日経平均は2万6,000円から上を目指せるか?「期待」と「現実」の駆け引きへ
トウシル / 2020年11月24日 11時59分
日経平均は2万6,000円から上を目指せるか?「期待」と「現実」の駆け引きへ
日経平均の上昇トレンドは一服のサインが出現
先週末11月20日(金)の日経平均終値は2万5,527円でした。17日(火)の取引で2万6,000円台乗せを達成したものの、週末にかけては失速していく展開となりました。
上昇の一服感を漂わせる一方で、前週末終値(2万5,385円)からは142円高で、週足ベースの上昇基調を継続しており、調整狙いの売りをはじめ、買い乗せや押し目買い、戻り待ち売りの判断が難しい状況になっています。
今回のレポートも前回と同じく、日経平均の「トレンドの勢い」と「株価の水準感」の視点でチェックしていきます。
■(図1)日経平均(日足)のボリンジャーバンド (2020年11月20日取引終了時点)
上の図1は、日経平均(日足)のボリンジャーバンドです。
最近までの日経平均は拡大するバンドの+2σ(シグマ)に沿って上昇してきたわけですが、2万6,000円台に乗せた17日(火)を境にして、18日(水)以降はこの+2σの線を下抜ける展開へと変わっています。
また、これまでにも紹介したトレンド一服の目安となる判断サイン(「株価が+1σを下抜ける」、もしくは「反対側の▲2σの線の向きが変わる」)のうち、後者の▲2σの線の向きが変っている他、前者についても株価が+1σに接近しています。
そのため、ひとまず株価上昇の一服を意識する局面と言えそうです。一服後は5月から6月にかけての上昇時のように、「長いもみ合いレンジ相場が続く」のか、2月から3月にかけてのコロナショックの下落時のように、「トレンド転換になる」のかを探ることになります。
とはいえ、まだ株価が+1σを下抜けていませんので、仮に+1σをキープできれば、このまま+1σと+2σの範囲を往来しながら上昇基調を描く、「バンドウォーク」の状態になる展開も考えられます。バンドウォークは比較的強いトレンドとされており、市場のムードがプラスに働いていることが必要です。
日経平均の株価水準は経済回復を先取り、今後は調整含み?
続いては株価水準です。
■(図2)日経平均(日足)とギャンアングル(2020年11月20日取引終了時点)
上の図2は前回も紹介したギャンアングルです。
3月19日を起点とする「コロナショック後からの戻りトレンド」の赤いギャンアングルと、昨年8月26日を起点とする「コロナショック前のトレンド」の青いギャンアングルの2つが描かれています。
先週の日経平均は前週に上抜いた青いギャンアングルの8×1ライン上での推移となりました。青いギャンアングルはコロナショック前のトレンドの線ですので、「コロナ克服」のラインとして考えることができます。
最近までの日経平均は、大統領選挙通過による買い戻しからワクチン相場への様相で、2万4,000円台から2万5,000円台、そして2万6,000円台と節目を次々と超えてきました。確かに、ワクチン開発は想定以上のスピードと有効性を示しながら進展しており、「コロナ克服」への期待は高いと言えますが、日経平均はコロナ克服後の経済回復をかなり先取りしてきた面があります。
実際に、青いギャンアングルの8×1ラインと、赤いギャンアングルの3×1ラインが交差するのは時間軸としては再来週、株価水準的には2万5,000円前半ぐらいの株価水準ですので、株価の上昇ピッチはギャンアングル的にはかなり早く、株価上昇のスピード調整や上昇一服の可能性は先週よりも高まっていると言えます。
仮に、足元の上昇が落ち着いた後は、先取りした期待と実体経済の動向とのあいだのギャップを埋めに行く展開が想定されます。米国では今週、11月の消費者信頼感指数をはじめ、10月の耐久財受注や個人消費支出、新築住宅販売などの経済指標の発表が相次ぐ他、週末27日(金)の「ブラックフライデー」からクリスマス商戦が本格化します。
このように、足元の状況を整理すれば、「株価の上昇が一服し、調整含み」というのが基本的なシナリオになるのですが、実は「そう簡単にはいかない」のが悩ましいところです。
米株市場は実体経済への懸念よりもコロナ克服への期待が強い
■(図3)NYダウ(日足)の動き(2020年11月20日取引終了時点)
上の図3はNYダウの日足チャートです。
前回のレポートでも紹介しましたが、NYダウの動きをたどると、「選挙前の警戒」で下落した後に、「選挙通過による楽観」で反発し、そして、ワクチン報道をきっかけに「コロナ克服への期待」で窓空けによる一段高となり、その後はもみ合いが続くという動きになっています。
ワクチンについては、米ファイザー社と独ビオンテック社で共同開発しているワクチンの検査結果が90%を超える有効性を示したと報じられたのに続いて、少し前にワクチン開発で相場をにぎわせたモデルナ社のワクチンについても、検査での有効性が90%を超えたと発表され、さらに追い風になっています。
その一方で、新型コロナウイルスの感染再拡大は続いています。米国や欧州では経済活動の規制や制限が相次ぎ、日本国内でもいわゆる「Go Toキャンペーン」の見直しが議論されるほどの状況です。
それに伴って、国内外の株価も伸び悩んでいるわけですが、図3のNYダウのチャートを見ると、ワクチン報道によって空けた窓を埋めに行く動きになっていません。つまり、米株市場は足元の実体経済への懸念よりも、ワクチン開発によるコロナ克服への期待の方がまだ強いと考えることができます。
NYダウについては先程も触れたように、米経済指標やブラックフライデーの状況が良好であれば、3万ドル水準や、6月8日と9月3日の高値同士を結んだラインまで上値をトライする可能性があるわけです。日経平均もこの流れに乗れれば再び2万6,000円台トライもありそうです。
反対に、NYダウが下落となった場合、この上値ラインの平行線を複数描いたものが値動きの想定範囲となります。また、6月の「アイランドリバーサル」時のように窓空けで下落に転じた際には値動きが荒れる可能性があり、注意です。
TOPIXはコロナ克服を織り込んでいない
次に見ていくのはTOPIX(東証株価指数)です。
■(図4)TOPIX(日足)とギャンアングル(2020年11月20日取引終了時点)
TOPIXについても、日経平均と同様にギャンアングルで見ていきます。
TOPIXは節目の1,700p台に乗せてきましたが、2月7日のコロナショック前の高値(1,744p)には、まだわずかに届いていません。また、コロナ前のトレンドを示す青いギャンアングルの8×1ラインとの距離もまだかなりあり、TOPIXについては、ギャンアングルでみれば「コロナ克服」まで織り込んでいないことになります。
日経平均が先走っているのか、それともTOPIXが出遅れているのかということになりますが、少なくとも拡大傾向にあるNT倍率(日経平均÷TOPIX)が縮小する動きになることや、TOPIXが赤いギャンアングルの3×1ラインを意識しながら推移していく展開などが予想されます。
しばらくは、今週末からのクリスマス商戦や国内外の経済指標の結果、足元で拡大している新型コロナ感染状況をにらみつつ、市場のムードが左右される展開になりそうですが、いずれは「期待と現実の駆け引き」による中長期的な相場展開になっていくと思われます。
(土信田 雅之)
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