株価上昇の国策株:デジタル庁+Go To Eat。外国人投資家も動く?
トウシル / 2020年10月12日 5時10分
株価上昇の国策株:デジタル庁+Go To Eat。外国人投資家も動く?
★筆者が選ぶ銘柄一覧は3ページに掲載しています。
菅政権誕生後、「国策に売りなし」を見せつけられた印象
9月16日に菅政権が誕生してから少しの時間が経過しました。以降ここまで、東証の売買停止(10月1日)、トランプ米大統領のコロナ感染や欧州の一部の国でのコロナ感染再拡大など、投資家にとってヒヤッとさせられることも起きました。
ただ、日経平均株価はその位置を大きく変化させることなく、底堅い推移を続けています。個別銘柄の一部や新興市場は極めて強い動きを続けているほどです。
それ以外の外部環境には大きな変化がないことから、菅政権は投資家から良い評価を受けているという仮説を立てることが可能な状況です。
そうだとすると、菅政権の主要政策に関連する銘柄に目立った動きがあるはずです。菅政権の政策には安倍前政権の取り組みを引き継いだものも多くありますが、それらの株価を検証してみましょう。
デジタル庁新設
真っ先に取り組まれるのは、「政府・自治体のデジタル化」と思われます。官庁と地方自治体の横断的で抜本的なIT化、ペーパーレス化、電子申告対応が柱とされており、関連する需要が大きいことは言うまでもありません。
マイナンバーカードのさらなる普及も急がれています。2019年に完了したみずほ銀行の新システム移行では、約8年の歳月と4,000億円超の費用を要したとされていますが、それをはるかにしのぐものとなることでしょう。関連する銘柄の直近の株価の動きを見ておきましょう。
NTTデータ(9613)とNEC(6701)は、中央官庁の業務システム構築に実績がある2社です。
・NTTデータの3カ月日足チャート
・NECの3カ月日足チャート
ネットワンシステムズ(7518)とインターネットイニシアティブ(3774)は、省庁横断ネットワークや地方自治体ネットワークに実績がある2社です。
・ネットワンシステムズの3カ月日足チャート
・インターネットイニシアティブの3カ月日足チャート
以上4社、全ての銘柄が、菅政権樹立以降に大きな値上がりを見せています。日経平均が横這いの中でこれだけの値上がりを見せているのですから、政策が追い風になったと見るのが適当でしょう。
一過性の補正予算ではない、数年~10年スパンの大型予算が政府によって確保され続ける、と投資家が見ているのかもしれません。
Go To Eatキャンペーン
コロナ禍により特に悪影響を受けた業界の需要喚起と経済支援として、安倍政権下の7月に発表されたのが「Go Toキャンペーン」です。
8月にスタートした「Go To Travelキャンペーン」に続き、10月に第2弾「Go To Eatキャンペーン」がスタートしました。飲食店を利用した人へのポイント還元やプレミアム付き食事券の付与が柱です。
このキャンペーンは早くから公言されていたことから、関連する銘柄の動きについては、この夏以降の反応を見るのが適当でしょう。
カカクコム(2371)、ぐるなび(2440)は、飲食店予約サイト運営大手企業です。
・カカクコムの3カ月日足チャート
・ぐるなびの3カ月日足チャート
スシローグローバルホールディングス(3563)は「回転ずし」、物語コーポレーション(3097)は「焼肉」の人気チェーンを運営しています。
・スシローグローバルホールディングスの3カ月日足チャート
※「あきんどスシロー」を展開。
・物語コーポレーションの3カ月日足チャート
※食べ放題「焼肉きんぐ」が主力事業。
夏以降、急な動きをしています。キャンペーンが始まる前から大きな反応を見せ、足元も変調を見せていません。株価がこのような動きを見せているということは、投資家が先高感を感じていると判断することができます。
いずれも「国策に売りなし」を見せつけられた印象です。
コード | 銘柄名 | 株価(円) | |||
---|---|---|---|---|---|
9613 | NTTデータ | 1,329 | |||
6701 | NEC | 6,020 | |||
7518 | ネットワンシステムズ | 4,840 | |||
3774 | インターネットイニシアティブ | 4,965 | |||
2371 | カカクコム | 2,979 | |||
2440 | ぐるなび | 875 | |||
3563 | スシローグローバルホールディングス | 2,858 | |||
3097 | 物語コーポレーション | 10,900 | |||
※株価データは2020年10月7日終値ベース |
外国人投資家が菅政権をどう評価するかに注目
菅政権の「目玉大臣」とされる平井卓也デジタル改革相と河野太郎行政改革相の動きも急です。平井卓也デジタル改革相は、デジタル庁の新設に向け「デジタル改革関連法案準備室」を9月30日に設置しました。関係省庁から50人、民間から10人程度を加え2021年秋の開庁を目指すとしています。
河野太郎行政改革相は9月24日、全府省に行政手続きでハンコを使用しないよう要請しました。業務を遂行する上で押印が必要な場合は、明確な理由を回答するよう求める徹底ぶりです。
菅首相は、日本学術会議(内閣府の特別機関)の会員任命について、過去の事例を踏襲せず、推薦された会員候補のうち6名を任命しませんでした。これについて菅首相は「日本学術会議は政府の機関であり、年間約10億円の予算を使って活動している。総合的・俯瞰的に活動を確保する観点から、今回の任命について判断した」としています。
投資家にとって注目される点は、首相が過去の例を踏襲しない姿勢を見せたことです。ここまで強い「改革姿勢」と「迅速な行動」は過去の政権を上回るものかもしれません。
株式市場(=投資家)はそのような姿勢に好反応を見せるのが常です。東京市場の買い主体が「日本銀行によるETF(上場投資信託)買い」、「自社株買い」という状況が長く続いていますが、ここから先は、過去の日本株上昇局面において中心的な存在となった「外国人投資家」の動きを注視する必要がありそうです。
菅政権への高支持率が続き、実績が表れてくると「彼ら」が動き出す可能性が十分にあります。
著者によるこの記事の解説音声はこちら(soundcloudサイト/10分7秒)
(天海 源一郎)
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