楽観ムードに浸ってはいけない日経平均。株高展開でも警戒モードは継続
トウシル / 2018年3月12日 13時17分
楽観ムードに浸ってはいけない日経平均。株高展開でも警戒モードは継続
先週末の3月9日(金)の日経平均は2万1,469円で終値を迎えました。前回、「日経平均がボトム(底打ち)を形成していくのか、下落が再開してしまうのか」がポイントになると指摘しましたが、前週末の終値(3月2日の2万1,181円)比では288円上昇し、結果的にボトムの形成のほうに軍配が上がったことになります。
このまま順調にボトム形成から戻りを試す展開に移行できるのかが気になるところですが、早速、下の図1で足元の状況を確認してみます。
■(図1)日経平均(日足)の動き(2018年3月9日取引終了時点)
まずは先週の値動きです。週初である3月5日(月)は下値をうかがう展開となりました。200日移動平均線を下抜けてしまったほか、取引時間中には節目の2万1,000円台を下回る場面もありました。下落が加速しそうな雰囲気に傾きかけたわけですが、なんとか踏みとどまり、翌日にはすぐに200日移動平均線を回復、その後も徐々に下値を切り上げる展開となりました。200日移動平均線がサポートとして一応機能していることが確認できたほか、5日移動平均線と200日移動平均線との「デッド・クロス(下抜け)」も回避しています。
その一方で、上値の重たさは相変わらずで、ローソク足の形を見ても、陰線やヒゲの長いものが目立っていて、とりわけ、週末9日(金)の上ヒゲは290円と長めになっています。実体も絡めると、高値をつけてから、その上昇幅を415円縮めたことになります。上値は先週と同様に25日移動平均線で上値が跳ね返された格好です。なお、9日(金)終了時点の25日移動平均線の水準は2万1,752円です。
日経平均は2月と3月に2回にわたって急落を経験したわけですが、2回とも200日移動平均線がサポートになったことで、「ダブルボトム(二番底)」の形成を指摘する見方も出てくると思います。その場合、ネックラインとなるのが2月27日高値である2万2,502円で、ダブルボトム形成にはここまで株価が戻す必要があります。別の言い方をすれば、2月5日〜6日に空けた「窓」を埋めに行く動きが欠かせないということです。
ちなみに、週末の日経平均先物の終値は大証で2万1,690円、CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)で2万1,695円でした。9日(金)の取引より、先物取引の限月が6月になったことで、理屈の上ではまだ配当落ちを迎えていない現物の指数よりも先物取引の価格が百数十円ほど安くなります。そのため、週初の日経平均は先ほどの25日移動平均線の水準である2万1,752円を超えてくる可能性があります。
また、トレンド判断の面では、日経平均が直近で高値をつけた1月23日を起点にして、戻り高値をつけた日である2月19日と2月27日を結んでトレンドライン(1)と(2)を引いてみます(下の図2)。
■(図2)日経平均(日足)の動き その2(2018年3月9日取引終了時点)
いわゆる「扇型トレンド」を描く要領ですが、すると、日経平均が25日移動平均線を上抜けたすぐ上にトレンドライン(2)が位置していることがわかります。
扇型トレンドの場合、トレンドラインどうしや移動平均線との範囲内で株価が動くことが多いとされるため、日経平均が(2)を超えてくると、75日線との範囲が次の値動きの想定レンジとして切り上がります。反対に跳ね返されてしまうと、(2)と(1)との範囲内が想定レンジとなってしまいます。200日移動平均線が三度目のサポートになれるかという展開です。今週の値動きが今後の相場の方向性を決めてしまうかもしれません。
中期的にも値動きが落ち着くにはまだ時間が掛かりそうです。下の図3は日経平均の週足チャートとATR(アベレージ・トゥルー・レンジ)です。
■(図3)日経平均(週足)とATR(2018年3月9日取引終了時点)
ATRは株価の値動きの大きさ(ボラティリティ)の推移を表しています。ATRの値が大きくなるほど値動きが荒くなっていることを示しているわけですが、足元でも上昇が続いています。
ボラティリティが依然として高い分、日経平均は良くも悪くも米国株市場の動きに振り回されやすい状況がしばらく続きそうですが、その米国株市場はこれまでのところ順調に回復基調を辿っています。とりわけ、NASDAQは急落する前につけた1月の史上最高値を更新しています。
こうした米国株市場の動きが継続すれば、日経平均は思っている以上の株高を見せる展開もありえると思われますが、相場のボラティリティはまだ落ち着いていないほか、米国の保護主義的な動きや地政学的な情勢についても自体はまだ流動的なため、楽観は禁物と言えます。さらに、国内に目を向けても、学校法人への国有地売却問題をめぐる財務省が絡んだ問題が混迷し、政治に対する不透明感がにわかに高まっており、相場に与える影響を見極める動きも出てきそうです。
(土信田 雅之)
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