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当局の規制に負けない「したたか中国企業」5選!中国恒大集団、破綻危機は?

トウシル / 2021年9月22日 6時0分

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当局の規制に負けない「したたか中国企業」5選!中国恒大集団、破綻危機は?

明暗分かれた香港ハンセン指数と上海総合指数

 香港ハンセン指数と上海総合指数、いずれも8月20日を底値としてリバウンドしたのですが、その後の動きは対照的でした。

2021年1月以降の主要株価指数の動き

注:2020年12月最終取引日の値=100
出所:各取引所統計から筆者作成(直近データは2021年9月20日、NYダウ平均株価は9月17日)

 上海総合指数はしっかりとした足取りでリバウンドしており、9月13日には終値ベースで2015年8月19日以来の高値を付けました。その後は少し下げてしまいましたが、それでも9月17日の終値は高値から2.7%ほど低い水準にとどまっています。

 一方、香港ハンセン指数は戻りが弱かっただけでなく、9月中旬に急落、20日の終値は昨年2020年10月6日以来の安値となりました。両指数の間ではっきりと明暗が分かれています。

なぜ?ハンセン指数が下げた要因

 まず、ハンセン指数が下げた要因から整理してみると、中国政府によるハイテク企業への管理(統制?)強化、「共同富裕」を大目標に掲げる中国共産党に対する政治的な懸念、中国恒大集団の破綻危機などです。

 香港市場のメインプレーヤーである欧米機関投資家の多くは、こうした点を強くリスクとして意識したといえるでしょう。

 一方、本土市場のメインプレーヤーである国内個人投資家たちはこうした点を大きなリスクとは捉えていません。共同富裕についてはむしろチャンスだと捉えているとみられます。

 ハイテク企業への管理強化ですが、これまでが異常でした。

 アリババ集団傘下のアントフィナンシャルが直前で上場延期となったのは、金融業監督管理委員会の監督管理体制の下で事業が構築されていなかったからです。アリババ、美団などが独占禁止法に問われたのは、業者に対して、自分たちを選ぶか他社を選ぶかを迫るといった二者択一を常習的に行ってきたからです。

 教育関連産業は教育を営利事業とし、授業料を吊り上げ、受験競争をあおったから、滴滴出行は収集した個人情報を違法に事業に利用したから、ゲーム会社は子供の教育上望ましくないゲームを普及させ、勉強がおろそかになるほど夢中になるのを自ら管理しなかったからです。

 そして、中国恒大集団は、当局が長年不動産価格抑制政策を続ける中、極端に大きな財務レバレッジをかけて開発を加速させ、海外進出を進め、事業の多様化を進めたからです。

 2021年に入り、第14次五カ年(十四五)計画が始まりました。これからは鄧小平理論の後半部分、“先に豊かになった人、地域が後から豊かになる人を助ける”時代が始まります。それが「共同富裕」の実現です。

 習近平国家主席が主導し、国家体制改革など国家の重要事項を議論する場である中央財経委員会会議(第10回)が8月17日に開催され、共同富裕を促進させる方針が決まりました。

 興味深いのはその後のハイテク企業の動きです。

 アリババ集団は9月2日、中国指導部が掲げた「共同富裕」を支援するために2025年までに1,000億元(1兆7,000億円、1元=17円で計算)を投じ、「5つの方面から10の行動を起こす」と発表しました。

 5つの方面とは、(1)科学技術イノベーション、(2)経済発展、(3)質の高い就業、(4)弱者に対して愛情をもって関心を示す、(5)共同富裕基金といった項目です。10の行動とは以下の通りです。

  1. 科学技術に関する投入を増やし、発展の遅れた地域のデジタル化建設を支援する
  2. 中小零細企業の成長を支援する
  3. 農業の産業化建設推進を助ける
  4. 中小企業の海外進出を支持する
  5. 質の高い就業機会創出に助力する
  6. 荷物配達員、運転手など柔軟に仕事を行う人々の福利厚生を支援する
  7. 都市部のデジタルライフの均質化を促進する
  8. 情報格差を縮小し、弱者に対するサービスや保障を強化する
  9. 基本的な医療水準の引き上げを支持する
  10. 200億元(3,400億円)の共同富裕発展ファンドを立ち上げる

中国民営企業の“したたかさ”を評価しよう!

