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J-REIT上昇、平均分配金利回りは3.3%に。利回りの魅力低下

トウシル / 2021年9月1日 7時50分

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J-REIT上昇、平均分配金利回りは3.3%に。利回りの魅力低下

※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
[動画で解説]J-REIT(ジェイ・リート)上昇 平均分配金利回り3.3%まで低下 利回りの魅力低下
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「東証REIT指数」はコロナ・ショック前の水準に近づく

 東証REIT指数【注1】は、2020年2月から3月にかけて、コロナ・ショックで暴落しました。流動性があまりない中で投げ売りが出たため、一時ほぼ半値になる暴落となりました。

【注1】東証REIT指数

東京証券取引所に上場しているREIT(リート:不動産投資信託)全銘柄から構成される指数。時価総額加重平均で、時価総額の大きい銘柄ほど組入比率が高くなる。東証に上場しているREITを、海外REITと区別するために、J-REIT(ジェイリート)と呼ぶこともある。

東証REIT指数の動き:2020年1月6日~2021年8月31日

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 コロナ・ショックで、キャッシュ保有を増やしたい金融機関などから「問答無用の売り」が出たことが、極端な下げにつながりました。3月には平均分配金利回りが一時6.7%まで上昇しました。

 さすがに割安と判断した買いが増え、そこから5月まで指数は急反発しました。その後も利回りを評価した買いが続き、順調に上昇が続いています。

 2021年8月末時点で、東証REIT指数は2,151.96まで上昇し、コロナ・ショック前の水準に近づいています。ただし、東証REIT指数の平均分配金利回りは、指数の上昇によって低下しました。8月末時点で3.3%まで下がり、利回りの魅力は低くなりました【注2】。

【注2】平均分配金利回りの上昇・下落

 REITの分配金利回りは、1株当たり分配金(会社予想)をREIT価格で割り、年率換算して算出。1株当たり分配金が変わらないまま、REIT価格が上昇すると、分配金利回りは低下する。一方、1株当たり分配金が変わらないまま、REIT価格が下落すると、分配金利回りは上昇する。実際にはコロナ・ショックで、ホテルREITなどに分配金引き下げがあった。

 東証REITの平均分配金利回りは「4%くらいが妥当」と私は判断しています。3.3%まで低下した現在の利回りについて、私は「やや低過ぎる」と感じています。言い方を変えると、今のREIT市場(全体平均)は「やや買われ過ぎ」と考えています。

 個別には投資魅力の高い銘柄もありますが、市場全体では投資魅力がやや低くなったと考えています。以下に、東証REIT指数に利回りを書き込んだチャートを再掲します。

東証REIT指数の動き:2020年1月6日~2021年8月31日

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 上のチャートで、利回り4.0%のところに線をひいています。その辺りが妥当水準で、そこより上は「やや買われ過ぎ」、それより下は「やや売られ過ぎ」と私は判断しています。ただし繰り返しになりますが、それはあくまでも市場全体の見方で、REIT個別銘柄では魅力的な銘柄もあります。

コロナ・ショックでJ-REITは、日経平均を上回る暴落となった

 資産形成を行う際、「株と債券」に分散投資することは大切です。それは、ポートフォリオ運用の初歩的知識です。ところが、その常識が今、日本で通用しなくなってきています。長期国債(10年)の利回りがゼロ近辺に低下してしまったからです。

 外貨投資ならば、外国株と外国債券に分散投資する戦略が有効ですが、円建ての投資では、債券に分散投資する価値はほとんどありません。利回りが低くなり過ぎたため、お金を「守る」効果はあっても、「増やす」効果はほとんどありません。

 そこで、利回り投資の対象として国債に代わって「J-REIT」に投資してはどうかと考える投資家も出てきています。REITは利回りを得るために投資するものですから、日本株といっしょに保有して、ある程度分散投資効果があるのではないかと期待されています。

 ところが、コロナ・ショックではまったく分散投資効果はありませんでした。一部の投資家の投げ売りによるものとは言え、J-REITは日経平均よりも大きく下げてしまいました。株が下落する局面で、資産を守る効果はまったくありませんでした。

日経平均と東証REIT指数の動き比較:2019年末~2021年8月末

出所:QUICKより作成、2019年末の値を100として指数化

 確かに、ホテルREITは観光客の激減で大きなダメージを受けました。流通(小売り)REITも一時大きなダメージを受けました。

 ただし、REITの大半を占めるオフィスREITが受けたダメージは、これまでのところ軽微です。物流施設に投資する物流REITは、コロナ禍でEコマースがさらに伸びた恩恵で、業績好調です。
業績だけみると、ホテルREITを除き、ディフェンシブ(防衛的)であったと言えます。ただし価格の下落は大きく、価格はまったくディフェンシブではありませんでした。

 コロナ禍でREITが受けたダメージが、日本株全体が受けたダメージよりも相対的に軽微だったにもかかわらず、東証REIT指数の方が下げが大きくなったのには、もう一つの懸念が影響した可能性もあります。「コロナ後に対する懸念」です。

