ワイドなレンジとボラティリティがいつまで続くのか?ラリー・ウィリアムズの疑問
トウシル / 2020年3月26日 18時1分
ワイドなレンジとボラティリティがいつまで続くのか?ラリー・ウィリアムズの疑問
ワイドなレンジとボラティリティがいつまで続くのか?
米著名投資家のラリー・ウィリアムズは、現在の株式市場の常軌を逸したボラティリティについて、
「最大の疑問は、ワイドなレンジとボラティリティがいつまで続くのか、と言うことです。その回答を求めて過去データをチェックしました。1998 年までさかのぼり、何週間、平常に戻るまで掛かったのか調べました。過去 20 年間、パニック売りのあと平常に戻るまで約 8 週間かかっています。2週間前から 8 週間をカウントすると、残り 6 週間で平常に戻るでしょう」
と、今週月曜日のラリーTVで述べている。
パニック売りは何週間でおさまるのか?
ボラティリティジャンプは平均8週間程度だが、8週間で弱気相場が終了すると考えるのは短絡的だろう。米国株がピークから20%以上の下落となった「弱気相場」では、S&P500の弱気相場継続期間は平均で146日、NYダウ平均株価は平均で206日である。
債務のためのゴミ箱と化した新しいFRB
今週、FRB(米連邦準備制度理事会)はルビコン川を渡ってしまった。無制限QE(量的緩和)を実施し、「すべての不良債権を引き受ける」と発表したのである。これによって野放図にバブルで踊っていた企業は、抱えている不良債権をFRBというゴミ箱に合法的に投棄できる環境が整った。これをうけて、3月24日のNYダウは+11%と1933年以来で最高の上昇を記録している。
NYダウ(日足)順張りの標準偏差ボラティリティトレードモデル 売りトレンドはピークアウトするか!?
今回のFRBの措置は、金融システムの保護より、「株価つり上げ」が目的だったと報道されている。トランプ大統領への忖度であろう。中央銀行の独立性などなにもないことが誰の目にも明白となった。新型コロナウイルス騒動で実体経済が壊滅的状況にあるなか、株価だけが上がっていくというのは極めて不自然な現象だが、株価下落が止まらない場合、FRBは最終的に株(ETF[上場投資信託])買いに動くとみられている。
中国型の国家資本主義で米国もバブルの温存に動き出したわけだが、中央銀行がモラルハザードフリーマネーという「禁じ手」に手を出してしまったことで、FRBの信認は大きく低下している。「劇薬には強烈な副作用がある」ことを、頭の隅に置いておきたい。
上海総合指数(日足) PKO(プライスキーピングオペレーション/価格維持政策)や空売り禁止も効果なく、「いってこい」の展開に…
“Whatever it takes(やれることは何でもやる)”が十分でなくなるとき
今後、株式市場はどう動いていくのか。以前から述べているように、現在の米国株の動きと1929年の動きが似ているとするならば、歴史を振り返ればシンプルだ。1929年当時、大幅調整の後、いったん反発する局面もあった。しかし、元の高値の水準には到底及ばず、結局、下値を切り下げながら、大幅に下落することになったのである。
1929年と2020年のNYダウのアナログモデル 次に何が起こる?そろそろリバウンドがあるのか?
