大阪バブル:異常な地価上昇でインバウンド景気は転換点に?
LIMO / 2018年4月18日 20時20分
大阪バブル:異常な地価上昇でインバウンド景気は転換点に?
宿泊代高騰で外国人観光客数増加が減速か
2018年の公示地価、大阪圏の商業地が引き続き大幅上昇
国土交通省が3月27日に発表した公示地価(2018年1月1日現在)によると、商業地が+1.9%上昇(3年連続のプラス)、住宅地が+0.3%上昇(2年連続のプラス)、全用途が+0.7%上昇(3年連続のプラス)となりました。いずれの上昇率も昨年を上回っています。
今回の特徴の1つは、地価上昇が地方都市に波及したことですが(詳細は省略)、3大都市圏における商業地の上昇が続いていることも見逃せません。特に、大阪圏の商業地の地価上昇が際立っています。昨年(2017年)は、商業地の「上昇率」で全国上位5位全てを大阪市が占めました。
今年は地方都市の商業地が総じて上昇したため、昨年のような独占状態にはなりませんでしたが、全国の上昇率第2位(商業地)に、昨年トップだった道頓堀1丁目にあるフグ料理店「づぼらや」前がランクインしています。ちなみに、当該地(づぼらや前)の地価上昇率は、以下のように推移しています。
平成27年:+ 9.8%(-----)
平成28年:+40.1%(2位)
平成29年:+41.3%(1位)
平成30年:+27.5%(2位)
注)上昇率は対前年比。カッコ内は上昇率の全国順位、平成27年は10位圏外。
このように、直近わずか4年間で約+2.8倍に跳ね上がっていることが分かります。元々地価が高い大都市圏での商業用地価が、4年間で3倍弱に上昇するのは、明らかに“異常”と言っていいでしょう。
2015年以降の「来阪外客数」は急拡大
大阪の商業地価の上昇を支えている最大の要因は、何と言っても外国人観光客の急増です。
訪日外国人観光客のうち大阪に立ち寄った「来阪外客」は、2012年203万人(+28%増)→2013年263万人(+24%増)→2014年376万人(+43%増)→2015年716万人(+91%増)→2016年941万人(+31%増)→2017年1,111万人(+18%増)と推移しています(出所:大阪観光局、2017年は速報値)。特に、2015年以降の伸び率が急拡大していることがわかります。
ちなみに、東京に立ち寄った「来都外客」は、2012年556万人(+36%増)→2013年681万人(+22%増)→2014年887万人(+30%増)→2015年1,189万人(+34%増)→2016年1,310万人(+10%増)→2017年1,390万人(+6%増)であり、大阪に比べると明らかな頭打ち傾向が見られます(出所:東京都産業労働局、2017年は筆者推定)。
もちろん、訪日外国人観光客の中には、東京と大阪の両方に行く人も少なくないと見られますが、大阪の人気が高まっていることは間違いありません。外国人観光客にとって、大阪の魅力は何でしょうか?
外国人の人気スポットは道頓堀、大阪城、USJの3つだが…
前出の大阪観光局が実施した『関西国際空港 外国人動向調査結果』(平成29年度第3期)によれば、「訪れた場所」の第1位が道頓堀(難波、心斎橋)、第2位が大阪城、第3位はユニバーサル・スタジオ・ジャパン(以下USJ)でした。
また、「訪れた結果お勧めしたいと思った」第1位がUSJの86%、第2位が道頓堀の75%、第3位が海遊館の67%、大阪城は第4位の64%という結果でした(訪問サンプル件数が極端に低いものを除く)。
平成28年度調査結果と比較すると、大阪城の満足度がやや低下しています。また、訪問順位では日本橋が大きく伸長したものの、満足度は非常に低い結果となっているようです。
ただ、本当にザックリ言うと、道頓堀、大阪城、USJの3か所の人気が依然高く、通天閣、梅田スカイビル空中展望台、観覧車“HEP FIVE”などを引き離しているのが特徴と言えましょう。
東京観光にはない“コンパクトな利便性”が理由の1つに
この調査結果に大阪が人気観光地である秘密、とりわけ東京との比較において、そのカギがあると考えられます。
まず、これら人気スポットは4位以下も含めて、道頓堀を中心に集約されています。確かに、“徒歩圏にある”というのは言い過ぎですが、たとえば、午前に大阪城、午後にUSJ、夜に道頓堀というように、その気になれば1日で周ることが可能です。
仮にUSJで1日丸々費やしたとしても、翌日に大阪城、通天閣、梅田スカイビル、HEP FIVEを全て周ることは難しくないはずです。このコンパクトな利便性は、東京観光では難しい、というよりも不可能かもしれません。
また、アジア系外国人が非常に興味を示す「城」が東京にないことも理由の1つに挙げられましょう。
加えて、大阪に宿泊することで、京都、神戸、奈良などに訪問しやすくなることも、来阪外客の大幅増加傾向を支えていると考えらえます。
大阪のインバウンドバブルにピークアウトの兆し?
こうした状況を踏まえて、大阪は代表的な“インバウンドバブル”と言われてきました。しかし、その傾向に少し変化が出つつあります。
前述した通り、2017年の来阪外客数は前年比+18%増と6年ぶりの低い伸び率に止まり、日本全体への訪日外国人旅行客数の増加率(2,869万人、+19%増)をわずかですが下回りました。これも同じく6年ぶりのことです。
大阪のインバウンドバブルがピークアウトしたと判断するのは時期尚早でしょうか?
地価上昇による宿泊代高騰が外国人観光客数の増加を抑制
来阪外客数の伸び率が鈍化した最大の理由は、ホテルなど宿泊施設数の収容限度、および宿泊代の高騰と考えらえます。大阪では現在もホテル等の新規建設や客室増設が進んでいるようですが、折からの地価高騰の影響を受けて、その増加ペースが鈍化していると見られます。
また、宿泊施設数が増加したとしても、宿泊代の高騰はさらに続くと考えられるのが実情です。外国人観光客の増加が地価高騰をもたらし、その地価高騰が外国人観光客の増加を抑制してしまっているとも見られます。
大きな転換点を迎えようとしている大阪のインバウンドバブル、今後の行政側の対応が注目を集めるでしょう。
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