国公立でも大学4年間で「約480万円」コロナ禍の国の教育ローンの利用者は「平均世帯年収606万円」
LIMO / 2022年3月11日 14時50分

国公立でも大学4年間で「約480万円」コロナ禍の国の教育ローンの利用者は「平均世帯年収606万円」
この時期大学の入学が決まったご家庭も多い一方で、気になるのが大学にかかる費用です。
高校については約8割の生徒が「高等学校等就学支援金制度」を利用しており、以前より教育費の負担は軽くなっている家庭が大半です。
ところが、大学・短期大学・高等専門学校・専門学校への進学を対象にした「高等教育の修学支援新制度」については、対象者が「住民税非課税世帯及び、それに準ずる世帯の学生」のためほとんどの家庭は対象外です。大学にかかる費用は奨学金を利用するにしても、必要な金額を準備しておかなければなりません。
日本政策金融公庫が、64歳以下の男女、かつ高校生以上の子供を持つ保護者(n=4700名)を対象に行った令和3年度「教育費負担の実態調査結果」では、高校入学から大学業までにかかるお金をアンケート調査しています(2021年12月20日公表)。
ここでは大学入学~卒業までの期間をクローズアップして、実際にかかるお金を調査結果から見ていきましょう。
私立理系は「入学費用」で90万円近くかかる
まず、大学入学費用から見てみましょう。ここでいう大学入学費用は「受験費用、大学納入金、入学しなかった学校への納付金」の合計金額をいいます。

日本政策金融公庫「令和3年度教育費負担の実態調査結果」を元に筆者作成
国公立大学:67.2万円
私立大学文系:81.8万円
私立大学理系:88.8万円
入学しなかった学校への納付金・受験費用においてはほとんど差が見られませんが、入学金にあたる大学納付金では国公立で「28.6万円」、私立文系で「40.6万円」、私立理系で「46.6万円」と大きな違いあります。
大学4年間でかかるお金は国公立でも481.2万円
国立大学の授業料は、国が定める金額を標準(標準額)として各国立大学がそれぞれ金額を設定しており、国の標準額は「入学料28万2000円、授業料53万5800円」です。つまり、国立大学4年間の学費は「28万2000円+(53万5800円×️4年)=242万円5200円」と計算できます。
ただ、在学時には学費以外にも「教科書や通学費、施設設備費」なども必要になります。国公立・私立大学別で大学入学時から卒業までの4年間でかかる費用の合計は以下の通りでした。

日本政策金融公庫「令和3年度教育費負担の実態調査結果」を元に筆者作成
国公立大学:481.2万円
私立大学文系:689.8万円
私立大学理系:821.6万円
安いと思われがちな国公立大学でも、4年間で500万円近くかかっています。私立大学理系に至っては800万円越えです。
最近の文低理高の流れは、保護者にとっては厳しいと言わざるを得ません。
コロナ禍で生じた誤算
未だに収束が見えない新型コロナウイルスの感染拡大ですが、受験する子ども達の学習環境や受験は異例づくし。サポートする保護者においても、想定外の事態に戸惑ったという方も多かったのではないでしょうか。
調査結果においても、約1割の世帯で新型コロナウイルスの感染拡大の影響があったと回答。
具体的な影響として最も多かったのは「自宅以外からに通学をやめて自宅から通学するようになった」が22.3%、「学校を変更した」(21.5%)、「海外留学を諦めた(または海外留学中だったが、学校を退学・休学した)」(17.7%)と続き、「進学を諦めた(または在学中の学校を退学・休学した)」(12.0%)となっています。
また、実際に「国の教育ローン」を利用することになった事情ついては、保護者の事情と子供の事情でそれぞれ以下の通りでした。
【保護者事情】
「貯金や貯蓄ではまかないきれなかった」…51.9%
「収入が少なく、不安だった」… 28.1%
「子供にかかる教育費が予想以上だった」…22.6%
「家賃や住宅ローン返済で毎月の支払が大きかった」…16.4%
【子供の事情】
「高額な授業料(目安:年間120万円以上)がかかる学校を志望していた」…46.7%
「自宅外通学が必要だった」…27.8%
「長期間(目安:5年以上)通う学校を志望していた」…8.3%
「大学院などに更に進学することとなった」…7.0%
保護者事情・子供の事情のどちらにおいても、準備していた教育資金以上にお金がかかったということが分かる内容になっており、それを踏まえて教育資金を準備しておく必要がありそうです。
国の教育ローン利用の平均世帯年収「606.0万円」
前年度の調査結果によると、調査対象4606世帯のうち、国の教育ローンを利用したのは345世帯。利用世帯の平均年収は606.0万円になっています。
年収別では「600万円以上800万円未満」が27.6%と最も高く、次いで「400万円以上600万円未満」が26.5%、「800万円以上」が26.3%ですから、幅広い層が国の教育ローンを利用していることが分かります。
国税庁の令和2年度の「民間給与実態統計調査」にある年齢階層別平均給与では、大学生をもつと考えられる年齢の男性で平均年収が「45~49歳:621万円」「50~54歳:656万円」ですから、国の教育ローンを利用した世帯は年収が決して低いわけでもありません。
800万円以上の世帯といえば、むしろ平均より高い給与をもらっている階層だといえます。
まとめにかえて
大学(学部)の進学率は年々上昇しており、2020年度の大学(学部)進学率は54.9%。大学だけでなく、短期大学(本科)や高等専門学校なども含めると進学率は83.8%になっていますから、5年、10年先はさらに高くなっているかもしれません。
経済的負担だけ考えれば親としてはできれば国公立に行ってほしいものですが、誰しも考えることは同じですから狭き門であり、そこを通るための塾費用などの負担は必要になるといえます。
どういう選択をするにしろ教育費が高額であることに変わりはありませんから、出来るだけ早い時期から貯めていくスタイルが、結局のところ一番の王道なのかもしれません。
参考資料
日本政策金融公庫「令和3年度教育費負担の実態調査結果」(https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/kyouikuhi_chousa_k_r03.pdf)
文部科学省「国立大学等の授業料その他の費用に関する省令」(https://www.kyoto-u.ac.jp/uni_int/kitei/reiki_honbun/w002RG00000953.html)
国税庁「令和2年分 民間給与実態統計調査」(https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan/gaiyou/2020.htm)
文部科学省「令和3年度学校基本調査(確定値)の公表について」(https://www.mext.go.jp/content/20211222-mxt_chousa01-000019664-1.pdf)
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