 1,000億元を投じるといっても、寄付するわけではありません。1,000億元を使って“政策に沿ってビジネスを行います”と宣言したのです。

 テンセントも1,000億元を拠出すると発言しています。美団も積極的に協力すると発言しています。

 華為技術は、米国から半導体の供給を止められても、次世代通信規格6G技術の開発を加速させ、新エネルギー自動車に活路を求め、たくましく生き抜こうとしています。

 転んでもただでは起きないのが、中国民営企業です。

 今月の注目セクターは株価の下がった主力ハイテク銘柄を中心にピックアップしました。ネガティブな材料ばかりが目立ちますが、多くの投資家は、いわゆる国家資本主義の強化による需要創出効果を見逃しています。中国民営企業の“したたかさ”を評価してください。

注目の中国株1:テンセント(00700)

 中国を代表するインターネット・メディア・サービス企業です。ネットゲームのほか、コミュニケーションアプリ(微信、QQ)や、音楽、映像、ニュースなどを提供するSNS(交流サイト)などをプラットフォームとして各種サービスを展開しています。

 部門別売上高(2021年6月中間期)ではネットゲームが32%、ネット映像、音楽などのデジタルコンテンツ、ゲーム用AR機器が21%、オンライン広告が16%、コード支払い(微信支付)による決済、クラウド業務などが30%、その他が1%です。

 2021年6月中間期業績は23%増収、46%増益でした。当局の規制強化による影響でネットゲームや、オンライン映像、音楽などのデジタルコンテンツの伸びは鈍化しましたが、決済、クラウド業務が好調でした。

 当局は18歳以下の青少年に対するゲーム利用を厳しく制限しており、テンセントをはじめ、ゲーム、デジタルコンテンツ業界全体に対して法律の厳守を求めています。

 大方針として共同富裕の推進が示されていて、その影響も懸念され、株価は軟調に推移しています。

 こうした中でテンセントは8月18日、「共同富裕専門プロジェクト計画」を発表、合計1,000億元(1兆7,000億円)の資金を投入し、郷村振興と自身の持つデジタルハイテク技術を深く結合させ、低所得グループの収入を増やし、基礎医療システムを改善し、均衡のとれた教育の発展を促すなど、民生領域で当局に協力すると発表しました。

 いかに利益率の高いビジネスを掘り起こせるかが焦点となりそうですが、とりあえず、当局との関係は改善に向かいそうです。

 テンセントは総資産の6割弱が企業などへの投資勘定です。ナンバー2の劉総裁は2020年1月、「投資先は800社を超え、70社以上の上場企業、160社以上の市場価値が10億ドルを超えるユニコーンに投資している」と発言しています。これらの投資が将来、収益の柱となり、業績をけん引すると予想します。

注目の中国株2:アリババ集団(09988)

 中国を代表するEC(電子商取引)企業です。中核ビジネスは国内小売ビジネスで、零細企業や個人が出店する淘宝網(タオバオ)、比較的規模の大きな企業が出店する天猫(Tモール)が主力プラットフォームとなります。

 出店側から徴収する手数料、年会費、広告料、分析ツール使用料などが主な収入源で部門別売上高(2021年3月期、以下同様)では、全体の66%を占めています。国内の卸売、海外の小売・卸売、国際物流などの収入を合わせるとEC事業全体で87%となります。そのほか、クラウドが8%、デジタルコンテンツ、ハイテク事業などが5%です。

 2021年3月期は香港に上場する大型スーパーのサンアートリテール(06808)を買収、これが連結対象となったことで41%増収となったのですが、独占禁止法違反による制裁金の発生などから1%増益にとどまりました。

 2021年4-6月期は34%増収、5%減益となりました。サンアートリテールの買収効果を除いても22%増収で、売り上げは堅調です。しかし、独占禁止法違反に問われたことでこれまで以上に出店業者獲得のためのコストが上がっているようです。

