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たった数日間で天国から地獄へ!史上最大級のマージンコール

トウシル / 2021年4月1日 16時8分

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たった数日間で天国から地獄へ!史上最大級のマージンコール

たった数日間で天国から地獄へ…

 前代未聞となる200億ドル(約2兆2,000億円)規模の株式ブロック取引が26日に行われ、世界中の投資家を震撼(しんかん)させた。著名投資家ジュリアン・ロバートソンのタイガー・マネジメントで働いた経歴のあるビル・ファンは、自身のヘッジファンドを閉鎖した後、ファミリーオフィスとしてアルケゴスを設立した。

 事情を知るトレーダーによれば、同氏は自己資金の数倍の資金を借りて非常に大きくレバレッジを効かせる形でロング・ショート戦略を採用していたという。ビル・ファンは今、史上最大級のマージンコールの渦中にあり、同氏の巨大ポートフォリオは厄介で痛みを伴う清算過程にある。

 また、このブロック取引の余波なのか、米国の野村證券で多額の損失が生じる可能性があると29日に報道が出ている。ビル・ファン氏のファミリーオフィス、アルケゴス・キャピタル・マネジメントによる取引巻き戻しに関連し、その請求額は26日時点での市場価格に基づく試算で約20億ドル(約2,200億円)という。

 アルケゴス・キャピタル・マネジメントが絡むポジションが強制的に清算されたことで影響を受けた金融機関の損失は合計で50億ドル~100億ドル(約5,510億円~1兆1,030億円)に上る可能性があるという。

 バブルのピーク近辺では粉飾決算や詐欺事件が多発する。2008年のバーナード・マドフの詐欺事件やエンロン・ワールドコム事件などはその典型である。

 米国ではサブプライム不動産詐欺事件が、GFC(世界金融危機=リーマンショック)を引き起こした。しかし、このリーマンショックでは多くの不正行為が明らかになったが、監獄に行った人間は一人もいない。ウォール街はいつも「やったもの勝ち」なのである。

 今回のアルケゴスの騒動が、「人けのない道路で発生した単発の事故なのか、それともいつ起きてもおかしくない玉突き事故なのか」(3月31日 ウォール・ストリート・ジャーナルの『アルケゴス危機は投資家への警告』)が問題だが、ゴキブリは1匹ではない。これは氷山の一角であろう。

 ウォーレン・バフェットは、「トータル・リターン・スワップやこれと似たデリバティブは【金融の大量破壊兵器】であり、今は隠れているものの、潜在的に多大な損害を及ぼす危険をはらんでいる」と2013年から警鐘を鳴らしていた。

 アルケゴス・キャピタル・マネジメントでビル・ファンがファミリーオフィスで匿名的にひそかに積み上げた巨額の資産は、たった数日で消失した。

 史上最高の投機家と呼ばれたジェシー・リバモアは、

【株取引には、楽に金がもうかるといった印象があり、人を魅了するが、愚かで安易な考えから相場に手を出せば、簡単にすべてを失ってしまう。無知の対極にある知識は、大きな力となる。 無知を警戒せよ。学習、研究をしっかりおこなうこと。遊び半分ではなく、本腰を入れて取り組まなければならない】

【相場の動きを漫然と「期待して待つ」のはばくちであり、忍耐強く待ち、シグナルを見いだした瞬間「反応する」のが投資・投機である。現金をもたない相場師は、在庫をもたない小売商と同じで、相場師としての命脈は保てない】

 と語っている。

 拝金主義と緩和中毒のなかで、われわれは今こそジェシー・リバモアの言葉を思い起こすべきであろう。ジェシー・リバモアは、「ウォール街にあるいは株式投資・投機に新しいものは何もない。ここで過去に起こったことは、これからもいく度となく繰り返されるだろう。この繰り返しも、人間の本性が変わらないからだ」と述べた。過去に起こったことが何度でも繰り返されるというのは、どういうことなのか? <投機のサイクル>というのは、おおむね以下のようなサイクルで構成されているということだ。

<投機のサイクル>

出所:リアルインベストメントアドバイス

1)バリューレベルで投資家がマーケットに参入 
2)株価が上昇 
3)変化が始まる 
4)投機家がIPOに目を止める
5)初心者投資家がマーケットに参入
6)株価が上昇 
7)ポジティブ・フィードバック・ループ、株価は上昇するのみ 
8)株価の上昇が心理的に強化される 
9)陶酔感が広がる 
10)レバレッジをかけた投資家が増える 
11)陶酔感が熱狂になり、クレジットが拡大
12)熱狂によりリスクの許容度が高まる
13)リスク許容度の高まりによって詐欺や相場操縦が横行する
14)マーケットがクラッシュし、投機が一掃される
15)新たな規制とともに政府が介入
16)投資家はすべてのリスクを避ける

ワクチン接種でニューヨークとロンドンが巻き返し

 ドルが引き続き堅調で、ドル/円は110円台に上昇している。過去数年間、最もトレンドが発生しにくい通貨の代表であったドル/円のチャートは、日足で久々の大相場となっているが、週足でも4週間前から買いトレンドシグナルが点灯している。

ドル/円(日足)

