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日本のいびつな男女格差。なぜ男も女もツライのか…

LIMO / 2019年1月13日 19時45分

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日本のいびつな男女格差。なぜ男も女もツライのか…

日本は、先進国の中でも男女格差が大きいと言われています。昨年末に世界経済フォーラム(WEF)が発表した「ジェンダーギャップ指数」では、149か国中110位。109位のモーリシャス共和国(アフリカ)の次にランクされ、近年低迷傾向が続いています。

一方、「男性の方が社会的に優遇されている」ことが、必ずしも男性の幸福度に直結していないことも指摘されています。特に、家庭や地域における「体感男女格差」と、「ジェンダーギャップ指数」とのズレを感じている人も多いのではないでしょうか。

インターネット上の記事では、女性が働き続けることの大変さや、家事と育児の両立の難しさに焦点を当てたものが多いのですが、男性からはしばしば「納得がいかない」という不満の声も聞こえてきます。この意識のすれ違いはどうして起こるのでしょう。

そもそも日本の「男女格差指数」はなぜ低い?

冒頭の指数は、健康、教育、経済、政治の4つの項目で評価されています。

日本の項目別のランキングは、以下の通り。

健康・・・41位
教育・・・65位
経済参画・・・117位
政治参加・・・125位

下位に沈んでいるのが、「経済参画」と「政治参加」です。

「経済参画」の項目では、管理職や専門職に就く女性の割合が低く、同じ労働に対する男女の賃金格差が目立ちます。「政治参加」では、国会議員や閣僚の女性の比率がきわめて低い状況が順位に反映されています。

企業や政治の現場において、男性が重要なポストにつき、意思決定を担っている現状が、ジェンダーギャップ指数に影響しています。

「家事と育児を無償で担う妻を持つ男性」に最適化された職場環境や、専業主婦のいる家庭を優遇する税制なども、女性が責任あるポストに就くことをためらう一因となっています。

ちなみに男女格差が最も小さかったアイスランドでは、国会議員の女性の割合は38%。女性が首相を務めており、賃金格差が小さくなっています。

家庭では意思決定権が弱まる男性

政治や経済の分野では、男性側に意思決定権が集まっている日本ですが、家庭においては「ある変化」が見受けられます。

博報堂生活文化研究所の「家族30年変化」の研究結果によれば、家庭の総合的な決定権が夫にある家庭が38.7%と、30年前の72.4%から半減しているのです。

30代以下の夫婦に限っては、妻に決定権がある家庭の割合が逆転しています。

別の調査では、妻が財布のひもを握っている家庭は全国で半数近くに上り、夫の倍以上となっています。家計の管理は、家事と地続きの仕事ではありますが、家庭においては「女性の決定権が強い」という経済や政治の世界との逆転現象があります。

家庭と仕事の両立に疲弊する妻と仕事で疲れた夫…悲しいすれ違い

プリンストン大学教授であり、「世界の頭脳100」に選出された実績を持つアン・マリー・スロータさんは、『仕事と家庭は両立できない?「女性が輝く社会」のウソとホント』(NTT出版/2017年)の中で、以下のように述べています。

その昔、女性は家事を取り仕切り、その中で自信を持って力を発揮していた。男性は仕事の世界を支配し、その中で自信を持って生きていた。(中略)稼ぎ頭となってなお毎晩食事のしたくを欠かさず、同時に冷蔵庫に貼ってある航空交通管制のような予定をこなす女性は、スーパーウーマンだ。40年前の女性よりもへとへとに疲れ果て、幸せでないとしても、少なくともスーパーウーマンには違いない。


女性は、結婚・出産を経て「働き続ける」という選択をした場合でも、職場や子ども、時には夫に対して二重、三重の罪悪感を抱きながら仕事を続けると同時に、家事と育児を夫より多く担う傾向にあります。

家庭を1つの会社に例えれば、より多くの責任ある仕事を担う側の発言権が増すのは自然な流れだと言えます。

一方の男性は、社会に出て「個人の業績を上げ、競争社会に身を置くことに」を求められるものの、実際に競争に勝つことができるのは、少数派です。多くの男性には「ロールモデル」が不在で、正解の選択肢が限られている苦しさを抱えています。

世間から、そして女性から「家事や育児への協力」を期待されながらも、「あくまでも協力」というレベルで、結局は女性が育児と家事を自らのテリトリーに囲い込み、男性が主体で行うことを心からは望んでいないことも、前出の著書で指摘されています。

背景には「女性の方が家事や育児が得意」という思いこみと、男女が育つ過程で刷り込まれていった性別ごとの役割分担などもあるとされています。

「本物の平等とは、職場と同じ平等が家庭でも実現されるということだ。そして、それは、家の中が一変するということだ」とスローターさんは、述べています。

今後さらに共働き家庭が増えていくと思われますが、男女が互いへの思いやりを維持するためには、時間とお金の余裕が、欠かせない要素となります。

男女格差を縮めるには、職場の平等が先か、家庭の平等が先か。それとも、相互に影響し合って変わっていくのか。「家庭の居心地が悪い」とボヤく男性と、「旦那はATM」とあきらめ混じりに自分に言い聞かせる女性の溝は、社会の変化で埋まっていくのでしょうか。

【参考】
The Global Gender Gap Report 2018(https://www.weforum.org/reports/the-global-gender-gap-report-2018)(WORLD ECONOMIC FORUM)
「家族30年変化」調査結果(https://www.hakuhodo.co.jp/archives/newsrelease/47559)」(博報堂生活総合研究所)
47都道府県別 生活意識調査2018(生活・家族編)(https://www.sonylife.co.jp/company/news/29/nr_180201.html)(ソニー生命保険株式会社)
『仕事と家庭は両立できない?「女性が輝く社会」のウソとホント(https://www.amazon.co.jp/gp/product/4757123620/ref=as_li_qf_asin_il_tl?ie=UTF8&tag=navipla-22&creative=1211&linkCode=as2&creativeASIN=4757123620&linkId=9e5bfd3787be093ff2f61962dc4c4206)』(NTT出版/2017年)

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