失敗の多い相続!税対策が逆にリスクのケースあり!我が家は大丈夫?
トウシル / 2021年5月28日 6時0分
失敗の多い相続!税対策が逆にリスクのケースあり!我が家は大丈夫?
相続財産8,000万円では相続税対策は必要か?
自分には関係ないようで、意外と関係する人も多いのが相続税。特に都心部であれば、土地の値段が相対的に高いため、持ち家があれば、それだけで十分に相続税の課税対象になってきます。
小規模宅地の特例を使うことで相続税はかからなくなる場合でも、相続税の申告書は提出する必要があります。
先日、こんな相談がありました。
「財産が全部で8,000万円くらいあります。相続税対策をしておいたほうがよいですよね?」
聞くと、不動産業者からアパートを建てて相続税の節税をした方がよいですよ、と言われたそうです。
これに対し筆者は「そのくらいの財産であれば相続税の節税など無理にする必要はないのでは?」と答えました。
8,000万円の財産で470万円の相続税をどう見るか
現在、相続税は「3,000万円+相続人の数×600万円」の基礎控除が設けられ、これを超えた分に課税がされることになっています。
ですから、財産が8,000万円で、相続人が子ども2人だとすると、課税される財産は基礎控除4,200万円を差し引いた3,800万円となります。
そして相続税額は合計で470万円です。もし財産を子ども2人で4,000万円ずつ相続したなら、1人あたりの相続税は235万円です。
この相続税額を高いと見るか安いと見るかは人それぞれでしょうが、筆者としては「4,000万円の財産を相続して税額が235万円ということは、税率は6%弱。それなら素直に納税しておいてもよいのではないか」と考えます。
どのくらいの相続税額であれば積極的に相続税対策をとるべきかどうかは、さまざまな要素がからんでくるため一概には言えませんが、筆者の見解としては2,000万~3,000万円以上が一つの目安です。
要は、相続税対策を行うことにより生じるリスクよりも、相続税軽減により得られるメリットが大きいかどうかで判断することになります。
本当に不動産に換える必要性があるのか?
例えば相続税対策の典型的なパターン、借り入れをしてアパートを建てるとなると、確かに相続税額は軽減されます。でも「アパート経営」という事業そのものが成り立たなければ、逆にお金が出ていってしまうというリスクも同時に生じるのです。
立地的にアパート経営がうまくいく可能性がある場所であれば、やってもよいと思いますが、単に相続税を軽減するのが目的なのだとしたら、アパート経営が事業として成立するのかどうかをよく考えてから実行するようにしてください。
相続税対策でアパート経営を検討する場合、もう一つ考えるべきなのは、財産を相続する側がアパートを欲しいかどうかです。
もし筆者が相続人の立場だとすれば、十分に収益性のあるアパートならもらってもよいですが、事業として成り立たないようなアパートをもらっても困ってしまいます。
「アパートを建てるなんて余計なことしないで、多少、相続税が増えたとしてもお金の形でもらった方がよかった」と思うのが正直なところです。
相続する側にとっては、相続税の負担がどれだけかという点も大事ですが、それ以上に財産をどんな形のものでもらうかも重要なのです。
相続税を抑えるため、よかれと思ってやったのに、相続する側からすれば喜ばしいことではなかった……ということがないように、対策を実行する前に、相続する側の意見も事前に聞いておいた方がよいと思います。
財産がいくらか分からなければ、対策が必要かどうかも分からない
ところで、筆者は相続に対する相談をいわゆる「親世代」(財産を渡す側)だけでなく、「子世代」(財産をもらう側)から受けることもよくあります。
子世代の方にとって気になるのが、「親はどのくらい財産を持っているのか?」「それに対して相続税はかかるのか? かかるとしたらどれくらいなのか?」という点です。
しかし、多くのケースで親世代が子世代に対して、財産の内容や金額を開示していないため、子世代はやきもきしています。
ただ、親世代がどのくらいの財産を持っているか、おおよそでも分からなければ、相続税の対策が必要かどうかも判断ができません。そのため、筆者からも有用なアドバイスができないのです。
なかなかハードルは高いとは思いますが、専門家のアドバイスを求めるのであれば、「自分は相続税を払う側だからいったいどのくらいの負担になるのか心配だ。どのくらいの額の財産があるのか事前に知っておきたい。」などと伝え、親世代の財産の内容について教えてもらうようにしてください。
小規模宅地の特例が使えるかどうかは早めに確認しておこう
自宅などに小規模宅地の特例が使えるかどうかの確認は、早めに行っておいた方がよいでしょう。
自宅以外に多額の財産がない場合は、小規模宅地の特例を使うことで相続財産が圧縮でき、相続税がかからなくなる可能性が高くなるからです。
小規模宅地の特例は非常に難解で、税理士であっても完璧に理解している人はまずいないと言ってよいくらいです。
ですから、ご自身で何となく「うちは多分使えそうだから大丈夫だな」と判断するのではなく、税理士に小規模宅地の特例が適用可能か、もし現時点で適用が不可能であれば、可能にするための方策が取れるかどうか、などを相談することをお勧めします。
さらには、相続人のうち誰が自宅を相続するかにより、小規模宅地の特例が使えるかどうかが異なることもあります。その場合はそれぞれのケースの税額をシミュレーションしたり、遺言書であらかじめ相続させる人を決めておくなどの対策も必要となってくる場合もあります。
相続税対策というものは、一度実行してしまうと元には戻せません。税理士・公認会計士などの専門家に相談の上、メリット・デメリットを把握したうえでよりよい方法を選択するようにしてください。
(足立 武志)
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