グローバル・ポートフォリオに中国債券を組入れるべき3つの理由<HSBC投信レポート>
LIMO / 2018年12月22日 9時20分
グローバル・ポートフォリオに中国債券を組入れるべき3つの理由<HSBC投信レポート>
近年、資産運用の投資対象はますます多様化しています。株式や債券などの伝統的資産に加え、資産担保証券(ABS)やヘッジファンド、バンクローンなどのオルタナティブと呼ばれる複雑な金融商品を投資対象とする投資信託も見かけるようになりました。債券の中でも投資対象は多様化しており、現地通貨建ての新興国国債や社債も一般的になりました。
新興国市場への投資はリスクの高い選択肢と考える投資家は未だ多く、特に中国市場に対し、このような傾向は顕著です。それというのも、中国の金融市場は海外投資家に門戸を閉ざしていたため、国際分散投資のポートフォリオに中国の資産クラスを組み入れることのメリットがあまり認知されていませんでした。
しかしながら、昨今、中国市場へのアクセスが改善し、ついに中国債券は主要なグローバル債券指数にも組み入れられようとしています。それにより、ご自身の加入している年金や保有している投資信託で、世界債券を投資対象としているものがあれば、結果として、中国債券への投資を始めることになるかもしれません。
世界債券の主要な指数であるブルームバーグ・バークレイズ・グローバル総合指数に、中国人民元建て国債および政府保証債の一部が2019年4月から段階的に組み入れられることが発表されました。この決定はポートフォリオの幅広い分散とリスク調整後リターンの改善につながる非常に重要なニュースと言えるでしょう。実際、中国債券への投資は、ポートフォリオの安全性を向上させることが見込まれます。
2018年は、好調なパフォーマンスを示した資産クラスがほとんどなかったため、保有している株式や債券のパフォーマンスがマイナスとなっている投資家も少なくないでしょう。過去には、株式が軟調でも債券が堅調であったり、またその逆のケースもみられましたが、金融危機後の世界の金融市場の動きはますます複雑になってきています。
このような状況下、運用担当者は、保有ポートフォリオとの相関が低い資産に着目しており、相対的に信用格付の高い中国債券はまさにその特徴を備えていると言えます。それは、外国人投資家の保有比率が非常に低く、中国経済の景気循環が世界経済とは異なることが背景にあります。たとえば、今年は米国の経済成長率が加速したため米国では金利が上昇しましたが、中国では政府が成長を金融緩和で支えようとしてきたため、市場金利は全般的に低下しました。
HSBCの調査では、グローバル・ポートフォリオに中国債券を組み入れた場合(期間5年間)、過去ほぼどの時点においても、中国債券を組み入れない場合より、リスク調整後リターンが改善することが分かりました。その理由には、①中国債券の利回りは全般に高く、かつ②海外の債券市場との相関性が低く、さらに③通貨と債券市場のボラティリティが相対的に低いことが挙げられます。
過去の実績が将来を示唆するものではありませんが、中国債券を組入れることによる分散のメリットは少なくとも今後数年間は続く可能性が高いと考えます。
ポートフォリオの分散のために、中国債券に投資することは本当にリスクの高い選択肢なのでしょうか? 下落局面だけが大々的に報じられてしまう人民元ですが、実は世界的に見れば安定的な通貨です。その理由の1つに挙げられる中国管理当局による人民元の貿易加重通貨バスケットに対する変動性を抑制しようとする働きかけは、今後も続くと予想しています。
グローバル・ポートフォリオに最初に組み入れられるのは中国政府による保証付きの債券でしょう。中国は世界最大の外貨準備高を保有しており、また歳入の拡大余力が大きいため、高い格付けを得ています。中国の国債は、S&Pグローバル・レーティングからA+、ムーディーズ・インベスターズ・サービスからはA1の格付けを付与されています。これはアイルランドや日本等と同等で、スペインやイタリアなどの一部ユーロ圏諸国の格付けを数ノッチも上回ります。
加えて、中国債券の利回りは相対的に高いため、利回りが極めて低いドイツや日本等の債券と比較した場合、ボラティリティに対するより高いプロテクションを供与しているとも言えます。執筆時点で、10年国債の利回りは、ドイツの0.43%、日本の0.12%を大きく上回り、中国は3.54%です。
先進国市場での低利回り、また、今後数年間で政策金利上昇が予想されることから、利回りが相対的に高い新興国市場へ分散投資することは、かつてないほど理にかなう選択肢となってきています。
さらに、多くのエコノミストやアナリストが反グローバリゼーションや保護主義に対し懸念を表明している世界経済においては、中国債券をグローバル・ポートフォリオに採用することは、規制当局、政府、民間部門の協力によって、投資家により良い投資環境で幅広い選択肢を提供することができるようになった進歩の好例と言えるでしょう。そして、以前から推奨されている分散投資は、これからも望ましい選択肢であることに変わりはありません。
日本でもすでに中国債券を投資対象とする投資信託がありますが、今後、グローバル債券ファンドやマルチ・アセット型ファンドなどの投資対象として中国債券が組入れられることで、ますます中国債券に注目が集まるでしょう。
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