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原油価格が暴落する可能性はあるのか。産油国や投機家の思惑

LIMO / 2021年11月28日 17時15分

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原油価格が暴落する可能性はあるのか。産油国や投機家の思惑

産油国のカルテルが崩壊すれば、原油価格が暴落する可能性もあり得ます(塚崎公義、経済評論家)。

原油価格は需給と投機で動く

原油価格は、実際に原油を売る人と買う人の需給に加え、投機でも動きます。もっとも、投機は需給が逼迫しそうな時には買い、緩みそうな時には売る傾向があるでしょうから、多くの場合には需給による価格変動を拡大する要因と考えて良いでしょう。

したがって、現在は高騰を続けている原油価格ですが、需給が緩みそうだという思惑が広がれば、暴落する可能性もないとは言えません。

原油価格は日本経済や世界経済への影響が大きく、消費者にとってもガソリン価格等々が気になるところですが、加えてインフレ要因として金融引き締めを招くことになれば、株価への影響も大きいかもしれず、大いに注目されるところです。

産油国の協調が崩れれば暴落の可能性も

世界の景気が回復を続けるとすれば、原油の需要急減は考えにくいでしょうが、中国のバブル崩壊による需要急減といった可能性はあるかもしれません。より注目されるのは、産油国によるカルテルの失敗です。

産油国は協調減産をしていますが、各国が約束を守らずに増産に走れば、供給が増加して原油価格が下落するでしょう。それを見越した投機筋の売りが価格を暴落させる可能性には要注目です。

暴落のメカニズムは「囚人のジレンマ」

協調減産というカルテルは、囚人のジレンマ状態にあるので、各国が増産するインセンティブは決して小さくありません。

囚人のジレンマというのは、下の表のように、「相手が約束を守ろうと守るまいと、自分は約束を破った方が得だ」とお互いが認識している状況のことです。

カルテルが維持されるならば、自分だけ増産すれば大儲けができるでしょうし、カルテルが維持されないならば、自分だけ減産を続けるのはバカバカしいと各国が考えているわけですね。

A、Bの売値と、両社の利益

(/mwimgs/2/9/-/img_29d02c128b36d3da71acedef7b3d287b27384.jpg)

拡大する(/mwimgs/2/9/-/img_29d02c128b36d3da71acedef7b3d287b27384.jpg)

値段が下がると生産量が増える可能性も

通常は、値段が上がると売り注文が増えるのですが、原油の場合には値段が下がると売り注文が増えるという可能性も否定できません。

産油国の中には歳出を原油代金で賄っているところもあるでしょうから、そうした場合は原油価格が下がると多くの原油を生産・販売して歳出に必要な売上代金を確保する必要があるからです。

そうだとすると、一度カルテルが崩れて価格が下落を始めると、それがさらなる生産・販売の増加を通じて、いっそう価格を下落させかねません。それを見越した投機家の売りが価格下落を促進する可能性もあるでしょう。

経済学用語で言えば、供給曲線が右下がり(値段が下がると売り注文が増える)になっているため、需要曲線と供給曲線の交点である価格が、供給曲線のシフトによって「逃げ水」のように遠くへ行ってしまうということでしょうか。

投機家以外の「投機」にも要注目

価格高騰が予想される時には、投機家は原油(実際には先物でしょうが)を先回りして買うので、価格が下落し始めると買ってあった原油を売りに出すはずです。それが価格をいっそう下げる効果を持つかもしれません。

ここで注目すべきなのは、一般人も投機家と同様のことをしているかもしれないということです。石油会社も石油を使う企業もガソリンを使う個人も、価格上昇を見越して多めに在庫を持っているかもしれませんから。

そうした人々は、原油価格が下落を始めると多めに持っている必要がなくなるので、しばらく原油を買わなくなるでしょう。つまり、需要が落ち込むのです。

もっとも、これについては「高いから購入量を絞って在庫を減らしている」という主体が多いかもしれません。その場合には、値下がりが需要を増やすかもしれないので、そこは何とも言い難いところですが。

「フル生産に見合う需要量」があるか否かが重要

カルテルが崩壊して産油国がフル生産を開始したとしても、原油価格が暴落するとは限りません。需要が強ければ、価格が少し下がったところで需要と供給が一致するかもしれないからです。

景気回復で需要が拡大しているという可能性はあるでしょう。中国のバブル崩壊が懸念されていますが、それさえなければ需要は結構強いかもしれません。

一方で、地球温暖化への懸念から化石燃料には長期的に逆風が予想されていて、それが化石燃料への新規投資を抑制している可能性が気になります。筆者は業界事情に詳しくありませんが、想像に難くないでしょう。

そうだとすると、最近しばらく新規油田が開発されておらず、世界的な原油の生産能力が落ちているかもしれません。あるいは、世界的な石炭の生産能力が落ちているために石炭不足を原油で補おうという発電所が増えているかもしれません。

そうした動きが現在すでに生じているか否かを筆者は知りませんが、将来的にはそうしたことが起きる可能性は十分考えられるでしょうから、原油を多めに確保しておきたいという需要者は意外と多いかもしれません。

今後の原油価格について考える際には、様々な可能性に注目して行きたいですね。

本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。

<<筆者のこれまでの記事リスト(http://www.toushin-1.jp/search/author/%E5%A1%9A%E5%B4%8E%20%E5%85%AC%E7%BE%A9)>>

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