1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

「逆イールド・ショック」その後。米利上げは打ち止め?

トウシル / 2019年1月22日 7時22分

写真

「逆イールド・ショック」その後。米利上げは打ち止め?

 今日は、米金利が、世界の株式市場に与える影響を解説します。

昨年12月4日の「逆イールド・ショック」おさらい

 昨年12月4日、NYダウ平均株価は前日比799ドル(3.1%)安の2万5,027ドルと急落しました。この日のダウ急落を引き起こしたのは、米国債の「逆イールド・ショック」でした。
逆イールドとは「利回り逆転」のことです。長い金利は、短い金利よりも高いのが普通です。時に、短い金利が長い金利よりも高くなることがあります。それが利回り逆転、逆イールドです。まずおさらいとして、昨年12月4日までの、米国の長短金利の推移を見てみましょう。

米国の10年・5年・3年・1年・3カ月金利の日次推移:2018年1月2日~12月4日  

 

 昨年12月4日、米国の5年債利回りは2.790%まで低下し、3年債利回り2.805%よりも低くなりました。5年金利が3年金利より低いわけですから、そこで逆イールドが起こったわけです。逆イールドは、先行き、金利が低下すると金融市場が織り込みはじめたことを意味し、「景気悪化の予兆」と言われます。それが米国株の売りを誘発しました。

 2018年は、0.25%の利上げが4回ありました。短期金利(3カ月)は、利上げを織り込んで一貫して上昇しました。ところが長期金利は、短期金利ほど上昇していません。10年金利は、4月に3%に達してから頭打ちです。その結果、長短金利のスプレッド(差)が縮まり、5年・3年金利の間で、12月4日にとうとう逆イールドが生じたわけです。それを嫌気して、NYダウは大きく下がりました。

「逆イールド」その後

 その後、米国の逆イールドはどうなったでしょうか。まず、以下のグラフをご覧ください。

米国の10年・3年・3カ月金利の日次推移:2018年1月2日~2019年1月18日

 

 

 米国の長期金利(10年・3年)は、12月中は米景気に減速懸念が広がってきたことを受けてさらに低下しました。5年金利も3年金利とほぼ同じ動きで、12月中は低下が続きました。
ただし、短期(3カ月)金利は下がっていません。12月19日に、FRB(米連邦準備制度理事会)が0.25%の利上げを実施したためです。その結果、1月4日には3年金利が3カ月金利よりも低くなる「逆イールド」が起こりました。景気減速懸念がある中で、FRBが利上げを強行したことが、長短金利の逆転につながりました。

 ただし、それは一瞬でした。そこから、米長期金利はリバウンドしました。パウエルFRB議長が利上げの一時停止を示唆したため、米国株が急反発し、米景気に対する悲観がやや緩和しました。それを受け長期金利が反発し、長短金利の逆イールドはなんとか解消しました。

 

「長期金利上昇」も「逆イールド」も嫌う米国株

 2018年には、米長期金利の動きが原因となった世界株安ショックが3回ありました。1回目は2月、2回目は10月、3回目が12月です。

 2月は長期金利が3%に接近したことが嫌気され、10月は3.2%に達したことが嫌気され、世界株安につながりました。12月は、逆イールドが嫌気されました。 

米長期(10年)金利の日次推移:2018年1月2日~2019年1月18日

 

 昨年2月の「金利上昇ショック」は、2月2日に発表された1月の米雇用統計がきっかけで起こりました。平均賃金上昇率が3%に近づいていることが分かり、インフレ懸念が高まり、米長期金利が3%に向かって上昇しました。

 ここで、金利上昇や株式市場のボラティリティ(変動性)上昇をトリガー(ひきがね)とした株のプログラム売りが一斉に発動され、世界的に株が急落しました。日経平均も、外国人の売りで急落しました。

 ただし、プログラム売りが一巡すると、それ以上積極的に売る向きはなく、株は下げ止まりました。その後、米長期金利3%という数字に、株式市場は耐性を示すようになりました。「米長期金利が3%でも、株式市場にとって悪材料とはならない」との見方が広がり、世界的に株が反発しました。

 ところが10月に入り、長期金利が3.2%をつけたところで、再びNYダウが急落し、世界株安につながりました。3・6・9月に利上げした上、さらに、12月にも米利上げが見込まれることから、再び金利上昇への不安が高まりました。

 ただし、株が急落すると、世界景気の先行きに不安が広がります。そうなると、長期金利の上昇は止まります。そして、また、緩やかに低下を始めます。10月の長期金利上昇ショックの後、米長期金利は順調に低下し、3%を割れるところまで、下がってきました。これで目先、金利上昇不安で株が売られることはなくなったと思われた矢先、12月に、逆イールド・ショックが起こりました。

逆イールドは「景気後退の予兆」と見られている

 「長短金利逆転(逆イールド)は米景気悪化の前兆」と、米国の投資家の頭に深く刷り込まれています。利上げが続き、短期金利が長期金利を追い越してしまう「逆イールド」が起こりそうになると、投資家は、神経質に株売りで、反応します。

 マーケット参加者が、逆イールドに過敏になっているのは、過去、逆イールドになった後、米景気が後退局面に入ることが多かったからです。2008年のリーマン・ショックも、長短金利が逆転した後に、起こっています。

米長期(10年)金利と、FF金利の推移:2004年1月~2019年1月18日

 

米利上げ打ち止めが視野に。米景気は「ほど良い湯加減」を保てるか?

 株式市場が1月に入って落ち着きを取り戻したのは、米利上げが打ち止めに近いという見方が広がってきたことによります。

 米利上げが打ち止めになれば、米国株だけでなく、世界中の株にとって好影響があります。実際、1月だけ見ると世界株高になっている背景に、米利上げ打ち止め期待があります。

 ただし、この株高が続くためには、1つ条件があります。米景気・企業業績が予想以上に落ち込まないことです。米景気が弱すぎると、金利が下がっても株は下がります。

 株にとって都合がいいのは、景気が熱すぎず寒すぎず「ほど良い湯加減」を保つことです。世界株高を続かせる「ほど良い湯加減」に戻れるのか、今後出てくる米国や中国の景気指標を見ながら手探りしていくことになります。

▼もっと読む!著者おすすめのバックナンバー

2018年12月20日:米0.25%利上げ:期待ほどハトでないパウエル会見嫌気し、NYダウ下落

2018年12月5日:「逆イールド・ショック」で世界株安。7日の米雇用統計で利上げと金利どうなる?

▼他の新着オススメ連載

今日のマーケット・キーワード:『訪日客』、インバウンド消費ともに過去最高

今日、あの日:マグロ乱獲防止で初の国際会議【12年前の1月22日】

(窪田 真之)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください