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「IT業界の人手不足はウソ」は正しい? 日本に本当に足りないものは何か

LIMO / 2021年9月21日 18時15分

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「IT業界の人手不足はウソ」は正しい? 日本に本当に足りないものは何か

長びくコロナ禍の影響で、企業業績の二極化が取り沙汰されています。たとえば観光・鉄道・飲食などで苦しい業績が続く一方、「巣ごもり消費」をとらえた業界では好調な企業も多いようです。

今回は、最も業績好調とも言われているIT業界について考えてみます。

IT業界の人手不足は決定的

近年、全業界の有効求人倍率が1.2倍~1.6倍ほどで推移している中、情報処理・通信技術者(ITエンジニア)の有効求人倍率は1.5倍~2.5倍程度で推移しており、IT人材の不足がうかがえます。

コロナ禍の影響で有効求人倍率がおおむね下がった2020年においても、ITエンジニアは1.5倍(全体は約1.2倍)です。

有効求人倍率から見た場合、ITエンジニアは確実に人手不足と言えます。その一方、ネットなどで検索すると「IT業界の人手不足はウソ」という声もあります。

たしかに経験者が前提であったり、求められるスキルも高いため、ITエンジニア採用の敷居は決して低くありません。“なぜ人手不足の業界で、そんなに敷居が高いのか"というギモンもあるようです。

どちらが正しいのか、中・長期的な観点でIT業界をみてみましよう。

2030年にはIT人材が45万人ほど不足する

経済産業省の「IT人材需給に関する調査」レポートでは、IT需要の伸びが中程度(2~5%)だとしても、生産性上昇率が0.7%の場合、2025年には36万人ほどが、2030年には45万人ほどが不足すると試算されています。

この経産省レポートからみても、IT人材が将来的に不足するのは決定的だと思われます。そのような中で、先ほどの「IT業界の人手不足はウソ」という声が一部にあるのはなぜなのか。

その理由を経産省のレポートで探してみると、同レポートでは「先端IT人材」「従来型IT人材」という分類が考察されています。

同レポートから引用します。

「IT分野では、技術の進展が早く、人材に求められるスキル等も急速に変化するため、IT人材の需給は、IT需要の構造変化にも影響される。特に近年、AIやビッグデータ、IoT等、第4次産業革命に対応した新しいビジネスの担い手として、付加価値の創出や革新的な効率化等により生産性向上等に寄与できるIT人材の確保が重要となっている。」

これが「先端IT人材」ですね。これに対して「従来型IT人材」は、「依然としてIT需要の大半を占めるものの、中長期的には徐々に市場規模が縮小すると予想され、従来からのIT需要に対応するIT人材の需要は減少すると見込まれる」とされています。

従来型IT人材は減少へ

経産省のレポートからは、人手不足が進行する「先端IT人材」と、今後、減少していく「従来型IT人材」という流れがみてとれます。「IT業界の人手不足はウソ」という一部の声は、「従来型IT人材」というカテゴリーに軸足を置いて業界をみているのかもしれませんね。

先端IT人材についてさらに考えると、この先端IT人材とは、「DX(デジタルトランスフォーメーション)人材」と同義と考えて間違いないでしょう。

DXではよく「攻めのIT」「守りのIT」という言葉が使われます。これは米調査会社ガートナーが2015年に提唱したバイモーダルITの概念が元ネタで、攻めのITとは“ビジネスを変革(トランスフォーメーション)するIT"を意味します。

それに対して「守りのIT」とは、既存システムの保守など従来型IT人材がカバーする分野になります。そしてDXの本質は、「守りのIT」から「攻めのIT」への転換なのです。

日本のDXスタートとなった、経産省の2018年「DXレポート ~ ITシステム『2025年の崖』克服とDXの本格的な展開~」でも、日本企業の複雑化・老朽化・ブラックボックス化した既存システムは、国際競争での遅れや経済の停滞などの要因となるレガシーシステムと断じています。

IT業界も構造が変化していく

IT業界の構造も大きく変わっていきます。その大きな流れの一つがITの内製化でしょう。これはユーザー企業が外部ベンターにシステム製作を発注するのではなく、システム製作を社内で行うことです。

内製化が進む背景として、さまざまな理由があげられていますが、一言でいえば“DXが進めば必然的にそうなる"ということでしょう。デジタルが便利なビジネスのツールではなく、経営領域と直結し、もっと言えばビジネスの主戦場がデジタル上に移行すれば、システム開発も自ずと内製化が進むということです。

これはアメリカなどIT先進諸国の事例をみても明らかです。このIT内製化とも関連する日本のユーザー企業とベンダー企業の関係については、今年の夏に発表された『DXレポート2.1』でも言及されています。

以下、引用します。

「両者(ユーザー企業とベンダー企業)はデジタル時代において必要な能力を獲得できず、デジタル競争を勝ち抜いていくことが困難な『低位安定』の関係に固定されてしまっている。」

極端な言い方をすれば、現状認識として日本におけるユーザー企業とベンダー企業が“ダメダメな関係"であるということです。

日本のIT業界は、非常に混迷した(やりがいがあるとも言える?)業界だと思います。そして、そこで10年も経たないうちに45万人ほどの人材が不足する・・・ちょっと、気の遠くなるような話のような気もします。

参考資料

IT人材需給に関する調査(https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/houkokusyo.pdf)(経済産業省、2019年3月)

DXレポート ~ ITシステム『2025年の崖』克服とDXの本格的な展開~(https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/pdf/20180907_03.pdf)(経済産業省、2018年9月7日)

DXレポート2.1(DXレポート2追補版)(https://www.meti.go.jp/press/2021/08/20210831005/20210831005-1.pdf) (経済産業省、2021年8月31日)

一般職業紹介状況(令和2年12月分及び令和2年分)について(https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000192005_00010.html)(厚生労働省)

一般職業紹介状況(長期時系列表 e-Stat)(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450222&tstat=000001020327&cycle=1&tclass1=000001157346&tclass2val=0)~令和3年7月(厚生労働省)

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