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コンビニ24時間営業の問題と株価。人手不足、競合激化、消費増税・・・コンビニ3社に逆風

トウシル / 2019年4月16日 7時58分

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コンビニ24時間営業の問題と株価。人手不足、競合激化、消費増税・・・コンビニ3社に逆風

コンビニ大手3社の決算出揃う、国内コンビニ事業の成長性低下

 コンビニ大手3社の2019年2月期決算が出揃いました。国内コンビニ事業に成長性を期待できなくなってきたことを印象づける内容でした。

コンビニ大手3社の連結純利益、最高益更新の有無

金額単位:億円
コード 銘柄名 2019年
2月期
前期比 最高益 2020年
2月期
前期比 最高益
3382 セブン&アイ 2,030 12.1 2,100 3.4
8028 ユニー・ファミリーマート 454 34.8 500 10.2
2651 ローソン 256 ▲4.6 × 180 ▲29.6 ×
出所:各社決算短信。2019年2月期は実績、2020年2月期は会社予想。前期比の単位は%。


 セブン&アイHD(セブンーイレブン・ジャパンの持ち株会社)、ユニー・ファミリーマートHD(ファミリーマートを展開)、ローソンの3社に共通するのは、国内コンビニ事業への逆風です。以下の3つです。

【1】    人件費上昇
人手不足で、人件費が上昇。これは小売業全般に共通の問題です。

【2】    店舗運営合理化のためのシステム投資コスト増加
外国人労働者でも簡単に操作できるようなレジに転換進める。セルフレジも一部導入へ。キャッシュレス決算への対応も進む。

【3】    競合激化
3社とも高水準の出店を続けてきたが、国内ではさらなる出店余地が低下。コンビニ同士の競合に加え、他業態(ドラッグストアなど)との競合も激化。

今期(2020年2月期)はさらに、【4】消費増税【5】24時間営業見直しによる運営効率悪化という、逆風が加わる見込みです。

セブン&アイHDの投資魅力が一番高いと判断

 セブン&アイの前期(2019年2月期)純利益は、最高益更新でした。国内コンビニが伸び悩みましたが、海外(米国)の成長が加速しています。事業セグメント別の営業利益を見ると、国内コンビニ事業は2,467億(前期比0.6%増)と伸び悩みましたが、海外コンビニ事業が922億円(同16.7%増)と大きく伸びました。

 2020年2月期も同じ傾向が続きます。海外コンビニ事業の成長によって、わずかながら最高益更新を予想しています。なお、国内コンビニ事業は成長性が低下したとは言っても、セブンプレミアムなどのヒット商品を持ち、平均日販や収益性で他のコンビニを凌駕しています。

 コンビニ3社の中では、セブン&アイが一番、投資魅力が高いと判断しています。以下の通り、同社の今期(2020年2月期)予想PER(株価収益率)は16倍と株価バリュエーションに割高感なく、長期投資に有望と考えています。

コンビニ大手3社の株価バリュエーション:4月15日現在

コード 銘柄名 株価
【円】
PER
【倍】
配当
利回り
最小
投資額
【円】
3382 セブン&アイHD 3,877.0 16 2.5% 387,700
8028 ユニー・ファミリーマートHD 2,920.0 30 1.4% 292,000
2651 ローソン 5,370.0 30 2.8% 537,000
出所:各社決算短信より作成。PERは、4月15日株価を今期1株当たり利益(会社予想)で割って算出。配当利回りは、今期1株当たり配当金(会社予想)を株価で割って算出

ユニー・ファミリーマートHDは、株価がやや割高

 ユニー・ファミマも、前期に次いで今期も、純利益で最高益更新を予想しています。それは、ユニーとファミリーマートの統合効果が、出続けることによります。ユニー傘下にあった「サークルK」や「サンクス」は、全店をファミリーマートに転換。転換後に、販売が大きく伸びる効果が、純利益での最高益更新に寄与しています。また、大手スーパーのユニーは、ドンキホーテへの転換を進めています。転換店で増収効果が発揮されています。

 ところが、統合効果が続くことは、株価にかなり織り込み済みと考えています。統合効果を好感して、株価は既に上昇しており、今期の予想PERは30倍と株価に割安感はありません。

 国内コンビニに吹く逆風はユニー・ファミマも受けています。統合効果が出尽くした後に、成長を牽引するドライバーが見当たりません。したがって、現時点の株価水準では投資魅力は乏しいと判断しています。

ローソンは、悪材料出尽くしが近いか?

 ローソンは今期(2020年2月期)、3期連続の減益を見込んでいます。海外コンビニ事業が収益化していないため、国内コンビニに吹く逆風をもろに受けています。株価も3年前の高値から約半値まで下がっています。

 ただし、悪材料の出尽くしが近づいていると判断しています。業績悪化は、人件費上昇、競合激化による既存店販売の伸び悩みだけではありません。店舗運営効率化のコストや、ローソン銀行開業のコストも足を引っ張っています。ただし、それは将来のための前向きのコストと言えます。今期は、消費増税や24時間営業見直しがさらなるマイナス材料となりますが、それで悪材料はいったん出尽くすと考えています。

 国内コンビニの落ち込みは、今期までで一巡すると予想しています。国内では出店余地がほとんどなく成長性はないものの、店舗運営の合理化を進めた成果で来期以降、収益の悪化には歯止めがかかると予想しています。配当利回りをベースにしたディフェンシブ株として投資できるようになると考えています。

