毎月分配はダメ?毎月分配型投信の「理にかなった」利用法とは

トウシル / 2020年1月8日 7時42分

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毎月分配はダメ?毎月分配型投信の「理にかなった」利用法とは

 読者の方から、「毎月分配はダメ?」と質問がありました。今日は、毎月分配型の投資信託について、私の意見を書きます。

毎月分配型ファンドは、今でも根強い人気

 かつて「毎月分配型」が、投資信託の人気トップ10を独占していた時代がありました。ところが、金融庁が「顧客のためになる金融商品なのか」と問題視するようになってから、銀行や証券会社が販売を自粛するようになったため、徐々に人気が低下しました。最近は、人気上位に毎月分配型ファンドが出ることは少なくなりました。

 ただし、それでも今でも、毎月分配型ファンドには、根強い人気があります。毎月、分配金を受け取れることに魅力を感じる投資家が多いことがわかります。

 まとまった金融資産を保有しているものの、毎月の生活費が年金ではまかなえず、資産をとり崩して生活費に充てていく必要がある場合、毎月分配型投信を持っていれば、毎月のキャッシュフローを補うことができます。そうした資金管理の便宜から、毎月分配型を選ぶのは、理にかなった利用法です。

 それでは、何が問題なのでしょうか? 一番の問題は、元本払戻金を利益の分配金と勘違いし、「高い利回りが得られる」と誤認する投資家が多いことだと思います。

毎月出る分配金のほとんどが「元本払戻金」という事実がきちんと理解されていない

 毎月分配型の投資信託のどこが問題か? 販売手数料や信託報酬が高いファンドが多いことも問題ですが、それだけではありません。私は、多くの個人投資家に、運用利回りを誤認させていることが最大の問題と考えています。利益が出ていないときでも、元本を払い戻して高分配を維持していることが、きちんと理解されていません。

 分配金利回り(税引前)のランキング上位には、年率の分配金利回り20%を超える毎月分配型ファンドがずらりと並びます。ところが、そうした高分配ファンドの多くで、基準価額は3,000~5,000円まで落ち込んでいます。設定時10,000円だったファンドが半値以下になっているわけです。元本払い戻しによって、高分配を維持してきたわけですから、元本の減少によって基準価額が下がっていくのは当然ですが、その仕組みが投資家にきちんと理解されていません。

 毎月分配型ファンドのほとんどが、利益だけを分配しているわけではなく、元本を払い戻すことによって高分配を維持していることは、マスメディアで広く報道されています。「真の利回りでないことなど、みんな知っているよ」という人もいます。

 ところが、残念ながら、多くの投資家は、分配金利回りを誤認していると言わざるを得ません。それには証拠があります。毎月分配型ファンドを購入する投資家の大半が、「分配金再投資型」を選択しているという事実です。

 毎月分配型ファンドに投資して、「分配金受取型」を選ばず「分配金再投資型」を選ぶ投資家は、以下の状態にあると考えられます。

【1】分配金が出ても、それを受け取って生活費に充てる必要はない。

【2】毎月分配型ファンドを「利回りの高い有利な運用」と勘違いしている。運用残高を減らしたくないので分配金をすぐ元のファンドに再投資する。

「毎月分配型」に投資して「分配金再投資」を選択するのは非合理

 毎月支払われる分配金のすべてを、そのまま元のファンドに再投資するのは、非合理です。それならば、最初から分配金がなるべく少ないファンドを選んで長期投資すべきです。毎月分配金を受け取ると、その都度、源泉税(利益から出る分配金の約2割)を差し引かれます。その分、再投資額が小さくなります。わざわざ税金を支払うために、毎月分配を選んでいるようなものです。

 分配金にかかる源泉税について、もう少し詳しく説明します。分配金が、仮にAファンドで毎月100円出るとします。その内、60円が利益から支払われ、40円が元本払戻金だったとします。この場合、源泉税は、利益からの分配金60円だけにかかります。60円の約2割、つまり約12円が源泉税として差し引かれます。100円の分配金を受け取って、12円差し引かれ、残った88円だけが元のファンドに投資されます。

