投資信託の活用はなぜマネーハック的に「正解」なのか
トウシル / 2020年1月28日 5時10分
投資信託の活用はなぜマネーハック的に「正解」なのか
お金のライフハック=マネーハック
ちょっとした生活や仕事のコツを「ライフハック」といいます。IT系の人たちが使い始めた言葉ですが、あまり知られていないツールの活用法だったり、既存のアプリの異なった活用方法をお互いに共有したりすることで、人生をちょっと便利で効率的なものにします。
私が好きなライフハックの一つに「LINEのひとりグループ」というものがあります。日常的に起動することの多いLINEに自分だけが参加するグループを作り「買い物リスト」とか「やることリスト」と名付けて、思いついたらすぐ投稿します。
買い物のときにそのリストを見たり、TODOリストの備忘メモにするなどして、LINEを使うわけです。このライフハックのおもしろいところは、本来とは違う目的で使っている点です。TODOリストアプリはいくらでもあるからです。
しかし、別のアプリを入れるより、日常的にひんぱんに使うLINEというアプリで目的の一つを代替できるならそれはグッドアイデアということになります。
こうしたライフハックのお金バージョンを「マネーハック」と名付けていろんなところでコラムを書いているのですが、投資の世界もまたマネーハックの大事な世界だと思います。
実は最近『大人になったら知っておきたいマネーハック大全』(フォレスト出版)という本を出したので、そこから「投資信託はなぜマネーハック的に正解なのか」という話をしてみたいと思います。
投資信託はマネーハックの最たるものの一つ
本コラムを読む人にとって、投資信託についてゼロから説明する必要はあまりないかもしれません。しかし、投資信託の特徴の多くはマネーハック的だと思うのでその視点から改めて商品の特徴を見てみましょう。
投資信託マネーハック6
1:少額から分散投資できる
もともと投資信託は少額投資を行う手段でしたが、かつては1万円程度を最低単価としていました。今では100円からの積立投資もできます。商品によっては端数については1円単位で指定することも可能です(企業型DC[確定拠出年金]では掛金の配分割合をパーセントで指定できる)。金額が小さくてもいいということは、個人にとっては無理なく投資にエントリーする最高の条件です。
2:あらかじめ投資方針や投資対象、手数料を知ることができる
投資信託は目論見書、あるいは投資信託会社、販売金融機関のウェブサイトにアクセスすることで、投資の方針や投資対象、かかる手数料について、あらかじめ全て確認することができます。投資の条件を確認できることがむしろ投資信託の前提であり、透明性につながっています。
3:購入と売却以外の詳細の運用を、アウトソースできる
投資信託の運用方針と投資対象、そして手数料の条件に納得できれば、投資信託を買うだけで運用が行えます。TOPIX(東証株価指数)の銘柄数が2,000社以上あったとしても、その全てを知る必要はありません。TOPIXに連動するインデックス・ファンドを買うだけで2,000社に投資をすることになりますし、新規上場銘柄があればその株も追加購入したことになります。これほどの省力化はありません。
4:運用状況は開示され、所定の手数料以外はかからず、騰落はすべて自分のものとなる
投資信託運用会社が取るのはあらかじめ定めた運用コストだけです。それ以外の費用を理由なく取ることはありません。つまり、「20%利益が出たので、顧客には10%だけ渡しておけば喜ぶだろう」というようなことを運用会社はできないのです。そのトレードオフとして、値上がり時も値下がり時も全ての騰落が、自分の資産の増減となります。
5:定額の定期購入ができる
定額の定期購入が簡単であるのも投資信託の便利なところです。株やETF(上場投資信託)は1口あたりの購入費用は日々変動するため、毎月1万円ずつ投資したいというような希望には応じにくい仕組みでした。投資信託は貯蓄と同じ感覚で「毎月いくら」という購入ができ、それを「○日に行う」というように自動化することができます。
6:元本以上の損失はない
また投資の元本以上を損なう可能性がないことも触れておきます。現実には元本が全損する投資信託はほとんどあり得ませんが、投資額以上の無限の責任は負わないことで、個人でも投資をしやすい仕組みなのです。
自動化により投資の手間暇を軽減し、かつ運用効率はよくなる