 将来、成長性が復活するためには、海外コンビニ事業の収益化や、金融収益の拡大が必要です。親会社三菱商事とともに取り組んでいる海外コンビニ事業の収益性が改善するか、ローソン銀行などの金融収益が成長することが必要です。ただ、まだそのメドはたっていません。

 ローソンの今期PERは30倍と株価に特に割安感なく、株価は上値の重い展開が続くと考えられます。ただ、悪材料が出尽くし、好配当利回り株として投資していけるタイミングが近づいてきているとは考えています。

コンビニ3社を悩ませる「24時間営業見直し」問題

 セブンーイレブン・ジャパンは4月4日の取締役会で、古谷一樹社長が退任し、後任に永松文彦副社長が昇格する人事を決定しました。コンビニ24時間営業の見直しをめぐる問題でFC(フランチャイズ)加盟店とトラブルが起こった問題を重視し、経営体制を刷新します。24時間経営をめぐる問題は経営トップの交代にまで波及しました。

 人手不足から24時間営業を維持できなくなった東大阪市のFC加盟店オーナーが、本部の了承のないままに営業短縮に踏み切った問題が起こったのは2月でした。契約違反として違約金発生の可能性が議論となったところで、社会問題として一気に注目が高まりました。人手不足が深刻な中、24時間営業を続けるために一部のオーナーが長時間労働を強いられている実態が明らかになってきたからです。

 FCオーナーに同情する声が広がったこと、他のFCオーナーからも24時間営業見直しの要望が届いたことを受け、セブンーイレブンは3月21日から直営店で、短縮営業の実証実験を始めています。

 ここで、2つの疑問が浮かびます。


【1】働き方改革が叫ばれる今日、なぜFCオーナーは、過酷な労働環境に置かれたままなのか?

【2】深夜はほとんど買い物客が来ないのになぜセブンは24時間営業にこだわるのか?


 以下、解説します。まず、FCオーナーが過酷な労働環境に置かれる理由ですが、それは、FCオーナーが個人事業主であることによります。直営店の店長ならば、従業員なので残業規制などで守られます。ところが、FCオーナーは労働組合法上の労働者には当たらず、団体交渉や働き方改革の対象に含まれません。

 かつて、外食業で直営店の店長が長時間労働にさらされている問題が明らかになったことがありました。店長は管理職で一般従業員でないので、残業規制の対象外となっていたときに起こった問題です。今、店長は「名ばかり管理職」で実態は労働者と認められ、働き方改革の対象に含められています。

 もし本部が優越的な立場を使ってFCオーナーに過酷な労働を強いているとしたら、時代の流れに反するのは明らかです。いずれFCオーナーを守るルールができる可能性があります。セブンはそれを先取りし、24時間営業の見直しに動き出しました。

 それでは、2番目の疑問ですが、なぜセブンは24時間営業にこだわるのでしょうか? それは、効率的な店舗運営や商品供給ネットワークを維持するためです。コンビニは、1店舗だけでは成り立ちません。特定地域に集中的に出店し、そこへ協力工場で製造した食品などを、効率的に配送することで成り立っています。

 各店舗は、夜間に清掃や商品の入れ替えなどの作業をこなすとともに、24時間体制で商品を補給するトラックの到着を待っているわけです。夜間に営業しない店が増えると、道路が混み始める早朝に配送を集中させる必要が生じるので、供給網の効率は著しく低下します。

 セブンーイレブンは、短縮営業の実証実験で、いろいろな営業時間を試しています。午前7時~午後11時という「セブンーイレブン」の社名の語源となった営業時間も試しています。また、午前5時から翌日午前1時まで、というパターンも試しています。

 実験の結果はまだわかりませんが、私は、夜間に4時間だけ(午前1時~5時まで)店を閉めても、店舗運営コストはほとんど減らないと思います。店舗を閉めた後、1時間は残務処理が必要です。開店前1時間は開店準備が必要です。店員が店を離れられるのは、2時間程度になると考えられます。

 店を閉めている時間帯も光熱費はほとんど減らないと考えられます。食品を保存しているので冷蔵庫が必要だし、防犯上、ライトもすべて消すわけにはいかないと思われるからです。もし、完全に無人にするならば、レジを閉めて現金を銀行の夜間金庫に入れたり警備保障会社と別途契約したりする必要が生じるかもしれません。夜間営業をやめるならば、思い切って、午後11時から午前7時くらいまで閉めないと意味がないかもしれません。

 夜間営業しない店が増えたら、開いている店の売り上げが増えるでしょうか? あまり期待できないかもしれません。住宅店舗では閉めたら、近隣の住人の買い物がなくなるだけと考えられます。車通りの多い街道沿いに、多数の店舗が並ぶところでは、営業しない店が増えると、開いている店の売上が増えるかもしれません。今後、実験によってさまざまなことがわかってくると思います。

 セブン、ファミマ、ローソンとも、24時間営業の見直しを進めることは避けられないでしょう。24時間営業が一気になくなることはないと思いますが、少しずつ時間をかけて、24時間営業店は減っていくことになるでしょう。それが、3社にとって国内コンビニ事業の収益性を悪化させる要因になると思います。

 コンビニにかかわらず、小売業全般が、人手不足や消費増税の逆風にさらされています。小売業では、セブン&アイや、ユニクロを展開するファーストリテイリング(9983)や、家具・住居製品で高い競争力を持つニトリHD(9843)のように、アジアで売り上げを拡大する企業でないと、投資魅力が高くならないと思います。
 

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