「『市場の急落を阻止するチーム』が動いているからもう危機は起こらない」は本当!?
トウシル / 2019年4月4日 17時6分
「『市場の急落を阻止するチーム』が動いているからもう危機は起こらない」は本当!?
どんな危機が起きても中央銀行が危機を封印する!?
英中銀のカーニー総裁は3日、合意なきEU(欧州連合)離脱に陥るリスクが「危機的に高い」状況になお直面しているとの認識を示した。4月12にも英国の「合意なき離脱」のリスクがあるにもかかわらず、マーケットはどこ吹く風といった楽観姿勢を続けている。
【カーニー氏はスカイニュースのインタビューで、「合意なき離脱という事態に偶発的、急に突入して、移行期間がまったく確保できない可能性がある」との認識を示した。合意なき離脱に踏み切った場合でも、WTO(世界貿易機関)の条件で実質的に関税ゼロで取引できるという一部離脱賛成派の考えは「完全にナンセンス」と指摘した。無秩序な離脱に対し、国内金融業界の準備はよく整っているが、輸出業者などは困難に直面すると見通した。】(4月3日ロイター)という。
「FRB(米連邦準備制度理事会)が将来ツイストオペや長期金利の釘付け政策をやるのではないか?」という観測が出ているように、米当局には「利下げのバッファーを温存しながらバブルを延命したい」という思惑があるようだ。米当局が意図的に長期金利を下げる方向に動いているという噂から、米国の長期金利は大きく下落している。「米国の逆イールドは当局の操作によるもので、不景気の兆候ではない」という報道も多い。いずれにせよ、長期金利の低下により、ジャンク債市場や不動産市場はバブル状況を維持している。
米長期金利(週足)
昨年12月23日にムニューシン財務長官が招集して動き出したPPT(プランジ・プロテクション・チーム=市場の急落を阻止するチーム)のPKO(株価維持政策)が功を奏して株が上がったことで、ウォール街の運用者からは、「心配するな!昨年12月からの動きを観ていたらわかるように、どんな危機が起きても中央銀行が危機を封印する。この相場は買いだ。まだバブルは膨張するぞ!」との楽観的な言葉が飛び出している。ミレニアル世代の運用者にはバフェット指標もシラー式PER(CAPE)も関係ない。「FRBが危機を封印するので株は上がる」という理屈がすべてのようだ。
NYダウ(日足) PPT(市場の急落を阻止するチーム)とFRBの動向
ドルは米金利が各国金利に比べて相対的に高い時期に買われるが…
筆者は長きにわたって『通貨を動かすファクターとその相関関係』について検証してきた。その結果、「米国の貿易赤字」も「雇用統計」も「介入」も通貨市場の動きを説明することはできなかった。長期的な検証を行うと、これらは通貨の変動と大きな相関関係はないのである。最終的に通貨の動きを説明できるファクターは1つしかなかった。それは『米国の金利』である。
筆者の通貨研究でわかったことは、
- ドルの動きを説明できるのは米国の金利のみである
- ドルは米金利が各国金利に比べて相対的に高い時期に買われる
という2点である。つまり、米国と他国との相対的な金利差の水準の結果としてドル高やドル安が起こっているのである。
各国のインターバンクレート
現在のドル高相場は、「ドルは米金利が各国金利に比べて相対的に高い時期に買われる」という意味では理にかなっている。しかし、米長期金利の急激な低下を受けてもドルが売られていないというのは、他に買う通貨がないという事情を割り引いても過大評価されているように思われる。
ドルインデックス先物(日足)
ドルインデックス先物(週足)と波動カウント
為替の歴史は政治の歴史!?いよいよ日米通商交渉が始まる
為替レートは金利で決まるが、為替の歴史は政治の歴史でもある。米国の通貨政策というのはご都合主義という面も多いが、それでも通貨の長期トレンドを決める最大の材料は、『米国の通貨政策の変更』である。通貨の歴史をみると、「基軸通貨国である米国の通貨政策で動いている」というのが相場の世界の常識である。
ドル/円(月足)為替の歴史は政治の歴史…米国のご都合主義で動いている!
為替相場の政治的な変動要因として注意しなければいけないのが、『日米通商交渉』である。保護主義とドル高是正を唱えるトランプ政権のもとで、『日米通商交渉』がそろそろスタートしそうな気配となっている。急激な株高に紛れて、マーケットはこの材料をまったく織り込んでいない。円高リスクには注意が必要だろう。
【茂木敏充経済再生相とライトハイザーUSTR(米通商代表部)代表による日米通商交渉の初会合は、15~16日にも米国で開催される方向だ。政府・与党関係者が2日明らかにした。米国側は対日貿易赤字の削減を重視しており、日本からの自動車輸出に高率関税を課す可能性があり、交渉の行方は、日本経済の動向にも大きな影響を与えかねない。
日米通商交渉は、昨年9月の日米首脳会談で開催が決まり、早ければ年明けのスタートが見込まれていたが、米中交渉や米政府機関閉鎖などの影響によりスタートが遅れていた。
5月半ばは、トランプ米大統領が日本や欧州などからの自動車輸入に対し、安全保障を理由に追加関税を課すかどうか判断する期限となっている。
これに先立ち4月下旬に安倍晋三首相が訪米し、日米首脳会談を行うことが決まった。首脳会談開催を控え、通商交渉を担当する両国のトップが協議を開始し、主要な交渉テーマや交渉期間など、今後の同交渉の枠組みが話し合われるもようだ。
茂木再生相は、2日の閣議後会見で「諸般の事情が許せば、今月中にも米国で(日米通商交渉を)行う方向で調整している」と述べた。】(4月2日ロイター 『日米通商交渉、茂木再生相が15━16日訪米で調整=関係筋』)
ドル/円(週足)と波動カウント
ドル/円相場は上値抵抗線の攻防
ドル/円相場は現在、『日足の上値抵抗線』の攻防となっている。この抵抗線を上抜けたらもう一段跳ねる可能性もあるが、その上には『週足の上値抵抗線』の攻防が待っている。
ドル/円(日足)と上値抵抗線
ドル/円(週足)と上値抵抗線
ドル/円の日足をみると、筆者の順張りの標準偏差ボラティリティトレードモデルは、「ノー・トレードゾーン」となっており、トレンドは発生していない。
ドル/円(日足) 標準偏差ボラティリティトレードモデルと順張りシグナル
ドル/円(日足) ATRチャネルトレードモデルと逆張りシグナル
今年は楽天証券のFXセミナーで全国を回る予定であるが、4月6日(土)の大阪セミナーにはたくさんのお申し込みを頂いたと聞いている。大阪セミナーでは今後の相場見通しと、昨年半ばから動いていないユーロ/ドル相場の攻略法を紹介したい。
ユーロ/ドル(日足) ATRチャネルトレードモデルと逆張りシグナル
ユーロ/ドル(日足) フィルター付逆張りモデルと売買シグナル
(石原 順)
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