米大統領選と株式市場:イベント通過で「悪材料出尽くし」?結果はいつ出る?

トウシル / 2020年11月4日 7時46分

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米大統領選と株式市場:イベント通過で「悪材料出尽くし」?結果はいつ出る?

米大統領選、開票始まる。結果はいつ?

 いよいよ、世界中が注目する「米大統領選」の開票が始まります。投票は既に終わっているので、あとは結果を待つばかりです。

 今日(11月4日)、東京市場があいている間に開票速報が出てきます。刻一刻と明らかになる選挙情勢を見つつ、今日の日本株は乱高下する可能性があります。

 欧米で重要な選挙があると、開票速報を世界で一番初めに織り込むのはいつも東京市場です。投票が終わって開票が始まる欧米の夜間に、東京は朝を迎えて株式市場が開くからです。

 2016年6月26日、英国が国民投票でブレグジット(EU離脱)を決めた時も、投票結果を最初に織り込んだのは東京市場でした。

 同年11月8日、トランプ大統領が民主党候補クリントン氏を破って初当選を決めた時も、開票速報を最初に織り込んだのは東京市場でした。

 今日は、開票速報と東京株式市場の動きから、目が離せない1日となりそうです。

 懸念されるシナリオとして、「民主党バイデン氏が僅差で勝利するも、トランプ大統領が敗北を認めず、法廷闘争に入る」があります。各種報道によると、今回の大統領選では、11月2日までに郵便投票などで期日前投票を行った有権者が9,900万人近くいます。

 期日前投票者の数が、既にトランプ大統領が当選した2016年大統領選投票者の3分の2を超えています。投票所でのコロナ感染を避けるためと考えられます。

 トランプ大統領陣営は、「郵便投票の集計は不正の温床」と主張しており、僅差で敗北した場合は敗北を認めず、郵便投票の不正を申し立てて法廷闘争に入ると考えられます。

 そうなると、大統領選の結果が決まるまで長い時間が必要となり、コロナ対策の財政追加が遅れ、米景気に悪影響が及ぶ懸念が高まります。

選挙は水物、事前のコンセンサスはよく外れる

 選挙は、最後に結果が出るまでわからない、と言われます。事前にさまざまな世論調査が行われ、候補者の優勢劣勢が伝わります。ところが、実際には、そうした事前コンセンサスと異なる結果が出ることがよくあります。

 今回の選挙では、民主党候補のバイデン氏が優勢と伝わっています。特に、トランプ大統領がコロナ陽性と伝わり緊急入院した10月初めには、一時大きな差が開き、バイデン氏優勢が決定的になったと考えられました。

「コロナの安全対策を怠った」とトランプ批判が強まったためです。ところが、トランプ大統領が短期の治療で退院し、選挙戦で力強い演説を繰り返すと、トランプ大統領の支持は盛り返し、バイデン氏との差は縮小しました。

 選挙直前でバイデン氏優勢は変わりませんが、隠れトランプ派(世論調査に出てこないトランプ大統領の支持者)がかなりいると思われていることを考えると、事態はどう転ぶかわかりません。

 バイデン氏が勝利するにしても、トランプ氏が勝利するにしても僅差になると、考えられます。

当選後の演説で市場反応は変わる:2016年大統領選後のトランプ演説の例

 誰が大統領に勝利するかも重要ですが、それより重要なのは、勝利者が当選後に出すメッセージです。

 大統領選キャンペーンで言っていたことと、当選後の発言が一致しない大統領もいます。何が選挙戦のためのリップサービスで、何が本当の政策か、慎重にみきわめる必要があります。

 2016年の大統領選挙期間中、「トランプ氏が当選したら株は暴落する」とのコンセンサスが出来上がっていました。

 選挙戦で、過激発言「イスラム教徒の米国への入国禁止」、「メキシコとの国境に壁を建設」、「中国からの輸入品に45%の関税をかける」などを繰り返していたからです。

 そのため、トランプ当選を最初に織り込んだ2016年11月9日の東京市場で、日経平均は919円安の暴落となりました。

 ところが、日本時間で同日の午後5時くらいに伝わったトランプ氏の勝利宣言は、美しい言葉で飾られており、株式市場にフレンドリーな内容でした。

<2016年11月のトランプ氏「勝利宣言」抜粋>
【1】すべての共和党、民主党の党員に対して、米国の国民として団結することを訴えたい。
【2】すべての国と共通のグラウンドを持ち、良好な関係を築いていきたい。
【3】高速道路・橋・トンネル・空港・学校・病院といった社会インフラを再建する。インフラ再建で何百万人の雇用を生み出したい。

 分断をあおり、資本主義を破壊するイメージを持たれていたトランプ氏が、国内外の協調と経済成長を重視する演説をしたため、株式市場のムードは一変しました。

 11月9日の欧米株式市場は上昇し、それを受けて、11月10日の日経平均は1,092円高と急反発しました。その後、2016年11-12月はトランプ当選を歓迎する「トランプ・ラリー」と呼ばれる上昇相場となりました。

