アナリストがズバリ回答「中国バブル、崩壊する?」

トウシル / 2019年12月10日 7時27分

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アナリストがズバリ回答「中国バブル、崩壊する?」

 読者の方から「中国バブルはいつ崩壊する?」という質問を受けました。今日は、中国景気の現状および先行きについて私なりにお答えします。世界景気および日本株に大きな影響を及ぼす中国経済の現状からは目が離せません。

摩訶不思議な中国GDP。景気実態はかなり悪いのに「6%成長」?

 中国国家統計局が10月に発表した7~9月の実質GDP(国内総生産)は前年比6.0%増でした。この伸び率は、中国がGDP統計の発表を始めた1992年以来、最低です。米中貿易戦争の影響で生産が低迷し、「いよいよ中国景気の厳しさが浮き彫りになった」と解説されています。さらに一部には、「来年の2020年はGDP成長率が6%を割り込み、さらに厳しくなる」との予想も出ています。

 今の話を聞いて、何か違和感を覚えませんか? 私は、とても変だと思います。GDPの世界ランキングで1位は米国、2位は中国、3位が日本です。世界第2位の中国が、もし本当に6%もの高成長を実現しているならば、そんなに景気が厳しいと言うでしょうか?
6%もの高成長は、普通は人口増加が著しい新興国でしか実現できません。経済規模が大きくなるにつれ、成長率は徐々に低下していくのが自然です。

 米国の7~9月期GDPは前期比年率2.1%増でした。米景気は好調です。貿易戦争で世界景気が減速する中、米国の1人勝ちが続いています。それでも、成長率はたかだか2%です。2%とは言っても、そもそもGDP世界トップの国がそれだけ成長できるのは、実はすごいことなのです。

 中国政府の発表をそのまま信じるならば、中国は世界2位の経済大国になってなお6%もの高成長を持続していることになります。もし本当に6%もの成長を実現しているならば、中国は今でも世界経済を強力に牽引する機関車役になっているはずです。

 ところが実態は正反対です。中国の景気失速が世界経済に重大な脅威となり、中国ショックが世界に広がっています。ということは、中国のGDP成長率は、もっと低いはずです。私は、足元の伸び率は、2~3%に落ち込んでいると考えています。

 リーマン・ショック直後、2009年1~3月には、中国のGDPも一時的に前年比マイナスになったと私は分析しています。チャイナ・ショックがあった2015年10~12月にもマイナス圏に入った可能性があります。足元の中国GDPは減速しているものの、その頃ほど悪くはなっていないと考えています。

2007年以降の中国の景気実態を振り返り

 中国景気の過去の推移を振り返ります。

中国の実質GDP成長率(前年比):2007年1~3月期―2019年7~9月期
 

出所:ブルームバーグより作成

 中国政府の発表ベースでは、2007年以降、中国のGDP成長率は6%を下回ったことがありません。ただし、私は、リーマン・ショック直後の2009年1~3月に、中国のGDPも一時マイナスになったと考えています。世界景気の影響を受けやすい中国のGDPがこんなに安定しているはずがありません。

 リーマン・ショックで一時的に落ち込んだ中国景気は、2009年に中国政府が4兆元(約62兆円)の巨額公共投資を実施した効果で、一気に持ち直しました。中国の公共投資が、世界不況を救ったといわれました。

 ところが、後から振り返ると、この公共投資で膨らんだ非効率な投資が、その後の中国経済の構造改革を遅らせました。手っ取り早く稼げる鉄鋼・不動産・石炭開発などに投資が集中しました。その結果、鉄鋼業などで過剰生産能力を抱え、地方には入居者のいない高層マンション群がゴーストタウン化しました。

 4兆元の公共投資で膨らんだ非効率な投資に足を引きずられ、2010年以降、中国景気はじわじわと悪化していきました。2015年10~12月には、「チャイナ・ショック」と呼ばれるほど中国景気が悪化し、世界景気にもマイナス影響を及ぼしました。

 ところが、中国政府の発表するGDPを見ると、2015年も7%近い成長を実現していたことになっています。そんなことは、あり得ないと思います。チャイナ・ショックがあった2015年10~12月期と、それに続く2016年1-3月期は、中国景気だけでなく、世界中の景気が悪化しました。原油価格急落によって、ブラジル・ロシアなど資源国の景気が悪化しました。米景気も1~3月には、一時的に停滞色が強まりました。日本もこの時、景気停滞期に入りました。こうした現実が、中国のGDP統計にはまったく表れていません。

 2016年後半から、中国景気は盛り返しました。中国だけでなく、世界中の景気が回復に向かいました。中国GDPだけ見ていても、そうした、景気実態はまったくわかりません。中国の実態を知るには、他の景気指標を見る必要があります。

李克強指数、生産者物価指数に見る中国の実態

 中国景気は、2015年10~12月が大底で、2016年に入ってから回復トレンドに入りました。ところが、米中貿易戦争の影響を受けて、2018年以降、悪化が続いています。それが、李克強指数【注】および中国の生産者物価指数(前年比)の動きに表れています。

【注】李克強指数
中国の李克強首相は、首相になる前の2007年に「中国のGDP統計は信頼できない。鉄道貨物輸送量・銀行融資残高・電力消費の変化を見た方が、実態がわかる」と語ったとされる。その話を受け、鉄道貨物輸送量25%、融資残高35%、電力消費40%の構成で作られた指数。中国経済の実態をよく表していると評価されている。

