介護保険料は40歳になったら徴収される?具体的にどのくらい増額になるのか
LIMO / 2022年3月20日 18時45分
介護保険料は40歳になったら徴収される?具体的にどのくらい増額になるのか
介護保険制度の基本と展望を厚生労働省のデータから解説
40歳になると、これまでの健康保険料に加えて介護保険料が徴収されるようになります。40歳を目前にして、実際にどのくらいの負担増になるのか気になる人もいるのではないでしょうか。今回は、介護保険料はどのようにして決まるのか、そして介護保険の制度が生まれた背景についても解説します。
介護保険料の負担がなぜ発生するのか
介護保険制度は2000年4月に発足しました。それまでは、「介護は同居している家族が行うものである」という認識が強く、実際、配偶者や娘といった女性が行っている実態が多くみられていたのも事実です。
しかし、2000年を目前にし、高齢者の人数の増加や、核家族化、さらには共働き世帯が増加した背景を受け、介護については社会全体で支えなければならないという考え方にシフトしてきました。これが、介護保険制度が生まれた背景です。
そして、私たちは介護保険料を納めることで、介護が必要になった際には公的な介護保険サービスを利用できることになっています。公的な介護保険サービスには、自宅に住みながら利用できる「居宅サービス」や、施設に入所することで利用できるサービスなどの介護サービス以外にも、自立した生活ができるように支援する介護予防サービスなどがあります。
介護保険制度の概要
介護保険制度において、被保険者となる人はその年齢によって「第1号被保険者」、「第2号被保険者」に分けられます。
・第1号被保険者とは?
介護保険制度で第1号被保険者となる人は、満65歳以上の全ての人です。そして、介護や支援が必要になった際には、その原因を問わず、介護保険サービスを利用することができます。
・第2号被保険者とは?
一方、第2号被保険者とは満40歳以上65歳未満で、医療保険に加入している人が対象となります。そして、国が定めている病気(16種類)が原因で介護や支援が必要になった際に介護保険サービスを利用することができます。国が定めている16種類の病気には、がんや脳血管疾患などが該当します。
介護保険料はどのようにして決まる?
では、実際に40歳から支払う介護保険料はどのようにして決まるのでしょうか。
・会社員など(健康保険組合や協会けんぽ加入者)
健康保険組合や協会けんぽ加入者であれば、健康保険料と同様にその人の標準報酬月額を基に決定します。ちなみに協会けんぽ(東京都)の場合、健康保険料率である9.84%に介護保険料率1.8%を加えた11.64%を負担することになります。
仮に標準報酬月額が50万円であれば、40歳までの健康保険料(自己負担額)は毎月2万4600円ですが、40歳以上になると2万9100円となります。健康保険組合などの場合、保険料は事業主との折半になるため、このくらいの負担額で済むというわけです。
・自営業者など(国民健康保険加入者)
自営業者など国民健康保険へ加入している場合、その保険料は「医療分」と「支援分」の合計額ですが、40歳以上になるとそれに「介護分」が加算されます。
「介護分」に該当する介護保険料については所得によって段階分けされています。
そしてその段階に応じた基準額に保険料率を乗じて介護保険料が計算される仕組みとなっています。
ちなみに東京都千代田区の場合で、年間の所得が400万円の人であれば40歳までの保険料は月額約3万1000円ですが、40歳以上になると介護分が加算され、3万6000円となります。また、国民健康保険の保険料は前年の所得を基に計算されることも覚えておきましょう。
給与所得者で年収600万円、もしくは自営業者で収入から経費を引いた所得額が400万円くらいの人であれば、ひと月あたり約5000円の負担増、年額にすると6万円の負担増になることが分かります。
介護保険制度の今後
日本では少子高齢化が進んでおり、3年後には2025年問題といわれる、「団塊世代の人が全員75歳となり全人口の約30%を高齢者が占める時期」に突入します。それによって介護保険制度の財政悪化も懸念されています。
実際、介護保険制度が始まった時の介護サービス利用時の自己負担割合は全員1割となっていましたが、一定以上の所得がある人に対しては段階的に負担割合を増やす措置が取られ、現在では最大3割の自己負担割合となっています。
とはいえ、一定以上の所得がある人の割合はそこまで多くなく、公的年金のみで生活している高齢者が多いのも事実です。
これらの状況を鑑み、介護保険制度については、今後、「介護保険料徴収開始年齢の引き下げ」や「介護保険料の引き上げ」などが検討され始めています。しかし、それを実現するにあたっては、現在の年金制度と同様、若い世代に対する社会保険料負担が大きくなりすぎる点も考慮する必要があるでしょう。
今後の介護保険制度においては、世代間の負担が偏ることのないような工夫を行い、制度の内容を充実していくことが求められます。介護保険制度は2005年から3年ごとに改正が行われており、直近では2020年に改正が行われています。次回の改正時にはどのような改正内容が盛り込まれるのか、ぜひとも注目しておきたいところです。
参考資料
厚生労働省「介護保険制度について」(https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000614771.pdf)
協会けんぽ「令和3年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」(https://www.kyoukaikenpo.or.jp/~/media/Files/shared/hokenryouritu/r3/ippan/r30213tokyo.pdf)
厚生労働省「第1回介護施設等の在り方に関する委員会」(https://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/09/dl/s0927-8e.pdf)
厚生労働省「介護保険制度の概要」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/gaiyo/index.html)
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