銀行はこれからどうなるのか? テクノロジーが生み出す未来の4つの姿
LIMO / 2018年1月25日 12時20分
銀行はこれからどうなるのか? テクノロジーが生み出す未来の4つの姿
デジタルウォレットを誰が握るのか
メガバンクを中心とした銀行の人員削減に関し、2017年は様々な報道がありました。これから銀行はどうなるのでしょうか。『銀行はこれからどうなるのか(https://www.amazon.co.jp/gp/product/4295400734/ref=as_li_qf_sp_asin_il_tl?ie=UTF8&tag=navipla-22&camp=247&creative=1211&linkCode=as2&creativeASIN=4295400734&linkId=a0209203cb8318c63ac60743a1e1faf5)』等の著書があるテクノロジーアナリストの泉田良輔氏に話を伺いました。
――昨今の銀行のリストラ報道についてどのように見ておられますか。
泉田良輔(以下、泉田):まずは、そうした報道の背景にある、銀行がまさに直面しつつある状況について整理させてください。
銀行は国内だけではなくグローバルにおける低金利により運用に困っています。その中で過去と比べて利ざやを十分に確保できているとは言い難いでしょう。
名目GDPはアベノミクス以降拡大してきたものの、貸付金残高の対名目GDP比率は横ばいのままであり、貸出機会を取り巻く環境がアベノミクスを通じて変わったとは言えません。
――預金者の銀行に対する見方も変わってきているのでしょうか。
泉田:預金者からすれば、長らく続いた低金利により、見方によっては「金庫」として利用しているだけ、と言えるような状況になっているのではないでしょうか。決済としての機能は当然ながらあるものの、資産運用をする場ではなくなったというのが本音でしょう。
買い物によるポイントは利子とは全く異なりますが、自分がよく利用するサービスのプリペイドで事前にチャージすることでポイントを獲得し、買い物の際に利用できるのであれば、消費者からすれば、銀行に預けるよりもプリペイドで前払いしている方が「お得」という状況も発生します。つまり、消費者目線で見た場合、銀行預金と競合するのは必ずしも銀行によるサービスというわけではありません。
加えて、フィンテックという言葉もよく耳にするようになりましたが、テクノロジーにより金融とユーザーの関係が変わりつつあります。テクノロジーを拡張することで、ユーザーは同じサービスでも、過去と比べてますます便利に利用できるようになってきています。ユーザーとの接点を保てない、また拡張していくことができないプレーヤーは淘汰されることになるでしょう。
急激なもの、緩やかなものも含めて変化が起きつつあることで、銀行も変わらざるを得なくなってきているのだと見ています。
――銀行の将来の姿をどのように見ているのでしょうか。
泉田:今後の銀行の姿を大きく4つに分けています。ひとつは「モバイル型」、次いで「クラウド型」、そして「プライベートバンク型」、最後に「投資銀行型」です。
個人向けに決済、資産運用、借入といった機能のプラットフォームとなるのが「モバイル型」です。現時点でのテクノロジー環境を考えれば、ほとんどはPCやスマートフォン上などで完結することになるでしょう。こうした環境がさらに進めば、銀行の店舗やATMですら、これまでの規模では必要とされなくなる可能性もあります。
「クラウド型」は取引先のデータ・・・決算データだけではなく商流を含めたやり取りのデータ・・・を握るプレーヤーが必ずしも銀行という姿をしていなくとも企業の資金繰りなどの機能を果たすことを想定しています。現状では商流をもとにファイナンスをつけている商社がありますが、EC大手のアマゾンのような異業種も、今後様々なデータをもとに商流の中で取引先の資金繰りをサポートできる機能で存在感を増してくる可能性があります。
「プライベートバンク型」はすでに金融サービスとして存在していますが、富裕層向けに資産運用のアドバイスをするものです。テクノロジーで人間の仕事が機械に奪われる可能性もありますが、このタイプは人材のコミュニケーション能力やスキルに依存する比率が高いので、簡単にはテクノロジーで置き換えられないと見ています。
「投資銀行型」も「プライベートバンク型」と同様に取引先企業とのリレーションシップや人材のスキルに依存します。銀行の本来あるべき姿とも言えますが、企業の設備投資計画などの資金需要に応じて最適な資金調達方法を検討し、その調達を実現する機能です。こちらも簡単には機械に取って代わられることはないでしょう。
――銀行は相変わらず人気の就職先です。銀行で将来必要とされる人材はどのようなタイプでしょうか。
泉田:これまで見てきたように「プライベートバンク型」や「投資銀行型」の人材、また「モバイル型」や「クラウド型」を支えるエンジニアが銀行にとって今後のカギとなる人材と言えるのではないでしょうか。
銀行の存在そのものは必要でしょうし、その機能は今後も必要とされます。ユーザーが必要とする領域の人材は今後も需要があると思います。
――銀行間の競争はどのようになるのでしょうか。
泉田:ユーザーが銀行に求めるものが選別され、そうしたニーズをくみ取ることができる銀行に預金が集まるでしょうし、そうでない銀行からは預金が流出してもおかしくはありません。その差を分けるのがテクノロジーだと思います。また、そのテクノロジーをユーザーに対してどのように便利に提供できるかがプレーヤー間の勝敗を決めていくのだと思います。
これは銀行間の競争だけではなく、ECプレーヤーやネット証券、仮想通貨を扱う取引所など、資産運用や日頃の生活でお得だと期待できるプラットフォームに資金がシフトしてくるシーンもあるでしょう。そうしたデジタル空間でユーザーが資金を管理する「デジタルウォレット」を誰が押さえるのかが今後の注目ポイントだと思います。
(https://www.amazon.co.jp/gp/product/4295400734/ref=as_li_ss_il?ie=UTF8&linkCode=li3&tag=navipla-22&linkId=b01a5678b3b4d71f30ca4209c432718d)
銀行はこれからどうなるのか(https://www.amazon.co.jp/gp/product/4295400734/ref=as_li_tl?ie=UTF8&camp=247&creative=1211&creativeASIN=4295400734&linkCode=as2&tag=navipla-22&linkId=4e40951b8561868f02e34200d9fef501)
著者:泉田良輔
出版社:クロスメディア・パブリッシング
単行本、 255ページ
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