。全国の約3,000人から選ばれた人気販売スタッフが、モニターを通じてブランドを超えたコーディネートを提案します。モニターに映るQRコードを読み取るとその販売スタッフにアクセスでき、他のコーディネート確認やフォローも可能です。
また、ミラー型のサイネージを使いスタッフに1対1でスタイリング相談ができる「パーソナルスタイリング」では、事前にネットでお気に入りスタッフの接客予約を行い、自分だけのスタイリングアドバイスを受けることができます。
手に取った商品のバーコードをミラー型サイネージにかざすと詳細が表示され、色違い商品なども確認できます。カメラマークを押せば試着の動画が撮影でき、気になる後ろ姿や動いたときの雰囲気がわかるという利便性も特徴です。
さらに、「ドットエスティ」の会員バーコードをかざすと自分の購入履歴が出るため、それら商品とのコーディネートをスタッフに相談することも可能。そのほか、試着したい商品をサイトで事前予約することや、ネットで購入した商品を店舗で受け取れるサービスも手がけています。
D2Cブランド「コヒナ」も期間限定の「試着専用店舗」を設置
実店舗とサイトの連携の動きは、オリジナルブランドのアパレルをネットで販売するD2C(※)企業にもみられるようになりました。
身長155㎝以下の女性向け向けブランド「コヒナ(COHINA)」を手がけるnewnは、今年5月に4か月限定の「試着専用店舗」を東京・表参道に出店しました。
※自ら企画、生産した商品を、小売店などの中間業者を挟まず、主にECサイトで消費者とダイレクトに取引する販売方法。
同社は流通用の型紙に合わない小柄な女性をターゲットとし、小規模アパレル企業として実績を上げています。スカート丈など、よりサイズ感へのこだわりが強い顧客が多いことから、試着ニーズが高いと判断したそうです。店内のマネキンも販売スタッフもすべて身長が155cm以下で、小柄女性の試着の悩みを解決する工夫が盛り込まれています。
在庫を置かない「試着専用店舗」なのが特徴で、試着後にその場で決済し商品は配送される仕組みです。商品のバーコードを読み込めば、さらに詳細な商品情報もサイトで確認できます。
店舗は予想以上に好評だったため、10月末まで期間を延長して展開することになりました。
まとめ
今回取り上げた事例以外でも、アパレルのOMO施策は加速しています。百貨店から小規模なD2Cブランドまで、店舗とサイトを融合した取り組みはますます増えていくことでしょう。
消費者が店舗とサイトを併用することが当たり前になった現在、こういったビジネスモデル変革は避けられず、「OMOストア」はアパレル企業の勝敗を分ける重要なカギになるかもしれません。
参考資料
ONWARD CROSSET STOREオープンのお知らせ(https://www.onward.co.jp/news/2021/04/ocs.html)(株式会社オンワードHD)
ONWARD CROSSET Store(https://crosset.onward.co.jp/feature/ocs/)(株式会社オンワードHD)
OMO型店舗プレスリリース(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001270.000001304.html)(株式会社アダストリア)
試着専用路面店舗プレスリリース(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000018.000032762.html)(株式会社newn)
COHINA Limited Fitting Store(https://cohina.net/collections/cohina-limited-fitting-store)(株式会社newn)
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