本当にあった!ハゲタカ事件簿 CASE06:敵対的TOBは減少「表面は友好的に」が定番へ

トウシル / 2018年8月24日 10時43分

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本当にあった!ハゲタカ事件簿 CASE06:敵対的TOBは減少「表面は友好的に」が定番へ

CASE06:敵対的TOBは減少「表面は友好的に」が定番へ

ライブドア VS フジテレビ、住友商事 VS KDDI
歴史に残る「TOBバトル」

 第6話では、名門電機メーカー『あけぼの』の買収合戦が泥沼化。マスメディアを巻き込み、競合する買収者が公開の場で罵倒しあいます。ここまで喧嘩ごしの「敵対的」買収は、近年、日本ではあまり見なくなりました。

  しかし、私がファンドマネージャーをやっていた時、ドラマ並みの激しい買収バトルも、たくさん見てきました。中でも、2005年に、ニッポン放送の経営権取得をめぐって、ホリエモンこと堀江貴文氏が率いるライブドアと、フジテレビが激しいバトルを繰り広げたのは、鮮明に覚えています。

 また、2010年にケーブルテレビ最大手「J:COM(ジェイコム)」の筆頭株主にKDDIが突然あらわれた時も、最初は大騒ぎとなりました。事前の根回しがなかったため、敵対的な経営権取得と見なされたのです。長年にわたり大株主としてJ:COM経営に携わってきた住友商事は、対抗上、J:COMにTOBをかけ、筆頭株主の座を奪い返します。最後は話し合いによって、両社が共同でJ:COMの経営に当たることになります。

 ドラマでも、現実の買収でも、たびたび出てくるキーワードに、TOB(ティーオ-ビー:株式公開買い付け)があります。TOBとは、上場企業の株式を一気に大量に取得する手法です。上場企業の経営権を取得するのに、証券取引所で株を買い集める方法もありますが、それだと大量の株を取得するのに時間がかかります。

 一気に大量の株を取得するには、TOBをかけるのが有効です。TOBでは、取引所を通さずに、不特定多数の株主から大量の株を取得することが可能です。「いくらの株価で」「何株を」「いつまでに」買い付けると宣言し、その買い付けに応募してきた株主の持ち分を取得します。

 ただし、応募が少なすぎるとTOBが成立しないこともあります。TOBを成立させるには、現在の株価より、かなり高い買い値を示す必要があります。現値より30%以上高い買い値を示すこともあります。

 最近の企業買収はほとんど「友好的」です。水面下で交渉が進み、TOBが発表されるときには、買収される側からすかさず「TOBに同意」と発表があります。「ともに未来を作っていくことで合意しました」とがっちり握手するのをよく見ます。実質は「吸収合併」でも「対等の精神で合併します」と言うのが定番です。

「戦わず勝つのが善の善なり」は「孫子の兵法」の有名な教えです。買収後の経営を考えると、買収時に遺恨を生じるようなバトルを避けるのが賢明なのは当然です。水面下でバトルしても、公表時には笑顔で握手するようにしたいものです。

『あけぼの』買収では、メディアも政治家も巻き込んで全面戦争になってしまいました。騒動がおさまっても、従業員や技術者の動揺は長引くでしょう。諸星新社長の元、レーダー開発部の優秀な技術者たちが、落ち着いて開発に専念できる日が早く来るよう願っています。

 

解説:窪田 真之(くぼた まさゆき)
楽天証券経済研究所 チーフ・ストラテジスト

 

「ハゲタカ」6話おさらい

総合電機メーカー『あけぼの』とPCメーカー『ファインTD』が統合に向けて動き出す中、それを阻止するべく、鷲津(綾野剛)率いるサムライファンドは『あけぼの』に対してTOBを行うことを発表。記者会見を開き、『あけぼの』現経営陣と『ファインTD』の社長・滝本誠一郎(高嶋政伸)を真っ向から非難する。対して滝本は、マスコミを使った一大ネガティブキャンペーンを開始。新聞や週刊誌に一斉にハゲタカ外資を批判する記事が掲載される。
  サムライファンドは『あけぼの』と『ファインTD』の統合を阻止するため、『あけぼの』株の買い付けを続ける。報道番組に出演した鷲津は、「『ファインTD』の背後には、アメリカ最大の軍需産業ファンド『プラザ・グループ』が潜んでいる」と暴露。ついに『サムライファンド』VS『プラザ・グループ』の直接対決が始まった。鷲津は『プラザ・グループ』とのTOBバトルを優位に進められるよう、驚愕の手を次々に繰り出していく!

~トウシル編集部員の視聴後レビュー~ ハゲタカ「ココに注目」!

『あけぼの』の根幹を支えてきた研究所社員たちと対峙し、ようやく創業期にともに目指した『あけぼの』のあるべき姿を思い出した新見会長(竜雷太)。起業→社会的地位が確立した後にすべき、社長の最後の仕事は「次の世代にきっちりバトンタッチして自分は退く」ということなんだと思いました。『あけぼの』再生に関わってきた芝野(渡部篤郎)が言う「強いカリスマ性のある経営者に頼らない会社こそが本当にいい会社だ」という台詞が響きます! これは現時点で”カリスマ社長”にあたる滝本社長(高嶋政伸)や松平社長(沢尻エリカ)にとっても痛い一言。カリスマ社長であるうちはマダマダ、自分がいなくなっても成り立つ会社を作らないといけないわけですね。100年後の『あけぼの』『ファインTD』『日光みやびホテル』はどうなっているんでしょうか? 紆余曲折を経て、安定ではなく成長を目指す、強い企業になっている気がします。

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(トウシル編集チーム)

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