李克強指数および中国の生産者物価指数(前年比)推移:2007年1月~2019年10月
 

出所:ブルームバーグより作成

 中国経済の実態をあらわしていると考えられる李克強指数を見ると、中国経済がけっこう激しく変動していることがわかります。中国政府が発表するGDP成長率とは異なる、中国景気の実態がここから見て取れます。

中国景気が以下のように推移してきたことがわかります。

【1】2008年にリーマン・ショックで悪化
【2】2009年は巨額(4兆元)の公共投資実施で急回復
【3】その後、徐々に景気が減速。2015年にチャイナ・ショック起こる
【4】2016年以降、景気回復
【5】2018~2019年に入り、米中貿易戦争の影響で景気減速が鮮明に

 中国景気の現状は、中国の生産者物価指数(前年比)からも見てとれます。生産者物価の上昇は、中国経済の体温上昇を示し、下落は体温低下を示します。李克強指数と合わせて見ることで、より中国の景気実態がよくわかります。

 李克強指数が、景気実態をほぼタイムリーに表しているのに対し、生産者物価指数(前年比)は、景気実態にやや遅行します。足元(2019年10月)、李克強指数の低下は一服しつつありますが、生産者物価指数で見ると、前年比マイナスになり、デフレ色が強まっていることが見てとれます。

 私は、中国景気の実態は、李克強指数や生産者物価指数に加え、中国でビジネスを行っている日本企業の声から、判断しています。現在、中国でビジネスを行う日本企業から、中国ビジネス復調の声はあまり聞かれません。ただし、半導体や電子部品など一部企業からは、来年には回復が見込まれるとの話が聞かれます。

2つの顔を持つ中国

 中国は、1980年代に社会主義国の体制を維持したまま、資本主義革命を実施しました。その成果で、1980年代以降、高成長国となりました。社会主義に留まった国々(旧ソ連・旧東ドイツ・北朝鮮など)がことごとく経済的に崩壊する中で、中国は社会主義体制の中にうまく資本主義を採りいれて、事実上の資本主義国として高成長しました。

 その結果、中国は、極端な資本主義と、社会主義が共存する異形の大国となりました。社会主義の旧弊は、「計画経済」という言葉に集約されます。何でも国の計画通りに動かそうとするところに、無理が生じています。

 中国は、経済を力ずくで思い通りに動かそうとします。これだけ経済規模が大きくなったのに、いまだに金利や為替を自由化していません。貿易も制約されています。巨額の補助金を活用して、世界の成長市場で強引にシェア拡大をはかってきました。それが、国家資本主義として、米国から批判され、制裁を受けるようになっています。

 中国は、今にも崩壊しそうな計画経済バブルと、世界の成長市場で次々とトップをとっていく国家資本主義の両面を持つ、異形の大国です。計画経済で膨らませた非効率な投資、ゾンビ企業の延命だけ見ていると、今にも中国バブルが崩壊しそうに見えますが、そうとも言えません。

 民間経済は、強力なバイタリティーを持って、これからも世界の最先端を席巻していくと考えられます。太陽電池・スマホ・ドローンなど、成長市場で無謀ともいえる大量投資を行い、世界トップの座をとってきたのが中国流です。米国がそれに歯止めをかけようと、さまざまな制裁を打ち出していますが、中国企業が成長市場でシェアを拡大していく流れを簡単には止められないでしょう。車載用電池や半導体、5G、ロボットなどでも大きな投資を行っているので、近い将来、あるいは遠い将来、これらの市場でも中国が世界トップになる日が来る可能性も、あながち否定することはできません。

中国バブルは崩壊するか?

 最初の読者の質問、「中国バブルはいつ崩壊する?」について、私の考えを述べます。同じ質問が、日本ではこれまで何回も繰り返されてきました。中国経済が危機的であった1998年にも、高成長に入ったあとの2004年にも2008年にも2015年も、そして今も、何度も繰り返されてきた質問です。

 日本では、「いつか中国バブルが崩壊する」という論調が多いが、実際には、そうなってきませんでした。私は、これからも当分、いわゆるバブル崩壊はないと思っています。景気後退はあり得るが、日本が1990年代に経験したようなバブル崩壊はないと考えています。

 中国経済は変動の大きな経済で、これからも景気拡大と景気後退の大きな波を繰り返すと考えています。今、中国景気は、後退スレスレまで悪化しています。それでも、米国との貿易戦争で一時的に休戦できれば、来年には景気が持ち直すと考えています。もし、貿易戦争で休戦することができなければ、来年も中国景気の低迷が続くと考えられます。それでも、深刻な景気後退は避けられると考えています。半導体や5Gなどへの投資が来年には世界的に盛り上がり、中国はその恩恵を受けると考えられるからです。

 計画経済で膨らんだ非効率な投資は、これまでに何度も清算されてきました。地方に林立した誰も住まない高層マンションがゴーストタウン化している問題、非効率な鉄鋼業のゾンビ企業が延命している問題など、バブル崩壊の芽はあちらこちらにあります。バブルの一部は、すでに崩壊しています。一方、世界の最先端市場で、次々とトップを取っていくバイタリティーも健在です。バブル崩壊と成長が共存するのが、これまでも、これからも中国経済の姿となると思います。

 日本株の先行きを考える上で、当面、中国経済の状況から目が離せません。これからも定期的に、中国経済の分析をお届けします。

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中国銘柄レポート >波司登国際控股(ボスドン・インターナショナル)

 世界マネー速報 >2020年の中国~成長、政策、投資の見通し ※PDF記事となります

 中国株の企業・セクターレポート > 中国平安保険(集団)/中国公共セクター ※閲覧にはログインが必要です。

(窪田 真之)

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