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地域猫活動は迷惑なのか?数字を見て考える

LIMO / 2021年11月21日 17時45分

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地域猫活動は迷惑なのか?数字を見て考える

特定の飼い主がいない猫に去勢手術をほどこし、終生を地域で見守る「地域猫」活動。この活動に対しては、さまざまな意見があるようです。地域には色々な意見をお持ちの方がいるため、意見を調整しながら進めていく必要があります。
本記事では、猫に関連する数値データを見ながら検証しました。

猫の殺処分数・譲渡数推移

野良猫は「特定の飼い主が居ない猫」のため、総数はデータとして把握が難しいです。
今回は視点を変えて「ペットとして飼われている猫の数」「殺処分または譲渡された猫の数」の推移を通して検討してみます。

まず、ペットとして飼われている猫の数は、一般社団法人ペットフード協会「全国犬猫飼育実態調査」によると、下記のとおりです。

2016年:930万9千頭

2017年:952万6千頭

2018年:964万9千頭

2019年:977万8千頭

2020年:964万4千頭

そして、環境省「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」によると、全国の猫の直近5年での殺処分数は下記の通りです。年を追うごとに減っていることがお分かりいただけるでしょう。

2016年:6万7000頭

2017年:4万6000頭

2018年:3万5000頭

2019年:3万1000頭

2020年:2万7000頭

続いて、同資料から猫の譲渡数推移を確認します。譲渡数は横ばい傾向です。

2016年:2万3000頭

2017年:2万6900頭

2018年:2万7000頭

2019年:2万5600頭

2020年:2万5900頭

このようにしてみると、殺処分されてしまうのは残念とはいえ、ペットとして飼われている個体が964万4000頭いるのと比べると、前提として保健所に収容されるのはごくわずかでした。また、猫の殺処分数は平成元年度(32万8000頭)をピークとして一貫して減少傾向にあります。殺処分に至る猫の数は年々減り、現状の延長線上でも改善に向かっていることは認識したほうがよいです。

そして、保健所に収容された猫のうち、譲渡されたものは2万5900頭いて、残念ながら殺処分された猫が2万7000頭いるので、保健所に収容された猫の半数は再びペットとして飼われていることになります。

なお、2020年に殺処分された2万7000頭の猫のうち幼齢個体は1万8000頭おり、67%ほどが「子猫」です。今後も、継続して殺処分数を減らすには、「新しく生まれる野良猫を減らす」のが重要なポイントでしょう。

野良猫は具体的に何が問題なのか

では、野良猫は実際にどのような問題を生んでいるのでしょうか。一般的には、野良猫が繁殖することで猫が増え、あたりに糞や尿をまき散らすことが問題になりやすいです。

以前の記事でも言及した通り、猫の尿の臭いは強烈なので、トイレを管理できない猫の数が増えるほど、具体的な問題になると考えられます。

東京都の「『飼い主のいない猫』との共生をめざす街ガイドブック 問題解決の ABC(平成30年度改定版)」によると、

過密都市東京において、猫を屋外で飼うことは、交通事故や、感染症の罹患、猫同士のけんかによる負傷など、猫にとっての危険だけでなく、糞尿被害等の近隣への迷惑を引き起こすことにも繋がる

と記載があり、主だった近隣への被害としては糞尿被害があげられています。各自治体の野良猫対策のページでも糞尿被害についての言及があるので、野良猫による最もメジャーな迷惑行為が「糞尿被害」と言っても良さそうです。

地域猫活動を途中で投げ出すと迷惑になる。最後まで付き合う覚悟を

一方、猫自体ではなく人間による行為も問題になっています。野良猫をかわいそうに思い、「餌やり」をする人の行為がその一つです。このような行為をする人は、善意から行っていることが多く、その行為によって野良猫を増やし、糞尿被害をはじめとした被害を生むことに思い至っていない方もいるでしょう。地域猫活動を開始する際は、餌やりをする方との信頼関係構築が重要とのことです。

地域猫活動は、

善意から餌をやる人

猫が好きな人

野良猫を追い出したい人

特に興味がない人

といった、猫に対する様々な気持ちを持っている人々を説得し、理解してもらいながら進めなくてはいけません。そのため、「猫が好き」「猫を守る」という気持ちだけでは続けるのは難しいです。

実際、地域猫活動は

地域に住み着いた野良猫を把握・調査する

それらの野良猫に不妊去勢手術を施す

地域猫のエサやりやトイレの設置についてルール化して管理する

必要に応じて地域猫を病院に連れていき、診療を受けさせる

というところまで含んだ活動です。決して「地域で猫を放し飼いする」行為ではありません。そして、地域猫活動は利害調整の複雑さから失敗してしまうことも多く、埼玉県は「地域猫活動実践ガイドブック」の中で「失敗しないためのポイント」を挙げています。

多くの人に関わってもらう

地域に住む人の理解を得る

新たな捨て猫の防止

「新たな捨て猫の防止」とは、「地域猫ボランティアが管理しているエリアだから」という理由で捨て猫を置いていく人がいるためです。このような人の行為をも防ぐ必要があります。

つまり、地域猫ボランティアは、実際は「様々な利害を抱えた人たちの落としどころ」なのです。言い換えると、立ち上げた人・団体の利害調整能力が特に強く求められる活動です。

地域猫活動は、野良猫自身の命にも関係しますので、気軽に活動を始める際に、今一度、継続できるかどうか慎重に検討する必要があるでしょう。

参考資料

一般社団法人ペットフード協会「全国犬猫飼育実態調査」(https://petfood.or.jp/data/)

環境省「犬・猫の引取り及び負傷動物等の収容並びに処分の状況」(https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/statistics/dog-cat.html)

東京都「『飼い主のいない猫』との共生をめざす街ガイドブック 問題解決の ABC(平成30年度改定版)」(https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kankyo/aigo/yomimono/animal_nekogaid.files/30neko-guidebook.pdf)

埼玉県「地域猫活動実践ガイドブック」(https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/3441/497733.pdf)

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