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新型肺炎と、米株高と金利低下のギャップ。リスクと想定シナリオは?

トウシル / 2020年2月12日 12時33分

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新型肺炎と、米株高と金利低下のギャップ。リスクと想定シナリオは?

新型肺炎の動向と米国株の上昇に注目

 今週も新型肺炎の動向がマーケットの注目となりそうです。一方で新型肺炎の経済への影響を無視した米国株の上昇にも注目が集まります。さすがに先週末7日(金)の米国株は下落しましたが、2月に入ってから再び2万9,000ドル台を回復したNYダウ平均株価が今後も高値圏で推移するのかどうかは注目です。

 米国の株高の背景にはいろいろな理由が言われています。米国の最近の経済指標の改善や米国への影響は軽微との見方、また中国の資金供給など中央銀行の金融緩和への期待が景気悪化懸念よりも大きかったとの見方、そして中国で新型肺炎に有効な既存の医薬品がみつかったとか、英国でワクチン開発の期間を短縮する見通しが立ったとの報道や感染拡大の勢いが弱まってきたとの見方によって新型肺炎に対する不安が薄らいだこともありそうです。これらの要因によって株やドル/円は想定外の上振れをみせました。

NYダウの上昇と金利低下のギャップ

 ところがNYダウと金利の関係で気になる点があります。1月中旬と2月とでは違った動きをしている点です。NYダウが1月中旬に2万9,000ドル台に上昇した時、ドル/円も110円台前半に上昇しましたが、米10年債金利は1.8%台でした。その後1月の終わりに新型肺炎の急速な拡大が懸念され株は調整しましたが、NYダウは2月に入ってから再び2万9,000ドル台に乗せました。ドル/円も110円近くまで上昇しましたが、米10年債金利は1.5%台と、1月中旬の時よりも低下しています。

 その理由としてFRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ再開期待から金利が低下し、株が上昇しているとの見方が多いのですが、金利の動きは新型肺炎による経済への影響を気にしている動きかもしれません。今後この株高と金利低下のギャップをどのようにマーケットが埋めていくのか注目です。このギャップが景気悪化を懸念して株安で埋まるのか、米国に対する影響は軽微との見方から金利上昇で埋まるのか注目したいと思います。

 少し付け加えると、ギャップが株安で埋まるケースとして、経済指標の悪化が続き、景気悪化懸念が高まるような状況が想定されます。その場合、FRBの利下げ期待が高まり株は一時的に上昇するかもしれません。しかし、経済指標の悪化が続くため、利下げが実行されても株高が維持されず、ギャップが埋まっていくというシナリオです。

FRBは新型肺炎を新しいリスクとして認知

 FRBは2月7日、半年に一度議会に提出する金融政策報告書を公表しました。パウエルFRB議長は11、12日の議会両院の委員会ではこの報告書に基づいて証言します。この報告書の中で「その経済規模ゆえに、中国での深刻な機能不全は、リスク選好の後退やドルの上昇、貿易およびコモディティ(商品)価格の落ち込みを通じ、米国や世界の市場に波及する可能性がある」と説明し、「中国での新型肺炎の影響が見通しへの新たなリスクをもたらした」と指摘し、警戒感を示しました。1月29日のFOMC(米連邦公開市場委員会)後のパウエル議長の説明から一歩踏み込んだ内容となっています。ただ、金融政策の方向性には特に触れていません。

 11日の議会証言でパウエル議長は「新型肺炎は新たなリスク」と指摘し、景気への影響を綿密に監視していく方針を示しました。

 FRBは新型肺炎の影響が経済見通しの新たなリスクと認定しました。このリスクが現実のものになるのかどうか、これから続々と発表されてくる経済指標の結果に注目していく必要があります。しかし、影響や予測は出始めています。例えば、2月11日の新聞記事の見出しだけを拾ってみると、

  • 「(日本の)上場企業の減益幅拡大 今期予想、中国減速 肺炎打撃に」
  • 「日産九州工場を一時停止 新型肺炎 中国製の部品滞る」
  • 「中国 経済活動再開 日本企業 フル稼働に時間 人員・部品の確保急務」
  • 「日本経済に悪影響『GDP(国内総生産)1兆円低下』試算も」

 これら見出しを読んでいるだけでも、延長された春節明け後の中国の経済活動の再開が進まないことが伝わってきます。日本経済へもじわりじわりと影響が及んできているのが分かります。

 これらの予測の中でも特に悲観的な見通しを発表したのが英調査会社キャピタル・エコノミクスです。2月7日付けの投資家向けレポートで下記のような見通しをしています。

  • 新型肺炎の影響で、世界経済が1-3月期に前期比マイナス成長予測
  • 43四半期続いた世界の成長を止め、米金融危機後の2009年以来のマイナス成長に
  • 感染拡大が深刻な中国の実質成長率は前年同期比で約3%と、直近までの半分に急減速
  • 発生源の中国経済に加え、中国人観光客の大幅な落ち込みや製造業のサプライチェーンの混乱により、アジアの他の新興国経済も大きな打撃を受ける
  • 先進国では、観光や貿易面での結びつきが強いオーストラリアがマイナス成長に陥ると予測
  • それ以外の先進国では影響は相対的に低そうだと分析しているものの、サプライチェーンの脆弱性について現時点では判断が難しいとして「先進国の成長率予測は下方修正を迫られるリスクが大きい」とも指摘
  • 新型肺炎が早期に収束に向かえば、止まっていた生産などを取り戻す動きが4-6月期から広がると想定し、世界のGDPは問題発生前に想定されていた水準へ2021年半ばにも戻る

各国は悲観的な見通しだが、4-6月期から生産は戻る想定

 世界経済はリーマンショック後の2009年以来のマイナス成長に陥り、発生源の中国は3%成長に半減、中国と関係の深いアジアの新興国経済が大きな打撃を受け、オーストラリアはマイナス成長、他の先進国も下方修正のリスクが大きいとかなり悲観的な見通しです。しかし、一方で4-6月期から生産は戻る動きと楽観的な想定となっています。ただ、元の水準に戻るのは2021年半ばになり時間がかかる見通しとなっています。生産が戻る時期が遅れれば遅れる程、GDPが元の水準に戻るのは2021年半ば以降になることになります。

 現在の株高進行中のうちに、感染拡大のピークが過ぎるとか、収束に向かっているとかの報道が伝われば、株と金利のギャップを株安で埋める方向は避けることができるかもしれません。逆に感染拡大が長引き、影響を受けた経済指標が発表されてくると景気悪化に焦点が移り、株安で埋める方向に進むかもしれません。それまでは、ドル/円は米長期金利が現在の水準である限り、狭いレンジで動くことになりそうです。

(ハッサク)

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