投資初心者も注目の中国株!気をつけたい2つの大きな注意点
トウシル / 2021年3月5日 14時52分
投資初心者も注目の中国株!気をつけたい2つの大きな注意点
投資熱高まる!でもリスクには注意
中国株も外国株投資ですので、株価変動リスク・流動性リスクに加え、為替変動リスクや、政治・経済・外交などのカントリーリスクについても注意する必要があります。
現時点で真っ先に思いつくのは米中関係のリスクですが、それ以外にも具体的に注意しておきたい2点について整理していきたいと思います。
中国株投資の注意点1:米国市場での上場廃止リスク
例えば、阿里巴巴集団(アリババ)株は、米国市場(BABA)と香港市場(09988)で取引が可能です。
厳密には、「元々、米国市場に上場していたのが、香港市場でも取引できるようにした」と言った方が良いかもしれません。最近は、米国市場に上場している中国企業が香港市場や上海市場への回帰を志向する動きが出始めています。その背景にあるのは米中対立です。
実際に今年(2021年)の1月、米国市場に上場していた、中国の通信関連企業(チャイナ・テレコム、チャイナ・モバイル、チャイナ・ユニコム香港)の3銘柄が上場廃止となりました。
事の発端は、トランプ前米大統領が昨年(2020年)11月12日に、「中国人民解放軍と関係が深い企業への投資を禁止する」という大統領令に署名したことです。現在の米国はバイデン新政権へと移行しましたが、今後の米中関係の動向によっては、米国市場で取引できなくなることも想定し、香港や上海への上場を検討する中国企業があってもおかしくはありません。
とはいえ、次々と米国市場で取引できなくなる銘柄が増え続けるというわけではなさそうです。
もちろん、中国当局と関係が深く、人権や安全保障面で好ましくない銘柄は上場廃止の該当銘柄になる可能性はありますが、そもそも、中国企業にとって米国株市場に上場することは、米国の厳しい審査を通過したという企業への信頼性を高めるほか、成長企業株投資への文化が根付いている米国市場で上場することによる資金調達のしやすさ、そして、世界中の投資家が集う米国市場に上場することで企業の認知度向上につながるなど、多くのメリットがあり、今後も米国市場に上場する中国企業は増えてくると思われます。
また、米大統領選後の昨年(2020年)12月に米議会で可決・成立した対中関連法案の中に、「外国企業説明責任法」というものがあります。この内容を簡単に説明すると、上場外国企業に情報公開を義務付け、3年連続で米当局の監査に応じない企業の証券取引を禁止および上場廃止させるというものです。
「やっぱり、上場廃止となる中国企業が増えるのでは」という印象を抱いてしまいがちですが、3年という時間的猶予があるため、その間に中国企業の情報開示の透明化が進めば良いわけですし、中国市場への複数上場も徐々に進んでいくと思われるため、急に上場廃止が決まって、対応に困るというケースは限定的になると思われますが、米国上場の中国株を取引する際には一応、覚えておきたいリスクです。
中国株投資の注意点2:企業に対する中国当局の干渉
中国当局による企業への干渉の例として、アントグループの上場延期が挙げられます。
アントグループは、12億人のユーザー数を誇るスマホ決済の「支付宝(アリペイ)」事業を抱えるアリババグループ傘下の金融会社です。本来は、昨年11月5日に香港と上海科創板に上場する予定で、世界最大のIPO(新規公開株)になるともいわれていたのですが、直前の11月3日に突如として上場延期が発表されました。
上場延期の理由については明らかにされておらず、「アリババグループのトップである、馬雲(ジャック・マー)氏が中国の金融当局を批判したことが問題視された」「民主派への弾圧を強めている香港情勢を受けて、習近平(シー・ジンピン)が体制の強化を狙ったアピール」「これからデジタル人民元を普及させたい中国当局にとって、制御できないほど民間金融が普及してもらっては困るので、排除の動きに出た」など、さまざまな臆測を呼んでいます。
アントグループの上場が延期となった後も、スマホ経由の銀行預金サービスを一部取り止めたり、「独占的行為」の疑いでアリババグループの調査が開始されたりしており、いずれにしても当局の強い干渉があったことは想像できます。
また、3月5日から開催される全人代(全国人民代表大会)ではネット・IT企業を対象とした「独占禁止法」の改正が議論されると言われています。
中国当局の管理強化が企業成長を阻害する恐れも
下図は中国企業のセクター分類と当局の管理度合いのざっくりとしたイメージです。上のセクターに行くほど国営企業が多く、当局の管理も強い傾向があります。反対に、下に行くほど民間企業が多く、当局の管理も緩くなる傾向があります。
■図:中国企業のセクター分類と当局の管理度合いのイメージ
「BAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)」をはじめ、急成長を遂げてきた中国企業の多くは比較的自由な環境でビジネスの幅を広げて、さまざまなイノベーションを生み出してきました。そして、規模の拡大に伴って、当局が管理を強める傾向がある分野に進出していったわけですが、ECサイトがビジネスの出発点だったアリババがアントグループを設立し、金融事業に乗り出したのもその一例といえます。
各方面に進出して、影響力を強めていくアリババに対して当局が管理に乗り出したとすれば、これまでの自由なビジネス環境が損なわれてしまう恐れがあり、今後の成長が阻害されたり、対外的にも競争力の低下や政治的摩擦も生じやすく、実はこのアントグループの上場延期やその周辺で起こっている出来事は中期的なリスクにつながっている可能性があります。
中国株はどこの市場で取引できるか確認する必要がある
この他にも、中国株では取り引きしたい銘柄が、香港、上海、日本、米国など、どこの市場で取引できるかを確認する必要があり、場合によっては複数の市場で銘柄を保有することで資産状況のチェックや管理が面倒になる可能性があるなど、細かい注意点もありますし、超長期的なスパンで見た中国は日本以上の高齢化社会が到来するため、社会保障や財政への懸念も深刻な課題です。
さらに、習近平氏に権力が集中する政権構造となっているが故に、次の指導部への引継ぎがスムーズにできるのかなどの懸念もくすぶりそうです。
とはいえ、現在の中国株には有望な銘柄やETF(上場投資信託)がたくさんあり、収益を得る機会が多いのも事実です。中国株だけに固執する必要はありませんが、投資対象の選択肢として魅力的だといえます。
■このシリーズを続けて読む
>【前編】米国株に続くブーム到来?中国株が注目される4つの理由
>【中編】TikTokに投資できる?中国株は何を買う?銘柄選びのヒント
>【後編】投資初心者も注目の中国株!気をつけたい2つの大きな注意点<この記事>
(土信田 雅之)
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