「負担は軽くなり、効率は良くなる」ことがライフハックの基本です。エクセルで「1、2、3……」と手入力をするのと、オートフィル機能を使うのは同じ結果を省力化できる分、オートフィルのほうが優れています。そこで「1、2、3と数字を手入力しないと心がこもっていない」と言う人はいません。
マネーハックの視点でも「省力化」と「効率化」が重要ですが、投資信託は正にこれに合致しています。特に投資においては負担、労力をいかに軽減させるかが大事です。仕事やプライベートを犠牲にして、投資を行う必要はないのですが、投資信託なら運用の子細は運用会社にお任せできます。
毎月の購入も自動化できます。積み立て投資信託の設定をすれば、毎回「証券会社にログインして注文を行う」という手間をかけずに済みます。
また、投資信託は銘柄を分散したり、投資対象を分散したりすることも容易なので、「世界中の株をまんべんなく買っておけ、月2,000円でな」というような無茶も成り立ちます。分散投資はリスクを抑える選択肢です。
積み立て投資を20年、国内外の市場に行えば私たちは労せずしてプラスリターンで終着させることができ、かつ過去の実績ベースでいえば、「そのリターンは年4%以上になる可能性がほとんどである」ことは金融庁のつみたてNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)資料にもあります。つまり積み立て投資信託をNISAやiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)で継続するだけでリターンも得られるということです。
投資というと、真剣に相場と向き合わなければいけないイメージがありますが、「自動化」して「ほったらかし」してかつ「パフォーマンスは上々」となるなら、これこそ正にマネーハックでしょう。面倒くさがりの人にとっては、これこそ最高の資産形成手段です。
実は私自身がサボり体質です。そんな私がいろんな投資アプローチを検討したうえに、一番ラク(はっきり言えば「手抜き」)をしつつ、運用成果はおいしいところを取れる(手抜きに見合う利回りを確保する)方法を考えついた結論が「投資信託の積み立て」です。
同じ面倒くさがりの人はぜひこのマネーハックを活用していただければと思います。
投資信託を個人の投資に用いる条件が整ったこともプラス
ところで、この投資信託というマネーハック、個人が投資の選択肢として用いる環境が整ったことで成立したハックであることも、最後に付記しておきたいと思います。
というのはツールとして個人の使いやすいものだったとしても、利用条件が悪いならそれはマネーハックとしては二流だからです。投資信託が銀行などでも販売されるようになった2000年頃と比べ、「商品性の多様化」「手数料の低廉化」が実現したからこそ、オススメできるマネーハックになったのです。
まず商品性の多様化です。かつては海外に投資をしたいと思ったら、とある投資信託しか選択肢にのぼらないという時代がありました。FP(ファイナンシャル・プランナー)がみんなオススメしているのではなく、「その投資信託しか選択肢がない」のような状態だったのです。今では国内外に分散投資をしたり新興国に投資をしたり不動産投資をしたり、さまざまな選択肢が提供されており、個人にとっては便利な状況になっています。
そして手数料の低廉化です。つみたてNISAのための適格要件が手数料を引き下げることであった流れもあり、多くの投資信託が信託報酬(運用管理費用)を引き下げました。かつてはインデックス・ファンドで国内株に投資をしようとすると年0.7%はかかりましたし、国内外に分散投資をすれば年2.0~3.0%というような投資信託もザラにありました。
今では年0.2%台で国内外に分散投資できるわけですから、その分私たちにとってはローコストの運用が手元のリターンを高めるチャンスに転嫁されていることになります。
もちろん、つみたてNISAやiDeCoといった税制優遇口座も個人の資産形成を後押ししています。
マネーハック目線で考えれば、投資信託をあなたの資産形成に活用しない手はない、といってもいいでしょう。投資信託未活用だった人はぜひ、2020年はあなたの資産形成に上手に投資信託を活用してみてください。
■お知らせ
本記事筆者の山崎俊輔さんの新刊『大人になったら知っておきたいマネーハック大全』が好評発売中です。
(山崎 俊輔)
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