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なぜ「米国経済が減速しても日本の景気は大丈夫」なのか

LIMO / 2019年2月17日 20時20分

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なぜ「米国経済が減速しても日本の景気は大丈夫」なのか

米国の景気が減速しても、日本の景気は腰折れしないだろう、と久留米大学商学部の塚崎公義教授は予測します。

米国景気のメインシナリオは「後退せず」だが・・・

米国の景気の先行きについては、金融市場の参加者は悲観的に見る人が多い一方で、FRBは強気なようです。

米国経済の専門家の間で意見が分かれているので、筆者としてはFRBを信じてメインシナリオと考えていますが、米中貿易戦争が冷戦の様相を呈しており、米国としては「肉を切らせて骨を断つ」覚悟のようですから、ある程度の減速は覚悟しておいた方が良さそうです。

そこで本稿としては、米国経済が減速し、場合によっては小幅に後退する、という前提で日本経済への影響を考えてみましょう。

本当のリスクシナリオとしては、米国で金融の収縮が発生して、基軸通貨である米ドルの金回りが世界中で滞る、という可能性が考えられますが、可能性は小さいでしょうから、本稿では考慮しないこととします。なお、リスクシナリオについては拙稿『日本経済のリスクシナリオを考えてみた。怖いのは中国か米国か?(https://limo.media/articles/-/8986)』をご参照いただければ幸いです。

米国景気の日本への影響は時代により変遷

戦後の復興期から高度成長期にかけて、「米国が風邪を患うと日本が肺炎になる」と言われていました。当時は国内の需要は無限にありましたが、外貨が決定的に不足していたので、米国向けの輸出が減ると外貨不足で「国際収支の天井」に突き当たってしまったのです。

外貨不足から解放された日本経済は、従来ほど米国景気の影響を受けなくなりました。特に米国景気を気にしなかったのはバブル期です。国内の需要が極めて旺盛でしたから、「米国が買わないなら国内で売れば良い」ということだったわけです。

バブル崩壊後の長期低迷期には、これが一転します。国内の民間需要が弱く、公共投資の人気も低下したので、米国向けの輸出が落ち込むと日本の景気に強い逆風となったのです。

加えて、米国景気が後退すると円高になるようになり、輸出へのダブルパンチとなったのです。米国の景気が後退すると、米国が金融緩和をするので日米金利差が縮小して円高になるのです。

バブルの頃までは米国の景気が後退すると米国の輸入が減って貿易収支が改善してドル高になっていたのですが、市場の見方が変わったのですね。美人投票の世界ですから、人々の採点基準が変化した、ということなのでしょう。

最近、為替レートが輸出数量に影響しにくくなってきた

アベノミクスで大幅な円安が進んだにもかかわらず、輸出数量はほとんど増えていませんし、輸入数量も減っていません。理由が今ひとつ明確ではないのですが、何らかの構造的な変化が起きていると考えるべきでしょう。

その一つとしては、企業が為替リスクを嫌って「地産地消(売れる場所で作る)」を心がけるようになったからだ、とも言われています。また、輸出企業にデフレマインドが染み付いていて、「今は円安だが、遠からず円高になるだろう。輸出用の生産ラインが完成した頃に円高になったのでは困るから、生産ラインは消費地に置いたまま様子を見よう」という企業が多いのかもしれません。

そうなると、米国の景気悪化で円高が進み、日本経済がダブルパンチを受ける、ということが従来ほどは気にならなくなってきます。このあたりのことは、拙稿『「円安は景気に良い」は昭和の考え方かも(https://limo.media/articles/-/6555)』をご参照いただければ幸いです。

ちなみに、円安になると輸出金額は増えますが、これは景気には影響しません。輸出企業が外国から持ち帰ったドルが高く売れた分と、輸入企業が外国に払うためのドルを高く買わされた分が概ね同じですから、差し引きすると景気への影響は出ないと考えて良いでしょう。

労働力不足なので輸出が減っても失業が増えない

「円高になっても輸出が減りにくいから、ダブルパンチは避けられる」というのは明るい話ですが、そうは言っても米国景気の減速はやはり日本の輸出数量に響きます。

米国自身が輸入している日本製品が巨額であるため、米国の景気減速で輸入が減ると日本の輸出は大きく減るわけです。加えて、米国人が不況で倹約すると「高品質高価格の日本製品をあきらめて、低品質低価格の途上国製品を買おう」としますから、米国の輸入全体の減り方より、米国の対日輸入の減り方の方が大きいかも知れません。

米国が途上国から輸入している製品も、心臓部の部品については日本製であることが多いと言われています。日本の部品メーカーから見れば米国向けの間接輸出ですね。これも米国の景気後退で減るでしょう。

しかし、それでも日本経済は大丈夫だ、というのが本稿の考え方です。それは、今の日本経済が労働力不足だからです。

労働力不足ということは、輸出が減って輸出企業の生産が減って輸出企業の雇用が減っても、余った人員は輸出企業以外で容易に吸収できるということです。

景気後退の最大の問題は「失業者が発生してかわいそうであること」、「失業者が消費をしないのでさらに需要が落ち込む悪循環が生じること」ですが、それがないならば、輸出の減少は特に問題視するようなことではないでしょう。

本稿は、以上です。なお、本稿は筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織その他の見解ではありません。また、厳密さより理解の容易さを優先しているため、細部が事実と異なる場合があります。ご了承ください。

<<筆者のこれまでの記事はこちらから(http://www.toushin-1.jp/search/author/%E5%A1%9A%E5%B4%8E%20%E5%85%AC%E7%BE%A9)>>

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