年5%の投資利回り、税引き後の利益は?いい税金対策と悪い対策
トウシル / 2021年3月5日 8時12分
年5%の投資利回り、税引き後の利益は?いい税金対策と悪い対策
年5%の利回りは、税引き後だといくら?
資産運用を考えるとき、将来どのくらい資産を増やすことができるか、年間の想定利回りを元にシミュレーションするのが一般的です。
では、投資で毎年5%の利回りが得られるとして、その利回りをまるまる享受することができるかといったら、そうはなりません。投資で得られた利益には税金がかかるからです。このため、利回りは「税引き後」で考える必要があるのです。
100万円で買った株の配当金が5万円なら利回りは5%。ですが、実際はここから20.315%の税金が天引きされ、およそ4.2%になります。これが税引き後の利回りです。
「税引き後」で投資のリターンを考えている人はあまり多くないように見受けますが、投資の種類によっては、税金の影響もかなり大きなものになりますから、無視することはできません。
確定利回りなら持ち続けた方が元本はより大きく膨らむ
利回りを考えるとき、一般的に「複利効果」について言及されます。
この複利効果は、投資元本100万円の運用で、毎年5%の利息や配当金をそのまま受け取るのではなく、元本に組み入れて再度投資に回し、元本を大きく増やし、投資効果を高めることができる効果をいいます。
株式や投資信託、債券などの場合、値上がりして売却したときは、売却益に税金が課税されます。仮に売却後、再投資しようとすると、税金の分だけ再投資できる元本が減ってしまいます。そして、債券の利息など、確定した利回りが得られるのであれば、利息は再投資し、元本も売却せずに持ち続けるのが有効です。
個別株は複利効果一辺倒では損することも
ただ、個別株への投資の場合は、それとはちょっと様相が異なります。
例えば、株価が1,000円から1万円まで上昇した株があるとします。
1万円に至るまでの間に買ったり売ったりを繰り返した場合と、1万円までずっと持ち続けた場合とを比較すると、おそらくずっと持ち続けた方がより大きな利益になる可能性が高いと思います。
ただ、それは1,000円で買った株が1万円まで上昇した場合の話です。
当然、1,000円で買った株が1万円にならずに100円になってしまうこともあります。そうなったら、持ち続けることで利益を上げるどころか、含み損が膨らんでしまい、投資効率を大きく落とすことになってしまいます。
確かに税金面を考慮すると、安易に買ったり売ったりせずに長期間持ち続けるべきともいえますが、株価が買値から大きく下がってしまうこともあります。
上昇トレンドの間は持ち続けて問題ないが、下降トレンドになったら売却する、という方法の方が安全性は高いと筆者は感じます。
安易に不動産投資に手を出すくらいならREITの方が良いと思う理由
また、不動産投資は株式投資と並び、資産運用の王道です。
ただ、誰でも簡単に成功するかといえば、そんなことはありません。不動産投資で成功している人たちは、さまざまな勉強や努力を重ねた結果成功しているのであって、誰もが同じようにできるとは限らないのです。
そして不動産投資の最大の特徴は、借り入れをして投資するという点です。レバレッジ(投資額に対する借入金割合)をかけて投資しないと、大きな利益を得ることができないからです。ただ、不動産投資が失敗した場合、この借入金は重くのしかかることになります。
筆者は、安易に不動産投資に手を出して失敗するくらいなら、REIT(リート:不動産投資信託)に投資した方がよいと思っています。
実際に手間ひまをかけ、借金のリスクを背負ってまで不動産投資をして失敗してしまうより、いつでも手軽に売買ができて、かつそれなりの利回りも得られるREITの方がはるかに安全・安心です。
そしてもう一つ、不動産投資よりREITの方が有利と筆者が考える理由が、課税の方法です。
不動産投資による賃貸収入は総合課税とされていて、最大約55%の税率になります。一方、REITの課税は上場株式と同じ、20.315%の分離課税です。
もし不動産の実物に投資して年間利回りが6%、そこから55%の税率で課税されると、税引き後の実質利回りは3%弱になります。
他方、年間利回り4%のREITに投資した場合は、税率が20.315%ですから、実質利回りはおよそ3.2%になります。
このように、税引き前の利回りは不動産の実物の方が高いのに、税金を加味すると、税引き前利回りが低いREITの方が、手取りの利回りは高くなることもあるのです。
このように、税率の違いを考慮すると、特にすでに多くの所得がある方にとっては、不動産の実物に投資するよりも、REITに投資した方が手軽で、かつ実質利回りも十分高いものが期待できます。
暗号資産は将来の分離課税への移行に期待
同様のことは、暗号資産(仮想通貨)にも言えます。暗号資産への課税は、現在、総合課税ですから、利益の金額が大きくなると50%超の税率で課税されてしまいます。
大きく利益を上げても、その半分は税金で持っていかれてしまう、という認識を持った上で投資すべきです。
もちろん、税金の影響が大きいからといって暗号資産への投資は控えるようにと言うつもりはありませんし、筆者自身も暗号資産へ投資しています。
それでも半分税金ということは、実質利回りが半分に落ちることになりますから、より投資リスクが高まると考えておいたほうがよいでしょう。
以前はFX(外国為替証拠金取引)も総合課税でしたが、今は20.315%の分離課税になりました。暗号資産も取引所の整備や取引の透明化、健全化などが進み、FXと同様に20.315%の分離課税となれば、その分投資リスクも減少し、投資対象としての魅力が増すことになるでしょう。今後の税制改正には注目しておきたいところです。
税金を理由に売買ルールをねじ曲げないように!
最後に1点、注意しておきたいことがあります。それは、「税金を理由に売買ルールをねじ曲げないようにする」ということです。
NISA口座だから、下がっても売らない?
例えば、普段だったら株価が下降トレンドになったら保有株を売却しているのに、NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)で買った株は売らずにそのまま持ち続ける…といったことです。
通常の口座で買ってもNISA口座で買っても、同じ株なのに、ルールが異なるのでは、ルールを設ける意味がなくなってしまいます。
その一方、NISA口座で買った株を早期に売ってしまうと、非課税の恩恵を受けられなくなるのも事実です。
そこで筆者は、NISA口座で買った株が下降トレンドになったら、持ち株は売らずに残しつつ、同じ株を同じ数量だけ空売りすることで、さらなる下落へのヘッジをします。
暗号資産の税率を低く抑える方法
また、暗号資産も、最高税率が55%超になることから売らずに保有を続ける、という判断をする人が多いそうです。これはまさに税金のみを根拠とした売買の判断であり、危険な考え方です。
もし保有を続けた結果、価格が5分の1とか10分の1になったら、税金の影響以上に価格そのものが下がってしまい、手残りが目減りしてしまいます。
ですから、売買のルールは税金とは関係なくしっかり決め、守るようにしていきたいものです。
とはいえ、最高税率55%超となると、税金を完全に無視することもできません。したがって、一度にまとめて売却するのではなく、価格が上がるたびに少しずつ売却していくという方法があります。これなら、ある程度税率を低く抑えることができるようになると思います。
(足立 武志)
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