NY証券取引所の米国株は1970年代からの深刻なトレンドラインをテスト中…
S&P500はリーマンショック後の上昇トレンドラインを割り込んだ
米大統領選挙を11月に控え、再選を目指しているトランプ米大統領にとっては株価の上昇が彼の成果であった。株式市場の急落は再選への痛手となる。
「Whatever it takes(やれることは何でもやる)」は去年10月にECB(欧州中央銀行)総裁を退任したドラギ氏の言葉である。緊急利下げによって政策金利をゼロまで引き下げ、無制限QE4を再開、加えて2兆ドル規模の大胆な財政支出を行なう当局に、あとどれだけやれることが残されているのだろうか。「Whatever it takes(やれることは何でもやる)」が十分ではなくなる時はそう遠くないのかもしれない。
米ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、全世界の感染者数は40万人を超えた。3日間で10万人増えるなど、パンデミックリスクが拡大している。「中央銀行がなんとかしてくれる」というのがウォール街の合言葉だが、そのウォール街からも人がいなくなった。
米国ジョンズ・ホプキンス大学の新型コロナウイルス感染者数
株はテクニカル的に下げすぎだが今の環境ではレバレッジを上げてはいけない
S&P500は200日ボリンジャーバンドのマイナス3シグマを突破した。NYダウに至っては、リーマンショック時と同じマイナス5シグマまで下げた。日経平均も200日ボリンジャーバンドのマイナス4シグマに到達している。
したがって、短期的には戻りがあってもおかしくない局面だ。ストップロスを置いて筆者も売りや買いで参戦しているが、短期取引で手仕舞っている。あと、窓開けリスクのある週またぎのポジションは持ちたくない。
マイナス5シグマが底というわけではない。筆者は1998年の為替相場(ロシア危機・ロングタームキャピタルの破綻)でマイナス7シグマという恐怖の体験をしている。
この時は現物の債券を売り切れずに大きな損を抱え、それを取り返すのに2年間地獄のような日々を過ごしたことがある。こんなボラティリティは誰もコントロールできない。今の相場はギャンブルに近いと言えるだろう。筆者の友人のアルゴリズム取引では、ボラティリティレベルが高すぎるので、「LONG(買い)」でも「SHORT(売り)」でもない「BANK(銀行にカネを置いておけ)」というシグナルが出ている商品が多い。
S&P500(日足)200日ボリンジャーバンド リーマンショック時と同じマイナス5シグマに到達
NYダウ(日足)200日ボリンジャーバンド リーマンショックのマイナス5シグマを超えてマイナス7シグマまで下落
日経平均(日足) 200日ボリンジャーバンド リーマンショック時と同じマイナス5シグマレベルに到達
現在の高いボラティリティレベル環境ではレバレッジを上げないこと。即刻、市場から退場になる可能性がある。ジェットコースター相場に参戦するなら、資産管理を徹底されたい。
ドル不足で急騰していたドル/円相場も、FRBの無制限QEで方向感をなくしている
金融工学という分野は金融機関の仕事のなかでも最も収益性の高い分野で、インターネットで欧米の金融関連の就職を探してみると最も給料が高い職種である。博士号を持っていないとなかなか採用されない。高額の報酬を得られることから、本来なら航空宇宙分野やロケット工学などに進むべき優秀な人材がクオンツと呼ばれ金融の世界で働いている。ブルームバーグの報道によると、そうしたクオンツ戦略も現在の相場では苦戦しているようだ。
数学者ジム・サイモンズ氏が創業したヘッジファンド、ルネサンス・テクノロジーズの米上場株のみ対象に取引するクオンツ戦略ヘッジファンドの今年これまでの運用成績は、マイナス24%となった。3月初めの3週間で大きく悪化した。(3月24日ブルームバーグ 「ルネサンスの米株ファンド、年初来成績マイナス24%-3月に大幅悪化」)
現在のような日中の上下動が激しい大変動相場では、値頃感や予想レンジというものが役にたたなくなっている。ドル不足で急騰していたドル/円相場も、FRBの無制限QEで方向感をなくしているようだ。しばらく様子見でもよいだろう。
ドル/円(日足)短期順張りモデル
ドル/円(日足)逆張りのATRチャネルモデル
3月25日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」
3月25日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」は、今中能夫さん(楽天証券経済研究所チーフアナリスト)をお招きして、「新型コロナウイルス感染症で変わること、変わらないこと」、「FRB無制限QE4の行方は?」というテーマで話をしてみた。
ラジオNIKKEIの番組ホームページから今中能夫さんと筆者の資料がダウンロード出来るので、投資の参考にしていただきたい。
3月25日: 楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー(ラジオNIKKEI)
3月17日(火曜日)の投資戦略フェア2020 オンラインサミット『何が相場の転機となるのか?モンスターバブル相場の行方と結末』(提供:楽天証券)
3月17日に投資戦略フェア2020 オンラインサミット『何が相場の転機となるのか? モンスターバブル相場の行方と結末』(提供:楽天証券)という1時間半のセミナーを行った。YouTubeでセミナー動画が3月末日まで視聴できるので、ぜひご覧いただきたい。
何が相場の転機となるのか? モンスターバブル相場の行方と結末
セミナー特典として、楽天証券が提供するMT4のみで利用できる「石原順のボラティリティトレード」が2020年4月30日までお試しいただけます。
お申し込みはこちらからどうぞ。
(石原 順)
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