 2016年の大統領選直後にどういうことがあったか振り返ることは、今後起こることを考える上で重要な参考となります。以下、当時私が当時書いたレポートを参考としてください。

 2016年11月10日:3分でわかる!今日の投資戦略「NYダウ上昇、トランプ・ショック後の日経平均見通し」

大統領選の勝者が株式市場にフレンドリーな演説をすれば「悪材料出尽くし」も

 最初に注目されるのは、当選者が最初に発する言葉です。バイデン氏が勝利してもトランプ氏が勝利しても、どちらとも、当選直後にNYダウが急落するのを見たくないのは当然です。

 選挙直後には、とりあえず、株式市場を喜ばせるような美しい言葉で飾ったメッセージを出す可能性があります。

 バイデン氏が勝利すると、法人増税をやるので株式市場は下落するとの懸念があります。民主党がGAFAなど大型ハイテク企業の分割や規制導入を検討していることも、株式市場にとって悪材料と見られています。

 バイデン氏は、当選した場合、そういう株式市場に嫌われる話を前面に押し出すことを避け、まずはコロナ対策の財政追加やインフラ投資、自由貿易の復活、経済再生を重視したコメントを出すのではないでしょうか。

 トランプ大統領が再選した場合も、すぐに株式市場に嫌がられる話はしないのではないでしょうか。トランプ大統領再選なら、米中対立が激化すると考えられていますが、すぐにはそれを前面に出さないと考えています。

 トランプ大統領は、中国通信大手ファーウェイなどへの制裁を強めるとともに、TikTokやウィーチャットなど中国アプリの使用禁止を強行する可能性があります。

 また、米中通商交渉で締結した「第一段階の合意」も、中国が約束を守らないことを理由に、反故にする可能性もあります。

 ただ、大統領選中に、こうした強硬策を打ち出すと株が暴落し、それが自身の再選に不利になると考えていたようです。

 トランプ大統領は、これまで「大統領選が終われば、中国とはもっと厳しく交渉する」という発言を繰り返してきました。選挙期間中は、対中強硬策をほのめかすだけで、実際に行うのは「寸止め」していたと考えられます。

 こうした経緯から、「トランプ大統領が再選したら米中対立が激化」がコンセンサスとなっています。ただし、今回トランプ氏が勝利した場合、当選直後から「対中強硬策」を強調した演説をするとは限りません。当選直後に株が暴落するのは、やはり見たくないと考えられるからです。

 当選直後は、「対中強硬策」は封印して、「コロナ克服・経済再生」を強調した演説をするのではないでしょうか。

 2016年の大統領選勝利宣言のように「世界中の国々と仲良く」のような美辞麗句を出すとは思われませんが、とりあえず、経済再生に全力を挙げることを強調する内容になると思われます。

 来年にかけて、実際に米国経済が回復し、株が上がっているのを見てから、対中強硬策の実行に移っていくのではないでしょうか。

 過去4年間、トランプ大統領は株が上がると対外強硬策を強め、株が下がると対外融和策を打ち出す傾向が強かったと言えます。

 株を見ながら、米国第一主義を機動的に調整していた印象があります。今後もそれは変わらないと思います。

最も重要なのは「大統領選の勝者が実際に何をするか」

 大統領選の勝者が、「当選直後にどういうメッセージを出すか」も重要ですが、それ以上に重要なのは、大統領として「実際に何をするか」です。

 トランプ大統領は、2016年の選挙戦の間、「低所得者の味方」「米国第一主義」「対外強硬策」を打ち出していました。

 2017年1月に大統領になってから、「米国第一主義」「対外強硬策」は、言葉通りに実行しました。ところが、「低所得者の味方」とは、まるで正反対の政策を実行しました。

 オバマケアを廃止するなど、低所得者向けの給付はさまざまな形で廃止しました。一方、大型減税など、大企業や高所得者に有利な政策を次々と実施。その意味で、典型的な共和党政策の継承者だったと言えます。

 共和党と比較すると、民主党は、やや社会主義寄りの資本主義と見られています。大企業の成長よりも、低所得者の社会福祉を重視するイメージを持たれています。

 ただ、現実には、資本主義を重視する米国の政党であることには違いありません。民主党のオバマ前大統領の政策を見てもわかりますが、根本には資本主義や自由経済を重視する考えがあります。

 共和党と比較すると、やや社会主義寄り、つまり、低所得者の福祉や格差縮小を目指しますが、それでも伝統的な民主党の政策を遂行する限り、バイデン氏が当選しても、株式市場にそんなにネガティブとはならないかもしれません。

 世界の政治・経済に甚大な影響を及ぼす米大統領選の結果を受けて、米国がどう変わるか、目が離せません。

(窪田 真之)

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