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日本の過剰サービスと労働力不足の解決法~郵便の土曜日配達廃止に見習おう

LIMO / 2021年10月10日 19時45分

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日本の過剰サービスと労働力不足の解決法~郵便の土曜日配達廃止に見習おう

郵便の土曜日配達が廃止になったのは日本経済にとって良い変化なので、他社にも見習ってほしい、と筆者(塚崎公義)は考えています。

郵便の土曜日配達が廃止に

今月から、郵便の土曜日配達が廃止になりました。気付いた人は多いでしょうが、困った人は少ないのではないでしょうか。そうであれば、廃止は大正解ということですね。郵便局のコストは大幅に下がったでしょうし、利用者からの不満が特にないなら、廃止して良かったということですから。

郵便の翌日配達も、徐々に翌々日に変更されていくようですが、こちらは気付いた人が少ないかもしれませんね。気付いた人が少ないということは、困った人も少ないのでしょうから、これも大正解だったということですね。

本当に急ぐ人は速達を使えば良いわけですから、深刻な問題は生じないでしょう。速達の代金分だけ利用者全体が支払うコストは上昇するので、「値上げだ」ということになりますが、目くじらをたてるほどのことではなさそうです。

もしかすると、少子高齢化による労働力不足で配達員の賃金が上昇し、郵便料金の値上げが必要になるはずのところ、土曜日配達の廃止によって値上げが不要になったのだとしたら、利用者全体としては大きなメリットですね。

日本経済全体としても、郵便配達員の労働力が有効活用できるようになったわけで、事態の改善だと言えるでしょう。少ない労働力で同じ量の郵便物を処理できるようになったわけで、労働生産性が向上したと言って良いでしょうね。

社会情勢の変化への対応という位置付け

今回の変化は、社会情勢の変化に対応したものと考えることも可能でしょう。週休2日制の浸透によって、土曜日に配達する必要のあるビジネス書類が大幅に減ったわけですから。個人宛の郵便は、そもそも急ぐものは少ないので、受取企業の土曜日休業の影響が大きいわけですね。

インターネットの普及により、急ぐ手紙は郵便物ではなくメール等々でやりとりされるようになったということも大きいでしょう。ダイレクトメールや挨拶状などは急ぎませんから。

あとは、世の中の労働者が週休2日なのだから郵便配達員も土曜日を休みにすべき、といった発想もあったはずです。土曜日に出勤すると代休が必要になり、面倒な上に土曜日出勤を嫌がる配達員も多いでしょうから。

しかし、筆者が何より重要だと考えているのは労働力不足です。新型コロナ不況の前には労働力不足が深刻でしたし、新型コロナが収束すれば再び労働力不足の時代が来るわけで、労働生産性を向上させるインセンティブが大きかったということだと思います。

過剰サービスを減らして労働生産性の向上を

廃止しても特に不満が出ないサービスは「過剰サービス」ですから、廃止が望ましいはずです。不満が少ししか出ない場合も、過剰サービスと呼んで良いでしょう。そうした観点からは、日本は過剰サービスが非常に多いと思います。

たとえば、宅配便が翌日届いて時間帯の指定もできるというのは過剰サービスだと思います。もちろん、急ぐものもあれば、時間帯指定をしたい場合もあるでしょうが、そうした場合は特急料金を払えば良いのではないでしょうか。

郵便局は事実上の独占企業だから土曜日配達の廃止が可能だったけれども、宅配便業界は過当競争なので廃止をしたらライバルに客を奪われてしまう、といった恐怖心をお互いに持っているのかもしれませんが、そこを何とかクリアしてほしいと思います。

談合すると独占禁止法に違反するでしょうから無理でしょうが、皆が苦しい時には1社がやめれば他社も喜んで追随するかもしれませんから。あるいは、「ゆっくり便割引」などという制度をどこかの会社が作れば良いのかもしれませんね。

少数者向けサービスの対価を皆が負担すべきか

土曜日に配達を必要としている人、急ぐ人も少数ながら存在しているはずで、そうした人は速達料金を払わされるので今回の変更に不満でしょう。しかし筆者は、「急ぐ人がかわいそうだから、今次変更を撤回しろ」というつもりはありません。

少数の急ぐ人のための制度が多くの労働力を必要とするのだとすれば、その分のコストは急がない多くの人たちも含めて皆で負担しているわけで、多くの人たちの利益を考えれば今次変更は良かったと思っています。

この考えを一歩進めると、たとえば離島への郵便配達を毎日行なうべきかといったことも考える必要があるでしょう。離島の人が急ぐ郵便を出したり受け取ったりするケースはそれほど多くないでしょうから、たとえば1日おきの配達にすれば良いかもしれません。

それによりコストが大幅に削減できるでしょうから、労働力不足による賃金上昇分が吸収されて郵便料金の値上げが不要となるかもしれません。そうなれば、多くの利用者のメリットとなるはずです。

重要なことは、コストは利用者が払っているということです。「離島の人がかわいそうだから、毎日配達しろ」と言うのであれば、「離島の人がかわいそうだから、毎日配達しろ。そのためにコストがかかる分は俺たちの郵便料金を値上げしても良いから」と言わなければならないわけで、その覚悟が一般利用者にあるのか否かということですね。

本稿は以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。

<<筆者のこれまでの記事リスト(http://www.toushin-1.jp/search/author/%E5%A1%9A%E5%B4%8E%20%E5%85%AC%E7%BE%A9)>>

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