1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

もはや魔力!?金(ゴールド)は人類を魅了し続けている

トウシル / 2021年8月3日 5時0分

写真

もはや魔力!?金(ゴールド)は人類を魅了し続けている

金(ゴールド)と人類の関係。金は人類を魅了し続けてきた

 金(ゴールド)は、いつの時代も、さまざまな意味で、人類に影響を及ぼしてきました。ピラミッドや古墳などの大昔の有力者の墓からは、金(ゴールド)を用いた宝飾品が見つかっています。

 墓に魅惑の輝きを放つ宝飾品が収められていることは、埋葬された人が生前、大きな権力を有していたことを示しています。死後の世界でも、権力を振るえるよう、墓に宝飾品が収められた、との説もあります。金(ゴールド)が権力の象徴である例です。

 以下のグラフは、有史以来、これまでに人類が生産した金(ゴールド)が、どの分野に使われているのかを示しています。統計では「地上在庫」とされています。

図:これまで人類が生産した金(ゴールド)の使い道

出所:Gold Hubのデータをもとに筆者作成

 金(ゴールド)の宝飾品は、権力の誇示だけでなく、保有者の気分を高揚させたり、安堵(あんど)させたりする効果があります。長い歴史の中で、人類はこうした効果を求めて、採掘した金(ゴールド)の半分弱を宝飾品にしました。

 宝飾品に次いで割合が大きいのが、投資用です。内訳は、20%が地金(じがね)やバー、2%が金(ゴールド)を株式のように機動的に売買できるように作られた金融商品ETF(上場投資信託)の裏付けです。ETFが売れれば売れた分だけ、指定された金融機関に金(ゴールド)が積み上がる仕組みです。

 次は公的機関の保有です。割合は17%です。ここで言う公的機関とは、各国にある銀行の銀行と呼ばれる「中央銀行」と「IMF(国際通貨基金)」です。後述する「金市場の自由化」後も、米国をはじめとした主要国の中央銀行は、金(ゴールド)の保有を維持しています。

 また、近年は、何かあった時への備えとして積み上げている外貨準備として、金(ゴールド)の保有量を増やす国(中央銀行)が増えています。

 その他加工用などは15%です。伸ばしやすい(加工しやすい)、電気を通しやすい、さびない、などは、金(ゴールド 元素記号Au)の物質としての特徴です。こうした特徴が買われ、金は電子製品に幅広く用いられています。

 電子製品が広く用いられている国や地域を「都市鉱山」と呼ぶことがあります。また、工業的な用途に加え、金は生物の体と親和性が比較的高いとされ、入れ歯などの歯科用の金属としても用いられています。

なぜ金(ゴールド)と人類の付き合いは長いのか⁉

 金(ゴールド)と人類の付き合いについて考える際、金が持つ物質的側面に注目しなければなりません。金の融点(熱した時に溶解する時の温度)は、およそ1,064℃です(銅の1,084度に近い)。

 金属を加工する際、何かを熱して高温の環境をつくり出す技術が必要ですが、融点が鉄(1,538度)やプラチナ(1,768度)よりも低いことは、古代エジプトや古墳時代の日本でも、金(ゴールド)を加工することを可能にしたと考えられます。

 人類が、「早くから金(ゴールド)を加工するための技術を習得できたこと」は、人類と金の付き合いが長いことと、深い関わりがあると、言えるでしょう。

 その他にも、「魅惑の輝きを放つこと」、「汎用性があること」、「溶解して繰り返し使えること」、「さびにくく形を保存できること」、「人類が金(ゴールド)に価値があるとみなしたこと」などが、有史以来、常に人類の身近に金(ゴールド)があった理由であると、考えられます。

金(ゴールド)にはどのような魅力があるのか?

 以下は筆者が考える、金(ゴールド)の(魔力とも言える)魅力です。ここでは、できるだけ素の金の魅力を抽出するため、株式や通貨などの「市場」との関わりを省いています。

図:金(ゴールド)の魅力(魔力?)

出所:筆者作成

 モノの本には、金(ゴールド)は人を虜(とりこ)にする魅力を持っている、という趣旨の記載があります。

 上記の通り、人類が金の虜になってしまう要因に、「量が少ないこと」「機能的であること」「輝いていること」「価値がゼロにならないこと」「価値を保存できること」そして、「世界共通であること」が挙げられます。

 端的に言えば、量が少なく、幅広い用途に使うことができ、それでいて魅惑の輝きを放ち、価値がゼロにならないばかりか数千年も価値を保存でき、しかも世界共通、なのです。地球上で、このような量が少なくかつ高機能の物質は、稀有な存在と言えるでしょう。

 以下の図は、金(ゴールド)の地上在庫と世界の人口の関係を示しています。この間、金の地上在庫は増加しているものの、世界の人口が増加しているため、人類一人あたりの金の増加率は限定的です。

図:金(ゴールド)の地上在庫と世界の人口

出所:Gold Hub、国連のデータをもとに筆者作成

 長期的には、主要生産国からの金(ゴールド)の生産量は、頭打ちになりつつあります。このため、人類一人あたりの金の数量は今後、減少する可能性があります。

 人類は歴史的に、金(ゴールド)の「希少性(=類まれな高機能+量が少ないこと)」に魅了されてきました。そしてこのような状況は、今後も、人類が金に希少性を感じ続ける限り、継続すると、考えられます。

