日経平均株価の膠着状態は大きな変動の前触れか?(その2)
LIMO / 2018年8月29日 8時20分
日経平均株価の膠着状態は大きな変動の前触れか?(その2)
「柏原延行」のMarket View 2018年8月28日
皆さま こんにちは。アセットマネジメントOneで、チーフ・グローバル・ストラテジストを務めます柏原延行です。
本コラムは、前回の記事『日経平均株価の膠着状態は大きな変動の前触れか?(https://limo.media/articles/-/7008)』の続きです。
また、私ごとで恐縮ですが、週刊エコノミスト 2018年9月4日号の29ページに、私の寄稿文が掲載されています。よろしければご覧ください。
前回のコラムでは、わが国の株式市場が膠着状態に陥っているという評価をお話した上で、その理由として、「悪材料が目白押しであったこと」と「2018年4~6月期の経済成長が底堅い状況であることなど」が綱引きをしていると考えていることをご説明した。
そして、このような膠着状態のあとには、株価の大きな変動が起こるという見方もあることも紹介した。
今回のコラムでは、株価の大きな変動が起こるとすれば、どのようなきっかけが考えられるかを説明する。
ごく簡単な結論としては、下ブレのきっかけとしては、悪材料の顕在化である。逆に、上ブレのきっかけとしては、景気・企業収益の好調さに対する認識が高まることなどであると思われる。
前回の記事では、(夏休みの影響という考え方もあるのでしょうが、)7月中旬頃から日経平均株価は、ざっくりいって22,500円近辺でのレンジ取引が続いており、膠着状態に陥っていると評価できると考えていることをご説明しました。
この背景には、 「影響が心配なんだけれども、その材料がどの方向に進むのか、また、その材料が景気・企業収益などに、どの程度悪影響を与えるかは分からない悪材料」が、今年になって目白押しの状況にあることが(前回記事の図表2)、株価の上値を抑えており、逆に景気の底堅さなどが株価の下値を支えていると考えていることをご説明しました。
そして、このような膠着状態は、将来の大きな株価の変動を示唆しているという見方があります。そこで、今回のコラムでは、大きな変動のきっかけとして、何があるかを考えてみたいと思います。
まず、下ブレのきっかけとしては、前回記事の図表でご説明した悪材料の顕在化があると思われます。特に、米中の貿易・知財問題については、(事務レベル協議は行われたものの)沈静化のきざしがあるという評価は、とてもできないと思われます。
そして、現在までの各種メディアの報道をみると、11月の米国議会選挙(いわゆる中間選挙)で、共和党が、上院・下院の両方で過半数を占めることができるかについて楽観が許されない状況であると思われます。したがって、トランプ政権の政策は、選挙向けに大きく変更される可能性があることに留意すべきと考えます。
ここで問題なのは、「いっそう過激な政策が行われるか(問題継続)」、「困難な交渉であったが、交渉により米国が利益を得たというような勝利宣言(問題終息方向)」のどちらが共和党の得票アップに貢献するかが、政策運営に影響する可能性があり、上ブレ・下ブレの両方のきっかけになる可能性があることに注意が必要です。
貿易・知財問題に関しては、中国も経済対策の実行により、問題の長期化に備えようとしていると考えていますが、どちらにしろ、中国株の動向が問題の深刻さを捉えるひとつのメジャーになると思われます。
それでは、上ブレするきっかけとしては、どのようなものが考えられるのでしょうか? 私は、(安倍総裁の3選決定に加え、)企業収益が好調であるとの認識が市場に広がることがきっかけになるのではないかと考えています。
我が国や米国の4~6月期実質GDPは好調であることは前回お伝えしました。しかしながら、企業収益をみた場合、ある経済誌の8月14日付け集計によると2019年3月期予想は、一桁前半の増収率(売上げの伸び率、3%程度と予想されている)、一桁前半の経常増益率(経常利益の伸び率、2%程度と予想されている)であり、増収率よりも経常増益率が低い状況に留まっています(対象は全国上場企業の3月本決算会社、原則連結)。
上記のような悪材料が目白押しの中で、企業の利益予想は保守的であると考えています。私は、本年度の企業利益の着地は、上記集計より上ブレが期待でき、この認識が高まるに従い、わが国株価が上昇する要因になりうると考えています(なお、法人企業統計をみると過去2~3%の増収率となった場合には、これを上回る経常増益率が確保できる場合が多くなっています、図表1)。
(2018年8月27日 9:30頃執筆)
【当資料で使用している指数についての留意事項】
「日経平均株価」は、株式会社日本経済新聞社によって独自に開発された手法によって、算出される著作物であり、株式会社日本経済新聞社は、「日経平均株価」自体および「日経平均株価」を算定する手法に対して、著作権その他一切の知的財産権を有しています。
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