三菱UFJ FGの「買い」判断を再度強調:読者の質問に回答
トウシル / 2021年9月15日 7時50分
三菱UFJ FGの「買い」判断を再度強調:読者の質問に回答
※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
「 [動画で解説]三菱UFJ「買い」再度強調 読者の質問に回答」
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今朝、テレビ東京「モーニング・サテライト」に出演し、三菱UFJ FG(8306)を「買い」と判断する理由を解説しました。本コラムで、三菱UFJ FG(8306)が私の一押しと繰り返しお伝えしていますが、それに対して読者の方からいろいろコメントが寄せられています。今日はそれに回答します。
「株価が上がったら買いは待つべき?」「株価が下がったら売るべき?」
よく受ける質問が、短期的な株価変動に関するものです。
三菱UFJ FG株価推移:2020年末~2021年9月14日
最近、株価が勢いよく上がっているので、「買おうと思って見ていたら株価が上がってしまった。また下がるのを待った方が良いですか」と質問をいただきました。
私の投資判断は株価が1割や2割上がっても変わりません。9月14日の株価646.7円においても「強い買い推奨」は変わりません。
これと同じような質問ですが、株価が571円に下がっていた時、「買ったら下がってしまった。やっぱり売った方がいいでしょうか」と質問をいただきました。私は、中長期で資産形成に寄与すると判断して買い推奨しています。下がったところは買い増しの好機と考えます。
私は、三菱UFJが「財務内容良好」「収益基盤が堅固」「安定的に高収益をあげてきた」にもかかわらず、長期的に株価が低迷してきて株価が割安になっていることから、「強い買い推奨」としています。100円や200円株価が変動しても、その判断は変わりません。
以下、私が三菱UFJ FGを推奨するレポートに出しているチャートを改めてご覧ください。
日経平均および3メガ銀行株の値動き比較:2007年1月~2021年9月(14日まで)
日本の3メガ銀行株は上のチャートでわかる通り、2008年以降、金利低下とともに売られてきました。日経平均を大幅に下回るパフォーマンスとなっています。
株式市場で「金利低下→銀行(金融業)の収益悪化」というイメージが定着しているので、金利が低下する都度、世界中で銀行株を始めとして金融株が売り込まれました。
日米の長期金利(10年国債利回り)推移:2007年1月~2021年9月(14日)
三菱UFJを含め銀行株は、まず日本の長期金利が低下する過程で、売られました。さらに、ドルの長期金利低下を嫌気して売られました。
長期金利が下がると利ザヤ(貸付金利と預金金利の差)が無くなるという誤解があるため、金利が低下する都度、世界中で銀行株が売られました。
それでは、長期金利がゼロになったことによって、3メガ銀行は利益を出せなくなったのでしょうか。まったくそんなことはありません。以下の通り、3メガ銀行は金利低下期でも安定的に高収益を稼いできました。
3メガ銀行の連結純利益:2014年3月期実績~2022年3月期(会社予想)
三菱UFJについて解説します。三菱UFJは2019年3月期まで、長期金利がどんどん低下していく中でも純利益で8,000億円~1兆円と安定的に高収益をあげています。「金利が下がると銀行は利益が出なくなる」というイメージとまったく異なります。
海外収益の拡大と、ユニバーサルバンク経営(証券・信託・リース・カード・投資銀行業務などの多角化)によって、低金利でも高収益を稼ぐビジネスモデルができあがっているからです。
2020年3月期・2021年3月期はコロナ禍で与信コスト(貸倒償却および貸倒引当金繰入額)が増加したことによって、利益水準がやや下がりました。それでも高水準の利益を維持していたと評価できます。
2022年3月期は利益がさらに回復します。すでに発表になっている第1四半期(2021年4-6月期)の純利益は、三菱UFJで3,830億円と通期目標8,500億円の45%を3カ月だけで出す好決算でした。与信コストの低下が純利益の水準を押し上げています。前期に引き当てた貸倒引当金に一部戻し益が発生しています。
コロナ禍が終わったわけではないので、三菱UFJは通期の業績目標を修正しませんでしたが、上ぶれ含みと私は予想しています。年間を通じて、与信コストが会社見込みを下回ると予想しています。私は、三菱UFJ FGは近い将来、純利益で最高益を更新すると予想しています。
「何か財務に問題があるのでは?」