メガトレンドフォローの売買シグナル(赤↑=買いシグナル・黄↓=売りシグナル)
出所:楽天MT4・石原順インディケーター

 ドルに対して相対的に健闘しているのがポンドである。昨年の10月9日に買いシグナルが点灯して以来、ボンド/円は爆上げしたが、3月24日にようやく売りトレンドに転換した。だが、それもつかの間、3月30日には買いシグナルが点灯している。他通貨の動きに比べるとポンドは底堅い。

ポンド/円(日足)

メガトレンドフォローの売買シグナル(赤↑=買いシグナル・黄↓=売りシグナル)
出所:楽天MT4・石原順インディケーター

 ブルームバーグの記事『世界の金融ハブ、ワクチン接種でNYとロンドン巻き返し-東京出遅れ』によると、世界でワクチン接種競争が起きており、既に接種を1回受けた住民の割合はロンドンが約30%、ニューヨークは約23%であるのに対し、一方、これまで感染者数が相対的に少なかった香港や東京は大きな後れを取っている。

 世界の金融センターの中でも、新型コロナウイルスによる打撃が特に深刻だったのはロンドンとニューヨークであるが、ワクチン接種競争では他の都市に先行しているという。

 同じ欧州通貨でもユーロは軟調だ。ユーロ/ドルの日足は売りトレンドが点灯中である。一方で、ユーロ/円の日足は売りトレンドとはなっていない。毎年、4月にトレンドが転換することが多いユーロ/ドルの動向が気になるところだ。

ユーロ/ドル(日足)

メガトレンドフォローの売買シグナル(赤↑=買いシグナル・黄↓=売りシグナル)
出所:楽天MT4・石原順インディケーター

ユーロ/円(日足)

メガトレンドフォローの売買シグナル(赤↑=買いシグナル・黄↓=売りシグナル)
出所:楽天MT4・石原順インディケーター

 ワクチンを打ったか打っていないかは、資本とグローバル人材の自由な流れに依存する世界の金融センターでは特に重要な意味を持っている。人口の大部分にワクチンを接種することは、経済活動などの正常化に向けた切り札だとしているが、こうしたことが通貨高にも影響しているのであろうか? 現在、欧州で巻き起こっている「ワクチン・ナショナリズム」は、構造的な脱グローバリゼーションの傾向を示す兆候の一つとも言えるであろう。

ドル高は米成長率の高さの現れ?

 筆者は莫大(ばくだい)な債務を抱える米ドルに対して長期的には弱気の姿勢を崩してはいないが、2021年に入り、昨年の反動相場とシーズナリー要因からドル高傾向の相場となっている。

ドルインデックス先物のシーズナリーチャート

(上昇=ドル高・下落=ドル安)
 出所:エクイティクロック

 G10各国の2021年の成長率見通しを見てみると、直近では米国、カナダの成長率見通しが昨年末に比べて引き上げられている。英国は下方修正ではあるものの、他国に比べて成長率見通しは高い。

G10各国の2021年成長率見通し(青:直近 水色:2020年末)

出所:ゼロヘッジ

 ドルインデックスの動きは成長率見通しと相関関係がある。以下は、米国の成長率見通しとG9の見通しを比較したものを青い線でプロットしてあるが、この成長率レシオに比べて、ドルインデックスは明らかに出遅れており、今後、上昇していくことが想定される。

ドルインデックス(水色)と米国対G9各国の期待成長率

出所:ゼロヘッジ

 グローバルPMIとの相関から見れば、米債利回りはここからさらに上昇していく傾向が読み取れる。

米10年債利回り(水色)とグローバルPMI(青)

出所:ゼロヘッジ

 長期金利の急激な上昇については弊害も指摘されるが、相場的には2%程度の利回りを織り込むような形で、「米金利上昇=ドル高」という図式での動きが当面は想定される。

米10年国債金利(週足)

出所:石原順

 一方で、米金利の上昇は、新興国や資源国通貨にはマイナス要因となる。また、ここにきて原油価格が不安定になり始めている。コモディティの「スーパー・サイクル」入りも指摘されているが、コモディティ通貨である豪ドル、NZドルのチャートを確認しておこう。

 豪ドル/ドルは日足で売りシグナルが点灯中である。大きく振りながら下げており、しばらくは不安定な動きになりそうだ。

豪ドル/ドル(日足)

メガトレンドフォローの売買シグナル(赤↑=買いシグナル・黄↓=売りシグナル)
出所:楽天MT4・石原順インディケーター

 NZドル/ドルも日足で売りシグナルが点灯中だ。週足では売りシグナルは点灯していないが、調整相場の局面である。

NZドル/ドル(日足)

メガトレンドフォローの売買シグナル(赤↑=買いシグナル・黄↓=売りシグナル)
出所:楽天MT4・石原順インディケーター

3月31日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」

 3月31日のラジオNIKKEI「楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー」は、土信田雅之さん(楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト)をゲストにお招きして、「相場の鍵を握る良い金利上昇と悪い金利上昇」、「相場は恐怖と欲望のゲーム」、「リバモアから学ぶ教訓」というテーマで話をしてみた。ぜひ、ご覧ください。

 ラジオNIKKEIの番組ホームページから出演者の資料がダウンロードできるので、投資の参考にしていただきたい。

3月31日: 楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー

出所: YouTube

(石原 順)

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