 オフィスREITは短期的には大きなダメージを受けていませんが、コロナ禍で在宅勤務が全国に広がった影響で、都市部の不動産需給が緩み始めていることが懸念されています。
コロナが収束しても、在宅勤務が広がる流れは変わらないと考えられていますので、次第に都市部の不動産への需要が、じわじわと減っていくことが懸念されています。今受けているダメージよりも、将来受けるかもしれないダメージへの懸念が、オフィスREITの価格下落に影響しました。

リーマン・ショックでもJ-REITは日経平均を上回る暴落だった

 J-REITが株の暴落局面で分散投資効果を発揮しなかったのは、今回が初めてではありません。2007~2008年の不動産ミニバブル崩壊とリーマン・ショックの時も、日経平均を上回る暴落となりました。

 まず、2004年以降の都心のオフィスビル需給の推移をご覧ください。

都心5区オフィスビルの平均賃料と空室率の推移:2004年1月~2021年7月

出所:三鬼商事「東京ビジネス地区オフィスマーケットデータ」より作成、都心5区とは千代田・中央・港・新宿・渋谷区

 ご覧いただくとわかる通り、2004~2021年で2回不動産ブームがありました。

 2007年に不動産ミニバブルといわれるブームがありました。「ミニ」と言われるのは、1990年の不動産バブルほど極端なバブルではなかったからです。ただし、ミニでも「バブル」と言われるのは、一部に利回りで説明できない高値まで買われた物件があったからです。

 不動産ミニバブルは、2007年の金利上昇と2008年のリーマン・ショックによって、完全に崩壊しました。都心不動産もJ-REITも暴落しました。

 2019年にかけてもう一度、不動産ブームがありました。このブームは、バブルとは呼ばれていません。都心不動産で一部にかなり利回りが低くなった物件もありますが、全体として利回りで説明できる範囲の上昇だったと思います。

 2019年まで続いた不動産ブームは、2020年のコロナ・ショックで終了しました。緊急事態宣言が出る中で都心への人出が減少しました。さらに在宅勤務の普及で、都心部のオフィスビル需給は軟化しました。

 ただし、ミニバブルの時のような利回りで説明できない高値に買われていたわけではありませんので、コロナ・ショック後の需給悪化は、ミニバブル崩壊のときほど急ではありませんでした。
 それでは、次に2004年以降の、東証REIT指数・日経平均の動きをご覧ください。

日経平均と東証REIT指数の月次推移比較:2004年1月~2021年8月

出所:QUICKより作成、2004年1月末の値を100として指数化

 既にご説明した通り、2007~2008年の不動産ミニバブル崩壊で、東証REIT指数は日経平均を上回る暴落をしました。2007年の前半、日経平均を上回る急騰をしていたことが原因です。

 この頃は、投資家にREITが利回り商品であることがよく理解されていなかったと考えられます。REITを不動産成長商品と勘違いした投資家により、ミニバブルの熱気の中でREITは急騰し、バブル崩壊とともに急落したのでした。

 その後、REITが利回り商品であることが投資家に理解されるようになりました。2015年からの不動産ブームでは、REITを高値に買い上げる投資家はありませんでした。

 2015~2018年までは、日経平均が上昇する時に下落、下落する時に上昇する傾向があらわれ、ようやく利回り商品として株と逆連動するようになり始めていました。そのまま、利回り商品としての地位が定着するかもしれないと思われていました。

 ところが2019年になって日本が景気後退に入り、株が買いにくくなる中でも不動産ブームは継続していたことから、REITが積極的に買われて上昇しました。東証REITの平均分配金利回りは3%台の下の水準まで低下してしまいました。

 私は4%が妥当水準と考えていましたので、コロナ・ショック前のREITは利回りが「低過ぎ」、価格は「買われ過ぎ」になっていました。

 そこで、コロナ・ショックが起こりました。ブームの最後で買われ過ぎになっていたため、東証REIT指数は一時ほぼ半値まで下がり、日経平均を上回る暴落となってしまいました。
またしても、株の下落局面で、利回り商品としてのディフェンシブ性を発揮することはありませんでした。

 ここまで「REITとは何か」解説しないまま、市場動向を説明しました。ここから少しREITの基礎知識について解説します。

不動産への小口投資を可能にしたREIT

 REITの仕組みをご存知ない方もいらっしゃると思いますので、基礎的なことから説明します。REITは、不動産への小口投資を可能にした投資商品です。

 個人投資家が不動産に投資する場合、ワンルームマンションからアパート1棟までさまざまな投資対象がありますが、資金規模からおのずと直接投資できる対象は限られます。

 REITを通じて投資すれば、都心一等地の大型ビルに投資することもできます(図A)。

<図A>REITを通じて大型物件に投資

出所:筆者作成

 一等地の大型ビルにテナントが集中し、競争力のないビルからテナントが流出する「不動産の二極化」が顕著にみられる時代になりました。投資するならば、一等地の大型ビルに投資したいと考えます。

