中国の金融政策の枠組みを考える〈HSBCアセットマネジメント レポート〉
LIMO / 2022年2月24日 7時45分
中国の金融政策の枠組みを考える〈HSBCアセットマネジメント レポート〉
中国人民銀行(PBOC)は、金融政策を行うにあたって市場ベースの金利アプローチを採用
米連邦準備制度理事会(FRB)とは異なり、PBOCは短期金利のみならず中期金利の調整も実施
金利が経済に影響を与える波及経路を改善するため、PBOCは、より長期の金利調整も視野にしている
PBOCは足元、新たな金融緩和サイクルを開始。新型コロナウイルス感染症が折に触れ国内で発生していることや不動産セクターの不調に伴う経済の減速に対応している
PBOCはここ2ヶ月間、相次いで利下げを実施。直近では7日物リバースレポ金利、中期貸出ファシリティーレート、最優遇貸出金利(LPR)をそれぞれ10ベーシスポイント引き下げている。
この一連の利下げは、PBOCが採用している他の政策手段とともに、多くの人々にとり混乱を招くような専門用語の羅列状況となっている。そこで今回、中国の金融政策についてわかりやすく紹介する。
定量的な指標から金利へ
PBOCの目標とするところは、「通貨価値の安定を維持し、それにより経済成長を促進する」ことであり、FRBの「インフレ抑制と成長促進」という2つの目標によく似ている。
実際、20年前と比較すると、PBOCの金融政策は運営面でFRBと類似してきている。PBOCの易綱総裁がさまざまな場面で表明しているように、量的指標(マネーサプライM2など)を監視・制御する政策体制から、金利の市場メカニズムに依存する体制へ移行を進めている。
中国経済が発展するにつれ、「量的指標と経済の相関性は徐々に低下していくだろう」としている。従って先進国と同様に、市場金利を用いて物価水準を調整する金融政策がより適切であると考えられている。
PBOC版の「FFレート」
FRBの主な政策の焦点は、超短期のFFレートのコントロールを通じて、家計や企業の意思決定を左右する長期金利に影響を与えることにある。
PBOCには、FFレートに相当する「預金取扱機関7日物レポレート(DR007)」という基準金利があり、預金取扱機関が相対で担保を出してこの金利で借入れできる。
PBOCはリバースレポ公開市場操作を通じてDR007を調整することができる。7日物リバースレポ金利を下げるということは、PBOCが担保を出して銀行からより低いレートでの資金借入れを誘導することを意味する。
この変化を実現するために、PBOCは、銀行がこの下げられたレートで中央銀行に貸出を行うまで、銀行システムに流動性を供給する。システム内の流動性が高まることで、インターバンク市場でのDR007レートも低下する。
基準金利を調整するためのその他の手段
FRBと同様に、PBOCもDR007を望ましい範囲に維持するためのその他の手段も保持している。その1つが、超過準備に対する支払金利である。
仮に、中央銀行に預けた超過準備に支払われる金利が0.5%であれば、銀行は0.5%未満の金利で同業他社にお金を貸すインセンティブが働かず、実質的に、DR007の下限金利が設定されることになる。
一方、PBOCの常設貸出ファシリティー(SLF)とは、銀行が一時的な流動性ニーズを満たすため、中央銀行による信用枠への迅速なアクセスを可能とするものである。
仮に、PBOCがSLF金利を2%に設定した場合、銀行は2%超の金利で同業他社から借入を行うインセンティブがなくなり、事実上DR007の上限金利が設定されることになる。
中期金利の調整
ここまでは、PBOCの金利政策はFRBとかなり似ている。主な相違点としては、PBOCには中期政策金利(1年物中期貸出ファシリティー(MLF)レート)があり、これは、銀行が1年ベースで中央銀行から有担保で借りられる制度である。
MLF金利の引き下げは、銀行の資金調達コストを削減し、理論的にはこれらの銀行が顧客に課す金利は下がるはずである。
銀行が最も信用度の高い顧客に課す金利はローンプライムレート(LPR、最優遇貸出金利)と呼ばれ、PBOCが貸出市場の需給のダイナミクスを測るためにモニターしている基準金利でもある。
その結果、PBOCは、イールドカーブを超短期金利に限定せずに、より幅広に制御できるため、金利が経済に影響を与える波及経路を改善することが可能となる。
図表1は、PBOCによる政策金利の変更を受けて、銀行が提示する基準金利が調整され、それが経済活動を促進する市場金利に波及することを示したものである。
最近の出来事は?
図表2は、PBOCが最近実施した金融緩和政策を列挙したものである。それは、昨年12月中旬に発表された預金準備率の50ベーシスポイントの引き下げから始まった。
その後のリバースレポ金利、MLF金利、LPRの引き下げは、金融緩和サイクルの始まりを確固たるものにしている。新型コロナウイルス感染症が折に触れ中国で発生しており、特に国内の都市封鎖の実施を勘案すると、これは進行中の景気回復の足かせとなっている模様だ。
また、不動産セクターの流動性の低下により、近年のGDP成長の大きな原動力が失われている。このような理由に伴う経済の減速に対応するため、PBOCは金融システムへの流動性の拡大を通じて、景気刺激を図っている。
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