私が三菱UFJを評価する理由の1つに「株価指標で見てとても割安」があります。
「特に驚くべきはPBR(株価純資産倍率)の低さです。解散価値と言われるPBR1倍の半値以下になっています」と書いたことに対し、読者から「何か財務に問題があるのでは?」と質問をいただきました。
三菱UFJ FGの株価バリュエーション:2021年9月14日時点
決算で開示されている財務諸表を見れば、三菱UFJは財務良好と評価できます。財務良好にもかかわらず株価が「解散価値の半値以下」まで売り込まれているので「買い」と判断しています。
大手銀行の財務に不信感を持つ人がいるのは、1990年代に不良債権問題に苦しんだ時代のイメージを今も引きずっているためと思います。1990年代、日本の大手銀行は不良債権問題で苦しみました。1998年以降、長銀・日債銀・北拓などが次々と破綻、銀行業界全体に信用不安が広がりました。
当時、銀行が抱える不良債権が適切に開示されていなかったことから、投資家の間に疑心暗鬼が広がりました。
ただし、以上は日本の会計基準がまだ国際レベルで評価されなかった時代の話です。
1998年に日本版「会計ビックバン」が導入され、以後10年以上かけて日本の会計に「時価会計」が導入されました。今は、日本の会計基準は「国際会計基準と同等」と評価されています。金融検査も強化され、不良債権を適切に評価して開示するルールもできました。
13あった都市銀行は、合併・リストラで3メガ銀行に集約されました。こうして日本の銀行業界は不良債権問題を乗り越え、財務を強化しました。今は不良債権比率も低下し、三菱UFJは自社株買いを実施する財務的にゆとりも持つようになりました。
以下のように、保有する有価証券に巨額の含み益があることも、財務的なゆとりにつながっています。
3メガ銀行の保有有価証券の含み益
「とにかく衰退していく銀行に投資する気にならない」
三菱UFJ FGの買い推奨に対し、「とにかく衰退していく銀行に投資する気にならない」とコメントをいただいています。
確かに、従来の国内商業銀行業務は衰退していくと思います。駅前に大きな店舗を構えて個人預金をたくさん集め、国債を買って利ザヤを稼いでいくような銀行は、長期金利がゼロになった今、利益を得ていくことができなくなります。
個人預金を集めることで成り立っていた中小金融機関の淘汰がこれから本格化するでしょう。三菱UFJ銀行も、国内店舗は統廃合によって大幅に削減する方針です。
ただし、銀行業が不要になるということではありません。個人や中小企業は当然ながら、大企業でも銀行融資によって設備投資や資金繰りをまかなうニーズは永遠になくなりません。銀行店舗は不要になり、ネットバンキングが大きく躍進することになるでしょうが、銀行業自体が不要になることはありません。
従来型の銀行はデジタル化(ネットバンキングの拡大)で衰退すると見られていますが、三菱UFJは、デジタル化の敗者ではなく、勝者になると予想しています。デジタル化の推進でコストを削減し、収益基盤を一段と強化します。不要になる国内店舗を削減し、その分、ネットバンキングや海外業務を一段と強化していくと思います。
海外収益の拡大では、出資先のモルガンスタンレー証券や子会社としているタイのアユタヤ銀行、インドネシアのバンクダナモンも貢献していくと予想しています。
ユニバーサルバンク経営(証券・信託・リース・カード・投資銀行業務などの多角化)でも、一段と収益基盤を強化していくと予想しています。
衰退する銀行というイメージが払しょくされ、デジタル化と海外収益の拡大で最高益を更新していくことができれば、株価の評価も変わると予想しています。投資家のイメージが悪く、株価の評価が低い今が投資の好機と判断します。
三菱UFJは今後も増配を予想
三菱UFJは以下の通り、増配を続けてきています。今期に続き来期以降も増配が見込めると考えています。
三菱UFJ FGの1株当たり配当金:2017年3月期実績~2022年3月期(会社予想)
NISAで利回り5%を稼ぐ、高配当投資術
6月15日、日経BPより拙著「NISAで利回り5%を稼ぐ、高配当投資術」が出版されました。
私が25年の日本株ファンドマネージャー時代に得たバリュー(割安株)投資のノウハウを初心者にわかりやすく解説しています。NISAを使って高配当利回り株に長期投資して資産形成を行っていくことを考えている個人投資家にぜひお読みいただきたい内容です。
著書で、三菱UFJ FGの投資魅力について解説しています。低金利でも高収益を稼ぐ仕組みについて詳しく解説しています。ご参照ください。
(窪田 真之)
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