 REITが普及するまでは、一等地の大型ビルに投資するには何百億円という規模の資金が必要でした。個人投資家の不動産投資では、小口で投資できるマンションなどが中心になり、大型ビルへの投資は困難でした。

 しかしREITの普及によって、状況が変わりました。今では、小口資金でもREITを通じて、大型ビルに投資することもできるようになりました。REITは証券取引所に上場されていて、一般の株式と同じように売り買いすることができます。最低売買単位での投資額は、10万円以下から100万円超までいろいろあります。

REITには、さまざまな種類がある。代表銘柄を紹介

 REITには、さまざまな種類があります。もともとは、ビルやマンションなどの不動産に投資するファンドだったのですが、近年は、利回りが稼げるさまざまなものに投資されています。純粋な不動産投資と言えないものも増えています。代表的な銘柄は、以下です。

REIT代表銘柄(推奨銘柄ではない):分配金利回りは8月31日時点予想

コード 銘柄名 主な
投資対象
分配金
利回り
年率:予想
最低
投資額
:円
8951 日本ビルファンド投資法人 オフィスビル 3.2% 715,000
8952 ジャパンリアルエステイト投資法人 オフィスビル 3.3% 681,000
3234 森ヒルズリート投資法人 オフィスビル 3.6% 159,500
3269 アドバンス・レジデンス投資法人 住宅・マンション 3.0% 374,500
3281 GLP投資法人 物流施設 3.0% 199,700
3283 日本プロロジスリート投資法人 物流施設 2.5% 396,500
3292 イオンリート投資法人 商業施設 4.2% 151,000
9284 カナディアン・ソーラー・インフラ投資法人 インフラ・ファンド 6.0% 125,700
8985 ジャパン・ホテル・リート投資法人 ホテル・リゾート施設 0.0% 65,000
出所:分配金利回りは8月31日時点の1口当たり分配金(会社予想)を同日のREIT価格で割り、年率換算して計算。会社予想を未定としているジャパン・ホテル・リートは楽天証券予想

 上記は、推奨リストではありません。価格上昇で利回りが低くなってきているので、今のタイミングでREITの投資魅力は「やや低い」と判断しています。中でも、構造的不振が長期化すると考えられるホテルREITはもし保有していれば売却すべきと考えています。

 ただし、上記の中で2銘柄、今、投資する価値があると私が判断するものがあります。イオンリート投資法人(3292)と、カナディアン・ソーラー・インフラ投資法人(9284)です。
イオンは商業施設の勝ち組で、イオンリートは安定的に収益を得ていくことができると判断しています。

 カナディアン・ソーラーは、外資系のインフラ・ファンドで、国内メガソーラー(太陽電池発電設備)13物件に投資します。固定価格買い取り制度に基づいて安定的に収益を得ています。

 将来、固定価格買い取りが終わると利回りが低下するリスクはありますが、その頃までにメガソーラーの新設コストが大幅に下がっていれば高い買い取りが保証されていなくても、安定的に収益を稼ぐ物件を組み入れることができる可能性もあると判断しています。

 なお、上記の分配金利回りは8月31日時点の会社予想ベース(年率換算)であり、確定利回りではありません。今後の業績推移により、分配金は増えることも減ることもあり得ます。

ホテルREITは売却すべきと判断

 コロナが去れば、観光需要が回復するだろうという予想の元に、ホテルREITを買おうと考える方もいるようですが、私はホテルREITには投資すべきでないと考えています。コロナが去っても、ホテルが供給過剰になっている問題は解消しないからです。

 今、コロナ禍で外国人観光客はほぼ皆無に、日本人旅行者は激減したために業績が大きく落ち込んでいます。問題は、コロナ後です。私は、コロナ後も業績回復は鈍いと予想しています。もし、ホテルREITを保有していれば売却してイオンREITなどに乗り換えた方が良いと思います。
というのは、ホテルは、たとえコロナ禍が無かったとしても、供給過剰から業績が悪化していくリスクがあったからです。

 東京都内では、コロナ禍が起こる前から「ホテルの2020年問題」が心配されていました。2020年にホテルが大量に新規開業し、供給過剰になるという不安でした。実際2020年には、全国で約4万9,000室の新規開業がありました。

 ホテル不況におちいった2021年も、4万室を超える開業が予定されています。2022年以降開業は減りますが、それでも年2万室を超える新規開業が予定されています。ホテルブームの時に着工したホテルの竣工は、ホテル不況になっても当面続きます。

 コロナがなくても供給過剰が心配されているところに、コロナ禍が起こりホテル業界のダメージはきわめて大きくなりました。コロナが去っても、ホテルの新規供給が続き構造的な供給過剰は解消しないと懸念されます。

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(窪田 真之)

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