 分配金のないファンドならば、中長期に複利運用ができます。それなのに、毎月分配型ファンドに投資して、毎月源泉税を支払いながら、再投資していくのは、非合理な投資行動です。

 私は、過去25年間、日本株ファンドマネージャーをやった経験があります。投資信託・年金・海外ファンドなどの日本株運用を担当していました。投資信託の運用をしていて、分配金について、とても残念に思ったことがあります。

 私の運用する公募投信で、パフォーマンスが良かった年に、1,000円の分配金を出したことがあります。分配金のかなりの部分が再投資で戻ってきたことに驚きました。私のファンドに投資していただいていた投資家の方の半数以上が、分配金再投資型を選んでいたためです。

 私は、とても複雑な気持ちでした。投資家の半数以上は、分配金を受け取ることを望まず、私のファンドに長期投資したいと願っていたことがわかりました。それはとても嬉しいことです。でも、それならば、1,000円もの高額の分配金は出すべきではなかったのです。

 当時は、利息・配当金にかかる源泉税率は10%でしたので、1,000円の分配金から、100円の源泉税が差し引かれ、900円だけが再投資に回ったことになります。分配金を出さなければ中長期で複利運用ができるのに、「再投資」を選んでいる投資家は、わざわざ100円の源泉税を支払うために、分配金を受け取ったことになります。

毎月分配型ファンドの「理にかなった」利用法

 毎月分配型の投資信託には、メリットもあります。まとまった金融資産を保有しているものの、毎月の生活費が年金ではまかなえず、資産をとり崩して生活費に充てていく必要がある場合、毎月分配型ファンドを持っていれば、毎月のキャッシュフローを補うことができます。

 私は、CFA(米国の証券アナリスト)資格を保有しています。私が受けた検定試験の問題の1つを今でも覚えています。ある富裕個人の年齢、家族構成、金融資産保有額、年間の生活費などのデータが与えられ、その個人にとって最適な運用ポートフォリオを組んで提案するという問題が出ていました。

 私が事前に受講した講習会では、「そういう問題が出た時、金利や配当金などの年間受取額が、年間に必要な生活費に一致するように組むのが望ましい」と教えられました。したがって、私もそのような方針で解答を作成しました。

 ただ、私は当時、そのような解答に納得していませんでした。「生活費が必要になれば、いつでも自由に金融資産を換金すればいいではないか」と考えていました。ただ、今になってみると、その考えは浅かったと思います。

 多くの人は、月々いくらと決められた範囲で、生活費をコントロールするのに慣れています。たくさんある金融資産から自由に換金して生活費に充てるスタイルだと、支出のコントロールが難しくなります。だから、理想的には、金利や配当金の年間受取額が、年間支出に一致するようにポートフォリオを組むのが望ましいわけです。

 現在、日本の金利水準は、きわめて低くなりました。残念ながら、金利や配当金だけで生活費をまかなうのは、難しくなってきています。ただ、退職金や遺産相続で、そこそこの額の金融資産を持っている人もいます。毎月、年金だけでは不足する生活費を、保有する金融資産を取り崩すことでまかなう必要がある人が増えてきていると思います。

 そういう人が、月々のキャッシュフローを補う目的で、毎月分配型の投資信託を購入するのは、理にかなった行動です。それならば、「分配金受取型」を選択すべきです。

 実際、毎月分配型ファンドに投資して、分配金受取型を選択している個人もいます。それを生活費に充てるならば、それこそが、本来の毎月分配の使い方となります。ところが、「分配金受取型」を選択している投資家によく見られる行動は、分配金を貯めておいて、一定額に達したら、また別の毎月分配型ファンドを購入するという行動です。

 見かけの分配金利回りの高さに引きずられて、投資している個人が多いから、そういう非合理な行動を取ることになるのだと思います。

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