フィンテックの街へと舵を切る香港に注目すべき理由
LIMO / 2018年9月14日 8時15分
フィンテックの街へと舵を切る香港に注目すべき理由
拡大する新たな金融ニーズ
急速な巻き返しを図る香港のフィンテック
9月12日、第3回香港フィンテック・ウィークのオープニングレセプションが香港九龍のICCビル(香港で最も高いビル)の100階にあるSKY100で開催され、筆者も参加してきました。会場は、500人近い参加者が、金融機関やIT企業から出席してごった返し、熱気にあふれていました。セレモニーでは、香港のケリー・ラム行政長官もスピーチするなど、香港政府の力の入れようと意気込みが感じられるイベントでした。
また、今回の香港フィンテック・ウィークは、10月29日から11月2日まで、香港だけではなく深センにまたがってクロスボーダーで開催される点が特徴です。折りしも香港と広東省広州市とを結ぶ高速鉄道が9月23日に全線開通し、香港とマカオの海上橋も完成間近となり、「粤港澳大湾区(グレーターベイエリア)」構想が本格的に動き出したことと、呼応する動きといえます。
2015年頃までは、フィンテックの取組みでは、どちらかというと他の後塵を拝した感のあった香港ですが、2016年の第1回香港フィンテック・ウィーク開催以降、巻き返しの動きに出てきました。以来、香港政府はフィンテック関連企業の支援、フィンテックの促進策を積極的に講じています。
一例では、サイバーポート(香港政府全額出資の香港数碼港管理が運営・管理)という街に、フィンテック関連のビッグデータ、スマートシティ、IoT分野に関するスタートアップ企業の誘致・入居を支援してきました。そこに入居するフィンテック企業数は、2017年3月には180社であったものが、2018年1月には250社へと増加しています。また、2018年3月には、香港のフィンテック企業である「WeLab」が、2億2,000 万米ドルもの資金調達に成功するなど、香港でフィンテック企業への投資が増えています。
「バーチャルバンク」のポテンシャルは?
金融面では、香港金融管理局が今年5月30日に公表したプレスリリースの中で、バーチャルバンクライセンスを今年末か来年前半には認可することを発表しました。バーチャルバンクは、既存の銀行のように実店舗は持たずに、ITを駆使して顧客獲得からサービス提供まで金融事業を展開する銀行を意味します。今年8月末に申請を締め切りましたが、香港での銀行ライセンス取得はハードルが高いといわれる中、60社近い申請があったと言われています。
アジア最大の金融センターである香港ですが、意外なことに、バーチャルバンク専業銀行は存在していませんでした。香港では、香港金融の巨人であるHSBC、Standard Chartered Bank、中国銀行の3大発券銀行(香港では紙幣の発券は香港政庁から委託を受けた民間銀行が行っています)の力が強く、また人口が720万人しかないため、非対面のチャネルだけに特化した新設銀行へのニーズは小さく、経営が成り立つかどうか見通せないと言われてきました。
確かに、香港だけで見れば人口は720万人と、東京都の3分の2程度の人口でしかありません。一方で、GDPで世界第2位の規模の経済をもつ中国本土では、数年後に中間層人口は5億5千万人になると予想されています。しかし、中国本土は、世界の金融市場から隔てられ、資本規制があるので、金融ゲートウェイとして香港の金融市場が果たす役割は大きいでしょう。
この5.5億人の内、たとえば10%の人が香港を通じた金融活動をすると仮定しただけでも、数千万人の新たな金融ニーズが、香港には生まれることになります。グレーターベイエリア構想の展開とともに、香港での新たな金融ニーズは拡大していくでしょう。フィンテックを駆使した、これまでなかったような金融サービスで、そうした人々の金融ニーズを取り込むという発想を持った時、香港が金融機関としての機能を提供することの意味は非常に大きいと言えます。
新しい発展分野として香港政府がイノベーションの発展を目指す中、グレーターベイエリアでの「Fintech」の潮流は、皆さんにもぜひ注目しておいていただきたいところです。
ご参考:第3回香港フィンテック・ウィーク(10月29日‐11月2日)(https://www.fintechweek.hk/)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
3月過去最大の資金流入、中国本土から香港・マカオ 越境理財通
ロイター / 2024年4月23日 18時56分
-
埋込み型フィンテックのSmartpay、プレシリーズAラウンドで国内外の投資家から約10億円の資金調達
PR TIMES / 2024年4月8日 11時45分
-
Mastercard、 Alipay(アリペイ)ウォレットへの安全で利便性が高い国際送金を可能に
PR TIMES / 2024年4月3日 15時40分
-
マカオ特別行政区に隣接する横琴口岸、第1四半期の出入境旅客数が前年同期比58%増の540万人
Record China / 2024年4月2日 7時30分
-
元NBA幹部のグレッグ・ストルト氏がシニア・バイスプレジデントとしてRealeagueに加入
PR TIMES / 2024年3月28日 17時45分
ランキング
-
1【解説】円安どこまで進む? 深刻…家計にも影響、為替介入の可能性は
日テレNEWS NNN / 2024年4月25日 20時5分
-
2アキレス、シューズの国内生産終了へ コスト増や少子化など背景
ロイター / 2024年4月25日 16時27分
-
3サイゼリヤ、ギリギリ「国内黒字化」も残る難題 国内事業の利益率0.05%、値上げなしで大丈夫か
東洋経済オンライン / 2024年4月24日 7時30分
-
4イトーヨーカドー、祖業のアパレル復活なるか アダストリアとの新ブランドが生んだ“相乗効果”
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年4月25日 10時0分
-
5グリコ「17種類出荷停止」巨大プロジェクトで誤算 40年ぶり社長交代で"データ志向"を目指したが
東洋経済オンライン / 2024年4月25日 16時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください