第8章 株式投資のリスクについて

トウシル / 2020年9月17日 6時0分

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第8章 株式投資のリスクについて

※本記事は2019年11月4日に公開したものです。

リスクの種類

 リスクには下の図のようにいろいろな種類があります。

 それらは大きく分けて、次のように分類できます。

1:市場リスク
2:信用リスク
3:流動性リスク

市場リスクとは?

 市場リスクは、主に価格が変動することによって引き起こされるリスクです。

 典型的な市場リスクは金利リスクです。既に説明したように金利が上昇するとそれは株式の価格にとってネガティブな影響を与えます。従って、金利が動けば、株価も心配しなければいけないという連鎖反応が起こるわけです。

 もう一つの市場リスクに為替リスクがあります。皆さんは為替レートが株価と密接に関係していることを既に経験的にご存じだと思います。円安に振れれば日経平均株価が上がるというのは、その一例です。

 すると株は為替に左右されることが多く、その為替は金利に左右されることが多い……というふうに、いろいろなリスクが「玉突き的」に他へ影響を及ぼしてゆくというわけです。

信用リスクとは?

 信用リスクは取引の相手先が倒産するなど、主に信用面でのリスクを指します。例えば取引先がたくさんの株式に投資していて、もし、市場リスクのせいで株価が急落し、その結果、信用担保リスクが発生した場合は、市場リスクが信用リスクへと発展します。

 この例からも分かるように、市場リスクと信用リスクは、別個にそれぞれ独立して存在するのではなく、二つのリスクは一部重複しているのです。

 カウンターパーティー・リスクとは、取引の相手先が契約を履行できなくなる、あるいは突然雲隠れするなどのリスクを指します。

流動性リスクとは?

 流動性リスクという概念は分かりにくいかもしれませんが、ざっくばらんな言い方をすれば「サクサクとトレードできない」リスクと考えていただければいいです。

 例えば、FX(外国為替証拠金取引)をトレードしている人が、雇用統計が発表された瞬間にトレードしようと思ったら、瞬時にレートが動いてしまい、「レートが動き過ぎたのでトレードは成立しませんでした」という表示が画面に出るような場合が、これに相当します。

 株式の場合、香港市場のように不正会計などで摘発された企業は、調査が済むまで売買が停止されることがあります。このような取引停止リスクも流動性リスクの一つです。

システミック・リスクとは?

 市場リスク、信用リスク、流動性リスクなどが複合することで、市場や経済のシステム全体が機能不全に陥る場合があります。2008年のリーマン・ショックはその好例です。このような複合リスクのことをシステミック・リスクと言います。

 一つや二つのリスクに対して、十分対応できる配慮を普段からしている企業や投資家でも、システミック・リスクに襲われると手の施しようがなくなってしまいます。

株式投資のリスクを管理する

 それではどうすればリスクとうまくつき合えるのでしょうか?

 ここで皆さんに理解していただきたいことは、リスクをゼロにすることが、必ずしも最善の状態とは言い切れないという点です。

 世の中はリスクにあふれています。例えば大学受験のとき、自分の希望する大学に合格しないリスクがあります。また、就職活動がうまくいかないリスクもあるでしょう。さらに結婚するとなると生まれや育ちの違う二人が一緒になるわけですから、いつも仲睦まじいとは限らず、時には衝突することもあると思います。つまり、結婚が破たんするリスクがあるわけです。さらに奥さんが妊娠すれば、出産の際のリスクを避けて通ることはできません。

 皆さんはそのようなリスクを回避するために大学受験を諦め、また結婚を諦めますか?

 このように人生というもの自体が、リスクの連続であり、それらのリスクを忌避し、自分の殻に閉じこもると、普通の人が享受する、さまざまな人生の楽しみ、喜びというものすら体験できなくなってしまうのです。

 株式投資もこれと同じで、リスクをゼロにするということは、ただ現金を抱え続けるということを意味し、黙っていてもジリジリ上がっていく生活費に対し、自分の現金の購買力が低下することを、何もしないで見ていることになるわけです。

 つまり、自分の許容できる範囲内でリーズナブルなリスクを取ることが必要になるというわけです。そのことをカリキュレーテッド・リスク(計算されたリスク)と呼ぶ場合があります。それは自分なりにリスクと折り合いをつけることに他なりません。

 ここで「自分なりに」という表現を用いましたが、リスクの許容度は個人差があり、リスク管理は、とても個人的な問題なのです。

 それを断った上で一般に個人投資家の皆さんの中には無意味なリスクを取る人が散見されます。もし自分の全財産を1銘柄だけに突っ込んだ場合、その銘柄が急落すれば大きな痛手を被ります。

 もちろん、手持ちの投資資金との兼ね合いで、投資を始めたばかりの人はそんなに多くの銘柄に投資することはできないと思います。その場合はETF(上場投資信託)を買うことで分散効果を得ることができますし、もし、個別株を買う場合は極めて保守的な、退屈過ぎるくらいの銘柄から始めるのが良いでしょう。

 そして、資金が増えて銘柄が買い足せるようになったら、速やかに5銘柄くらいに分散する方が良いと思います。

キャッシュ・ポジションでリスクを調節する

 さて、最近ではベア型のETFが登場しています。だから(相場が下がりそうだな)と思ったときは、マーケットが下がったときに株価が上がる、ベア型ETFを買うことでヘッジをすることができます。

 それ自体、悪い発想ではないのですが、上で述べたようなシステミック・リスクが発生した場合は、資本市場の思いもかけなかった部分で脆弱(ぜいじゃく)性が露見し、せっかくのヘッジポジションがうまく作動しないということも起こります。実際、2008年のリーマン・ショック時は、投資銀行がポートフォリオ・ヘッジの相手方になっていたせいで、ベアスターンズやリーマンの経営に不安が出た際は、それらの金融機関との間で結ばれた取り決めが履行されない懸念が出ました。

 つまり、本当にマーケットがギクシャクしてきたときは、「キャッシュが王様(Cash is King)」なのです。その場合は、自分のポートフォリオの持ち株を少し減らすことでリスクに備えたほうが、結果的には良くなる場合が多いのです。

 ここまでをまとめると、リスクは愉快なものではありませんが、「リスクをゼロにする」という考えは夢物語に近いことです。すると、ある程度リスクと折り合いをつけることが必要になります。

 リスクを調整するには分散を図ることと、全体のポジションの大きさを調節することの二つの方法がいちばんシンプルです。ヘッジを試みることもできなくはないですが、それはヘッジポジションが誘発する、新たなリスクを上乗せするような行為に終わる場合もあります。

※本連載は本章で終了です。引き続き、広瀬隆雄氏の人気連載・わかりやすいグローバル投資レポート海外ETFデビュー講座をご愛読ください。

(広瀬 隆雄)

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