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米国株急落でも日経平均の下げ幅が小さい理由:裁定残に表れる投機筋のポジション

トウシル / 2020年9月10日 7時33分

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米国株急落でも日経平均の下げ幅が小さい理由:裁定残に表れる投機筋のポジション

米国株急落の影響が、日本株には今のところ小さい

 9月9日の日経平均株価は、前日比▲241円(▲1.0%)の下落で、2万3,032円となりました。前日(9月8日)の米国株が大きく崩れた(ナスダック▲4.1%、NYダウ▲2.2%)割には、下げ幅が小さかったと言えます。

米ナスダック総合指数、上海総合指数・NYダウ・日経平均の動き比較
2019年末~2020年9月9日(ナスダック・NYダウは8日まで)

 今回の下落は、過熱していたナスダックが中心で、9月9日までで見ると、日経平均の下げは限定的です。

直近の高値からの下落率

 日経平均の下落率が小さい理由は、外国人投資家の売りがあまり増えなかったからと考えます。外国人は、今年、日本株を大量に売り越してきたので、ここで新たな売りが出にくかったと思います。

外国人投資家は7月までの売り越し続く

 日経平均は3月19日までコロナ・ショックで急落した後、5月にかけて急反発しましたが、外国人投資家は、その間、一貫して日本株を売り続けています。株式現物だけでなく、日経平均先物も売り続けてきました。8月に入って、ようやく売りが止まり、少し買い越しに転じたところです。

外国人投資家の日本株、日経平均先物の売買動向:2020年1月~8月

出所:東京証券取引所データより楽天証券経済研究所が作成

 日経平均先物の売買だけ見ると、外国人は6月から買い越しに転じています。先物の売り建てが高水準に積みあがっていたので、買い戻しを始めたと考えられます。

裁定買い残は低水準、投機筋の先物買い建てはほとんど整理された状況

 今日は、上級者向けの話を少しします。日経平均先物でトレーディングする際、裁定買い残高と、裁定売り残高の変化を見ておく必要があります。そこに投機筋の先物ポジションの変化が表れているからです。

 詳しい説明は割愛しますが、裁定買い残の変化に、投機筋(主に外国人)の日経平均先物「買い建て」の変化が表れています。買い建てが増えると裁定買い残が増え、買い建てが減ると裁定買い残が減ります。

日経平均と裁定買い残の推移:2018年1月4日~2020年9月9日(裁定買い残は2020年9月4日まで)

出所:東京証券取引所データに基づき楽天証券経済研究所が作成

 上のグラフを見ていただくと分かる通り、裁定買い残高は、2018年初には3.4兆円もありました。この時は、「世界まるごと好景気」と言って良い状況でした。したがって、投機筋は世界景気敏感株である日本株に強気で、日経平均先物の買い建てを大量に保有していたことが分かります。

 ところが、2018年10月以降、世界景気は悪化し、2020年に入ってからはコロナ・ショックでさらに急激に落ち込みました。投機筋は、日経平均先物を売って、買い建て玉をどんどん減らしていきました。その結果、裁定買い残高は、2020年には一時約2,000億円まで低下しました。

 投機筋は、日経平均先物買い建てをほとんど整理してしまったことが分かります。ここまで減るのは、リーマン・ショックのあった2008年、チャイナ・ショックがあった2016年以来のことです。

裁定売り残高が拡大、投機筋の売り建てが積みあがる

 裁定買い残高だけでなく、裁定売り残高の推移も同時に見る必要があります。詳しい説明は割愛しますが、裁定売り残の変化に、投機筋(主に外国人)の日経平均先物「売り建て」の変化が表れています。売り建てが増えると裁定売り残が増え、売り建てが減ると裁定売り残が減ります。

日経平均と裁定売り残の推移:2018年1月4日~2020年9月9日(裁定売り残は2020年9月4日まで)

出所:東京証券取引所データに基づき楽天証券経済研究所が作成

 2020年9月4日現在、裁定売り残高は、約1.7兆円まで積みあがっています。一時約2.6兆円あった時と比べると減ってはいますが、なお投機筋が、日本株に弱気で、日経平均先物の売り建てを積み上げていることが分かります。

 注目すべきは、9月4日時点で裁定買い残高が5,530億円しかないのに、裁定売り残高が、約1.7兆円まで増えていることです。売り残が買い残より1兆円以上、大きくなっています。投機筋が、日本株に弱気を継続していることが分かります。

 注目いただきたいのは、グラフの中に、【1】【2】と表示しているところです。ともに、日経平均が大きく上昇する中で、裁定売り残高が減少しています。ここでは、いわゆる「踏み上げ」が起こっています。

 日経平均が下落すると予想して売り建てを積み上げていた投機筋(主に外国人)が、日経平均がどんどん上昇していくため、損失拡大を防ぐために、日経平均先物の買い戻しを迫られていることが分かります。

 6月以降、裁定売り残高が、約1兆円減っていますが、これは、外国人投資家が6~7月に日経平均先物を約1兆円買い越しているのと符合します。

 それでは、日経平均に、裁定買い残と売り残を両方つけた、以下のグラフを見てください。投機筋(主に外国人)は、今のところ日本株に弱気を継続していることが分かります。

日経平均と裁定買い残・売り残の推移:2018年1月4日~2020年9月9日(裁定売り残・買い残は2020年9月4日まで)

出所:東京証券取引所データに基づき楽天証券経済研究所が作成

経験則では、投機筋は日経平均先物の買戻しのタイミングをはかっている

 ここから先は、経験則に基づく、筆者の推測です。弱気筋が相当売りポジションを積み上げている中で、日経平均がじりじり上昇してきた間は、外国人による日経平均先物の買戻しが入っていました。

 日経平均がここから大きく下がるとしても、投機筋はいったん先物の買戻しを行うと考えています。米国株の下げが続く間、日経平均も下げが続くと考えられますが、下落率は日経平均の方が小さく済むと思っています。

▼著者おすすめのバックナンバー
2020年9月7日:米国株が急落、日本株にも要警戒シグナル。「菅総裁」を織り込む株式市場

(窪田 真之)

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