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コロナ感染再拡大と世界経済後退リスク

トウシル / 2021年7月21日 17時11分

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コロナ感染再拡大と世界経済後退リスク

感染再拡大と世界経済後退リスク                     

 先週はドル高円高の動きでした。注目されていた米国の物価指標がCPI(消費者物価指数:前年比+5.4%)、PPI(生産者物価指数:同+7.3%)とも予想も前月も上回りましたが、ドル/円は上昇しても1ドル=110.70円近辺止まりで111円には届かず、むしろ110円割れとなりました。

 16日(金)の米小売売上高も予想を上回ったため、ドル/円は一時110円台に反発しましたが、110.円台前半が精一杯で110円台後半には戻ることができませんでした。その後110円手前まで下げ、頭の重い地合いで越週となりました。

 そしてドル高円高の動きはクロス円の円高となり、クロス円が軒並み下落し、ドル/円に円高圧力をかけました。

 先週は、NZ中銀が定例理事会で債券買い入れを7月23日から停止すると予想外の決定をしました。この決定によってNZドルは急伸し、NZドル/円も上昇しましたが、翌日にはその影響も消化してしまったようです。予想外のNZ中銀の量的緩和縮小の発表にもかかわらず、その影響を一日で消化してしまうほどクロス円全般の下落圧力が強い週でした。

 ユーロ/円、ポンド/円、豪ドル/円は3週連続の陰線*となっており、今週20日はNY株の反発とともにクロス円も買戻しがみられました。しかし、この陰線の地合いは、まだしばらくは続きそうな気配です。

*陰線…始値よりも終値が安いこと。週足の陰線とは週の終値が週の始値よりも円高で終わること

 米国物価は予想を上回りました。しかし、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が、14日の議会証言で物価上昇は「一時的」との従来の姿勢を強調しながらも、長期化するリスクを述べたことから、マーケットはある意味で安心感を得たのかもしれません。物価指標の発表後、米国株は上昇し、米長期金利は低下しました。

 しかし、米国株は今週に入って、新型コロナウィルスの感染再拡大への警戒から売りが強まり、NYダウは19日に、一時900ドルを超える下げとなり、9カ月振りの下落幅となりました。米長期金利も一段と低下し、米10年債利回りは1.2%を割れました。1.2%割れは今年2月の水準です。

 6月後半には1.5%前後で推移していた米10年債利回りが、7月に入って急低下していることは、ドル/円の頭を抑えている要因のひとつになっているようです。

感染者増加中、各国主要閣僚も自主隔離へ

 米国株急落の背景にある、新型コロナウィルスの感染再拡大による景気後退懸念は欧州にも広がってきています。加えて欧州では、ドイツ、ベルギーの洪水被害の影響も懸念され、欧州株が下落し、ユーロの頭を重たくする要因となっています。

 また、英国では、19日に規制をほぼ全て解除しましたが、感染者は増えています。英政府は重症者や死者が抑制されているため「コロナとの共生」という賭けに出たようです。ところが、解除直前の17日、英国のジャビド保健相がPCR検査で陽性のため自主隔離していると公表しました。ジョンソン首相も濃厚接触者と判定され、自主隔離とのことです。

 主要閣僚が自主隔離に入る事態となっている中での規制解除となりましたが、市民任せの規制解除の方針には批判も多く、この先の英国の動向には注視する必要があります。

 新型コロナウィルスの感染再拡大は、感染力の強いデルタ株の勢いが増していることも懸念材料ですが、同時に懸念されているのが、経済がピークを迎えたのではないかという見方が強まってきていることです。

 これまで世界経済を牽引してきた米国と中国の経済成長が、ピークを過ぎたのではないかという見方です。昨年の反動による需要急回復が一段落したことや、経済対策の効果が一巡したことなどによって、ピークが過ぎたかもしれません。もし、そうならば、金融緩和は長期化し、金融緩和が長期化しても株は上がりづらく、米長期金利は低い水準が続く可能性があります。

 特に中国経済が気になります。コロナと無縁の中国経済はもっと元気になってもよいはずですが、もたもた感が強い中で、規制強化など国内企業の経済活動の足を引っ張るような政策もみられます。中国の人口増加率が鈍化し始めており、中国の若者に広がっている「寝そべり族」**に象徴されるように中国の国運のピークは過ぎたのでしょうか。

**「寝そべり族」…競争に疲れ、最小限の仕事しかしない生き方を選ぶ若者たちのこと。お金がなくなれば1年のうち1〜2カ月仕事をするが、ふだんは家で寝そべり、外で寝そべる。猫や犬のように寝そべっている生活スタイルに、中国当局は経済発展を阻む要因になりかねないとして懸念を強めている。

 米中経済がコロナ後の世界経済を牽引するというこれまでの構図から、米国が引っ張り、中国が世界経済の足を引っ張るという構図に変わる可能性もあり、注視したいと思います。

 その米国経済好調の象徴である住宅の各種指標が今週発表されます。指標結果によっては、MBS(住宅ローン担保証券)のみテーパリング開始、という議論が高まるのかどうか、あるいは、世界経済減速の警戒感が浮上してきている中で、どのように議論されていくのか注目です。

高止まりのIMM円ショートと近づく円安牽制水準

 IMM(米国シカゴにある通貨先物市場)の円ポジションのネット・ショートは7月6日の69,136枚から7月13日の56,250枚へと減少し始めていますが、まだ、高止まりの水準のため、ショート解消の余地は大きいようです。

 また、ドル/円の実質実効為替レートが、2015年6月に黒田総裁が「ここから更に実質実効為替レートが円安に振れていくことはありそうにない」と円安牽制をした水準に近づいていることも、マーケットでは注目され始めています。その時の名目為替レートは125円です。現状の110円とはかなりの開きがあるため、あくまでひとつの目安ですが、マーケットが意識してくるとドル/円の頭を重たくするかもしれません。

「8月は円高」とのアノマリー***が今年も起こるのか、あるいは、オリンピック観戦も加わり、今年は早く夏枯れ相場になるのか注目です。

***アノマリー(Anomaly)…理論的証拠があるわけではないが、経験的に観測できる現象

(ハッサク)

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