金市場の自由化後、金(ゴールド)の投資手法の多様化が進行

 話は第二次世界大戦後に飛びます。同大戦後の金相場は1トロイオンスあたり35ドルでほぼ一定でした。この状況が1970年代前半まで続きます。

 当時は戦後の通貨体制の安定と各国の経済復興・発展を目的とし、各国の通貨と米ドルの交換比率を固定し、その米ドルと金(ゴールド)の交換比率を固定する、金ドル本位制が敷かれていました。金(ゴールド)の量が事実上の、米ドルを発行できる上限だったわけです。

 しかし、世界各国の経済復興・発展が進み、資金需要が急増し、やがて、金(ゴールド)の量がドルの供給量を縛ることが、発展の足かせになりはじめました。

 そして50年前(1971年)の8月、いわゆる「ニクソンショック」と呼ばれた、ニクソン米大統領(当時)の金と米ドルの交換停止の表明を受け、米ドルは金がなくとも発行できるようになりました。この出来事をきっかけに、徐々に各国の通貨体制は変動相場制に移行しはじめます。

 金(ゴールド)は、ニクソンショック前の体制に回帰する動きを見せたスミソニアン体制が崩壊した1973年以降、名実ともに戦後はじめて、どの通貨とも関わらずに存在できるようになりました。

 以下のグラフのとおり、1970年代前半以降、金相場は大きく変動する時代に突入しました。(筆者はこの一連の出来事を、金市場の自由化ととらえています)

 この金相場の自由化は、金(ゴールド)の投資手法の多様化のきっかけとなりました。自由化後の金のダイナミックな値動きを求める投資家のニーズに応えるべく、取引所や主要な機関は、金投資を啓蒙(けいもう)しながら、さまざまな投資手法を開発しました。

 これにより、純金積立の裾野が拡大し、金(ゴールド)に関連するETFや投資信託、さらには金のCFD(差金決済取引)の取引をすることができるようになりました。また、投資需要が増加したため産金会社への注目度が増しました。

 そして、主要国の先物市場では相次いで金が上場しました。これらはいずれも、自由化後に起きたことです。

図:金価格の推移 単位:ドル/トロイオンス

出所:ブルームバーグのデータをもとに筆者作成

 投資手法が多様化したことで、投資家の方々は、投資をする期間やリスク許容度に応じて、金の取引ができるようになりました。以下はイメージ図です。

図:金(ゴールド)のさまざまな投資手法

出所:筆者作成

金(ゴールド)を持つ変動要因の多様化も進行

 近年、実はもう一つ、金(ゴールド)市場で多様化が進んでいる分野があります。「変動要因」です。以下は筆者がイメージする金市場を取り巻く6つのテーマです。

 近年の金相場は、「有事と言えば金高」、「株安と言えば金高」などと、材料を点でとらえる旧態依然の考え方では正しく分析することはできません。

 前回の「五輪と金メダルを通じて、金(ゴールド)相場を読む」で述べた通り、金市場に関わる以下の6つのテーマを俯瞰する、換言すれば、「同時に尊重する」ことが非常に重要です。

図:金市場の6のテーマ

出所:筆者作成

 足元、新型コロナのデルタ株の感染拡大が起きていることで、世界的に不安拡大が起きており、(1)有事のムードが拡大(資金の逃避先需要が増加)傾向にあると、考えられます。

 また、年初に急上昇したドル金利(米10年債利回り)が低下傾向にあることや、ビットコインなどの暗号資産価格が一時の高値から反落していることなどから、(3)の代替通貨の需要が増加傾向にあると考えられます。

 目先、株価が上昇して(2)の代替資産の側面で下落圧力がかかったとしても、上述のとおり(1)および(3)起因の上昇圧力がかかれば、金(ゴールド)価格は上昇する可能性があると、筆者は考えています。

 また、代替6つのテーマの時間的な影響力のイメージは以下です。

図:6つのテーマが与える金市場への影響(イメージ)

出所:筆者作成

 本レポートが、皆さまのお役に立てば幸いです。

 [参考]貴金属関連の具体的な投資商品例

 楽天証券の純金積立「金・プラチナ取引」はこちらからご参照ください。

純金積立

金(プラチナ、銀もあり)

国内ETF/ETN

1326 SPDRゴールド・シェア
1328 金価格連動型上場投資信託
1540 純金上場信託(現物国内保管型)
2036 NEXT NOTES 日経・TOCOM金ダブル・ブルETN
2037 NEXT NOTES 日経・TOCOM金ベアETN

海外ETF

GLDM SPDRゴールド・ミニシェアーズ・トラスト
IAU iシェアーズ・ゴールド・トラスト
GDX ヴァンエック・ベクトル・金鉱株ETF

投資信託

ステートストリート・ゴールドファンド(為替ヘッジあり)
ピクテ・ゴールド(為替ヘッジあり)
ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)
三菱UFJ純金ファンド

外国株

ABX Barrick Gold:バリック・ゴールド
AU AngloGold:アングロゴールド・アシャンティ
AEM Agnico Eagle Mines:アグニコ・イーグル・マインズ
FNV フランコ・ネバダ
GFI Gold Fields:ゴールド・フィールズ

国内商品先物

金・金ミニ・金スポット・白金・白金ミニ・白金スポット・銀・パラジウム

海外商品先物

金、ミニ金、マイクロ金(銀、ミニ銀もあり)

商品CFD(金・銀)

(吉田 哲)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください