突然の株価急落は、売るか保有か―事後対応と事前の備え―
トウシル / 2020年9月3日 5時0分
突然の株価急落は、売るか保有か―事後対応と事前の備え―
株価急落は、突然やってきます。事前の備えができていればいいですが、思いもよらないことが起きるのも投資の世界。
今回は、急落後の行動・対応についてお伝えします。
株価急落後の対応はどうする
8月28日の14時すぎ、日経平均株価が突如として700円幅の急落をしました。その理由は、安倍首相退任のニュースが報じられたためです。
その後、日経平均株価は反発をし、終値では326円安にとどまりましたが、マザーズ指数は5%近い急落となり、個別銘柄の中にも大きく値を下げたものが目立ちました。
このように、株式投資をしていると、突然大きな下落に見舞われることがあります。この時の対応をどうするかによって、将来の投資成績も大きく異なってきます。
「これは大変なことだ」と慌てて持ち株をすべて売ってしまう人、あるいは「別に大したことない」と持ち株を一切売らずに持ち続ける人…株式投資の正解は1つではありませんからいろいろな考え方があってよいと思います。
ただ筆者の場合は、たとえ急落が起きようが起きまいが、あらかじめ定められたルールに則って行動します。すなわち、保有株が25日移動平均線を割り込んだら売却しますが、割り込まない間は保有を続けます。
実際、8月28日の急落により、筆者の持ち株も25日移動平均線を割り込んだものとそうでないものがありました。割り込んだものは速やかに売却しますが、そうでないものは保有を続けます。
なぜなら、株価急落は金曜日だけで、月曜日以降は再び強い動きが戻るかもしれないからです。そうなったとき、保有株をすべて売ってしまっていると、逆に上昇に乗ることができず、困ってしまいます。だから、25日移動平均線を割り込んだものだけを売却したのです。
もし、今後も株価下落が続き、保有している株についても25日移動平均線を割り込んだなら、その時売却すればよいだけです。
株価急落後は買えなかった株の買い時にもなりうる
筆者は、25日移動平均線を割り込んだ銘柄はルールに従い、淡々と売却しますが、その一方、株価が調整して25日移動平均線からのかい離が小さくなっている銘柄については、新規の買い時として捉えることも多いです。
買おうと思っていたが株価が急騰してしまい買いそびれてしまった…こうした株が株価調整により25日移動平均線からのかい離が小さくなっているなら、これは見逃すべきではありません。
株価の調整は浅いかもしれないし、深いかもしれない。もし浅い調整で済むのであれば、現時点で株価が25日移動平均線に近づいている銘柄については逆に買い時と言えます。
もちろん、株価の調整が深いものとなれば、25日移動平均線からのかい離が縮小した銘柄を買っても、その後さらに下落してすぐに移動平均線を割り込んでしまいます。その場合は速やかに損切りを行って損失を最小化しておく必要があります。
株価急落への事前の備え(1)逆指値注文
株価が急落することに対して事前の備えも重要です。「逆指値注文」の活用も一つの手です。
例えば、現在の株価が1,050円、25日移動平均線が1,000円の銘柄があるとします。もしこの状況で、株価が突如急落して750円まで値下がりしてしまうと、非常に大きなダメージを受けることになります。
そこであらかじめ、25日移動平均線から少し下の980円まで値下がりしたら売りとする逆指値注文を入れておくのです。
そうすれば、突然の急落となっても、980円か、それを少し下回る水準で売却することができますから、損失を最小限に抑えることが可能となります。
ただ注意したいのが、取引時間中に一瞬大きく下がったが、その後すぐに元の水準に戻ったような場合です。上の例で、一時株価が急落して1,050円から900円になったが、その後1,050円までその日のうちに戻ったとすると、980円近辺で持ち株は売れてしまっているのです。
こうしたデメリットもありますので、やみくもに逆指値注文を出すのはあまりお勧めしません。例えば25日移動平均線からのかい離が小さい銘柄に限って逆指値注文を出すなど、少し工夫することが必要となります。
株価急落への事前の備え(2)オプション取引の活用
オプション取引を活用するのも、株価が突然急落することへの事前の備えとして有効です。
具体的にはプットオプションを買うことで、株価急落による保有株の損失をヘッジします。プットオプションは、短期間に株価が大きく値下がりすると、逆に価格が大きく上昇するという特性があります。これを活用して、株価急落により利益を得て、保有株の損失を補填(ほてん)しようという考え方です。
ただ、オプションを買い持ちすると時間の経過とともに価格が下がるという特性があり、長期間保有してヘッジとして有効となるケースはそれほど多くはありません。例えば2008年のリーマン・ショックや2011年の東日本大震災、今年2~3月のコロナ・ショックのように、短期間に極めて大きな株価下落とならないとヘッジ効果はあまり期待できないのです。
実際、8月28日の日経平均株価700円幅の急落でもプットオプションは大きく上昇しましたが、気付いた時にはすでに値上がりしていて、その後株価が回復するとすぐに価格が下がりました。
したがって、オプション取引は、数年に1度の極めて大きな急落の初期に用いるか、予め分かっている大イベントへの備えであり、それ以外はルールに従って売却すべきタイミングで売却することで損失の拡大を抑えることが必要である点は、理解しておいてください。
(足立 武志)
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