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弱者への現金給付は必要か? 格差是正・景気回復効果、財源問題を考える

LIMO / 2021年10月17日 18時45分

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弱者への現金給付は必要か? 格差是正・景気回復効果、財源問題を考える

弱者への現金給付を岸田総理は考えているようです。考え方は良いと思いますが、具体策を論じる際には検討すべき点も多い、と筆者(塚崎公義)は考えています。

弱者にお金を配ると格差是正と景気回復に効果

本稿では、日本国民の20%を経済的「弱者」、5%を「富裕層」、その他を「庶民」と呼ぶこととしましょう。弱者のイメージとしては、老後の蓄えが底を突きそうな高齢者、シングルマザー、非正規労働者として生計を立てているワーキング・プア等々でしょう。

弱者の多くは生活に苦しんでいるでしょうから、人道的な見地から彼らに支援することは望ましいと言えそうです。弱者にお金を配ることによって、景気対策としての効果も見込まれます。

庶民にお金を配っても老後のために貯金してしまうかもしれませんが、弱者は生活に困っているので、お金を配れば使うでしょう。それによって消費が拡大して景気が良くなると期待されるわけです。

もっとも、貧富の格差はどれくらいが望ましいのかという点は国民的な議論が必要です。貧富の格差が大きすぎるのは問題ですが、小さすぎても皆が真面目に働く意欲を失なってしまいかねませんから。

子供に配ったら少子化対策になるか

子供(子育て世帯)にお金を配ろうというアイデアもあるでしょう。この場合には、格差是正の効果は小さいでしょう。富裕層の子供にも配るわけですから。

それでも、景気対策にはなりそうです。富裕層は別として、庶民であっても子育て世帯は一般的な世帯よりも消費性向が高い(所得のうちで消費にまわる割合が大きい)でしょうから、配ったお金が消費される可能性が高いからです。

子育て世代にお金を配ることが少子化対策になるか否かは、政策が時限立法なのか恒久的な措置なのかによって異なるはずです。

時限立法であれば少子化対策としての効果は薄いでしょうが、恒久的な措置であれば「それなら子供を育てることができそうだ」と考える人が増えるからです。

そのあたりは、政策立案に際して何を目的とするのか、しっかり議論する必要があるでしょうね。

そもそも景気対策は必要なのか

もっとも、そもそも景気対策が必要なのか否かということも議論すべきでしょう。もしも新型コロナがこのまま収束すれば、景気が順調に回復して景気対策が不要になるかもしれないからです。

何と言っても、株高で潤っている富裕層はもちろんのこと、庶民もお金を持っています。10万円は受け取ったし、最近飲み会に行っていないので、懐が暖かいという庶民が多いからです。

彼らは、緊急事態宣言が解除されたので活発に旅行や飲み会に行くでしょう。景気は短期間で回復するかもしれません。それなら景気対策は不要ですね。

一方、新型コロナが再度蔓延するようなことになれば、再び行動制限が課せられるでしょうから、観光業や居酒屋などが集中的に被害を被るはずです。その場合には、コロナ以前からの弱者、コロナの被害を被った観光業や居酒屋等に集中的に資金を配布すべきでしょう。

新型コロナが再度蔓延する中で広くお金を配る景気対策では、庶民は再びお金が使えない状況に陥るでしょうから、消費が刺激されず、効果が薄いからです。そうではなくて、お金がなくて消費ができていない弱者と被害者に配れば消費が増えることが期待できますから。

財源はどうするのか

弱者にお金を配るとして、それが景気対策であるならば、財源は国債発行で賄うべきです。せっかく景気対策の支出をしても、別のところで増税をしてしまっては景気が回復しないからです。

一方で、景気対策は不要だけれども格差是正や少子化対策としてお金を配るということであれば、増税によってファイナンスすることが望ましいでしょう。

筆者は、不労所得である遺産に税を課す相続税や、東京一極集中を是正する効果が見込める固定資産税などの増税を主張していますが、その説は超少数派なので、金融所得課税なども検討しても良いのかもしれませんね。

財源というと、「子供手当を富裕層には配らないことにすると、配布総額が減るので財源の手当が少なくて済む」といった議論がなされるかもしれませんが、筆者はそれには反対です。

富裕層の人数は少ないので、それによって節約できる費用は限られている一方で、支給対象から富裕層を除くための手間がかかって配布作業が遅れたりしかねないからです。

富裕層にも子供手当等は支払った上で、累進課税の税率を引き上げるとか、金融所得課税の増税を検討するといったことの方が遥かに望ましいと思います。シンプルな制度であることは重要ですから。

弱者と強者の定義も難しい

富裕層というと高額所得者を思い浮かべる人が多いのですが、日本には所得がほとんどないのに巨額の資産を持っている高齢者が大勢います。彼らは、低所得者(弱者)として住民税の支払いが免除されていたりするわけです。これは国民感情に反していますね。

今回も、弱者に現金を配るということで、金融資産を持つ低所得者に現金が配られることがないように注意すべきです。

富裕層と弱者の判定を、所得と資産の両方によって行なうように制度を変更すべきでしょう。具体的にどうするかは、国民的な議論が必要でしょうね。

資産を判定に使うとなると、誰がどれだけ資産を持っているのかという情報が必要となります。そのためには、マイナンバーを用いて銀行預金や不動産登記情報等を一括管理する必要があるでしょう。

マイナンバーの活用拡大に否定的な人は多いのですが、行政の効率化が国民全体の利益であることを考えれば、ぜひとも推進してほしいものです。

本稿は以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。

<<筆者のこれまでの記事リスト(http://www.toushin-1.jp/search/author/%E5%A1%9A%E5%B4%8E%20%E5%85%AC%E7%BE%A9)>>

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