 最大の懸念材料である当局との関係悪化についてですが、前述のように9月2日、共同富裕に対して1,000億元を拠出すると発表しており、関係改善の道筋が見えてきました。

 短期的には業績の伸びはまだ鈍化しそうですが、株価は9月20日現在、上場来安値近辺にあり、織り込まれつつあると見ています。

 長期的には、「オンラインとオフライン(実店舗)といった売場にビッグデータ、AI(人工知能)、ブロックチェーンなどの最先端技術を融合させ、さらに商品の生産、流通、販売までを一体で発展させる」といった発想の「新小売り」戦略に期待しています。

注目の中国株3:美団(03690)

 テンセントが出資する中国を代表するネット出前企業ですが、事業は多角化しています。部門別売上高(2020年6月中間期)では、ネット出前が54%、レストラン、ホテル、旅行チケットなどのオンライン販売が19%、生鮮食品、生花、医薬品などのオンライン販売といった新ビジネスが27%を占めています。

 2021年6月中間期は95%増収、82億461万元の赤字(前年同期は6億3,141万元の黒字)でした。既存事業の売上高は8割を超す伸びを示す中、新事業は123%増とさらに大きく伸びています。ただ、新事業への先行投資が巨額なため、赤字は拡大しています。

 同社は企業と顧客をSNSで繋ぐプラットフォームを運営しており、レストランに関しては手数料のほか、経営、流通などに関するコンサルティングを行っており、これが重要な収益源の一つとなっています。

 また、ラストワンマイルの輸送力について、出前で培った速度、量の両面からの大きな強みがあります。生鮮食品、生花、衣料品など多様なオンライン販売への業容拡大が期待されます。

 同社は加盟店に対する独占禁止法違反や、配達員に対する労務管理改善といった行政指導を受けていて、それが株価の押し下げ要因となっています。

 しかし、同社のビジネスモデルは、都市のみならず、農村でも大きなチャンスがあるとみており、共同富裕による郷村振興政策の強化はビジネスチャンスの拡大につながると予想しています。

注目の中国株4:JDドットコム(09618)

 テンセントが筆頭株主(ただし、劉強東会長が76.9%の支配権を所有)である大手電子商取引企業です。ライバルのアリババと比べると業務内容は比較的シンプルです。大手企業と自社出店によるB to C型通販サイトであるJD.comが基幹プラットフォームで、京東健康では医薬品の通販を行っています。

 また、商品の物流に関しては京東物流(02618)が担っています。部門別売上高(2021年6月中間期)では、電子機器、家電販売が53%、日用雑貨販売などが34%、プラットフォームサービス・広告が7%、物流などその他サービスが6%となっています。

 2021年6月中間期は32%増収ながら、75%減益となりました。6月末時点のアクティブユーザーは27%増加したのですが、粗利益率の低下、販売費の増加などが響き、大幅減益となりました。

 中間期はやや残念な決算でしたが、新業務に分類される共同購入事業について、農村での発展が期待されます。共同富裕をビジネスチャンスに変えることができる企業だと考えます。

 また、独自の流通網を持つことで配達の速さ、正確性、安全性を追求しようとしている点、取り扱う商品に対する選定を重視している点などに特徴があり、競争力でも充分評価できる企業です。

注目の中国株5:同程芸龍(00780)

 業界最大手であるトリップ・ドットコム(09961)、テンセントが大株主のオンライン旅行会社です。部門別売上高(2021年6月中間)はホテル予約が32%、交通機関チケットが60%、その他が8%です。

 2021年6月中間期は70%増収、4億6,090万元の黒字(前年同期は90万元の赤字)でした。新型コロナ禍からの回復にテンセントのミニプログラムからの顧客流入増が加わり、大幅増収、黒字転換となりました。

 同社に注目する理由は、ワクチン接種が進んでいることにより新型コロナウイルス流行の終えんは近いと予想するからです。

 今後、旅行業界全体への支援策が打ち出されるとみられ、ユーザーとの接点の多い微信を効果的に使えることなどから業界平均以上の成長が期待できると考えています。

(田代 尚機)

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