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恒大を中国政府が救済したくない5つの理由。急反発の日経平均、3万円維持できる?

トウシル / 2021年9月27日 7時32分

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恒大を中国政府が救済したくない5つの理由。急反発の日経平均、3万円維持できる?

※このレポートは、YouTube動画で視聴いただくこともできます。
著者の窪田真之が解説しています。以下のリンクよりご視聴ください。
[動画で解説]恒大を中国政府が救済したくない5つの理由 急反発の日経平均、3万円維持できる?
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恒大への不安が低下したと解釈されて日経平均は急落後に急反発

 先週(9月21~24日)の日経平均株価は1週間で251円下がり、3万248円となりました。中国不動産大手「恒大集団」の破綻危機が高まったことを受けて欧米株が一時急落し、日経平均も9月22日に一時2万9,573円まで急落しました。

 負債総額約33兆円(日本円換算ベース)の巨大企業が破綻すると、中国経済だけでなく世界の金融市場にも大きな影響が及ぶと懸念されました。ただし、恒大集団が9月23日に迫っていた一部社債の利払いを実施したと伝わると欧米株が反発、連れて日経平均も24日は609円高の3万248円と急反発しました。

NYダウと日経平均の動き比較:2020年10月1日~2021年9月24日

出所:QUICKより楽天証券経済研究所が作成

 簡単に、昨年10月以降の日米株価指数の動きを振り返ります。

【1】2020年10月~2021年2月:世界株高加速

 世界景気回復期待が高まり、NYダウ・日経平均とも上昇が加速

【2】2021年3月~8月中旬:「ワニのくち」開く

 チャートを見ていただくとわかりますが、3月から8月中旬まで、NYダウが史上最高値を更新する中で日経平均の下落が続いていたため、NYダウと日経平均がワニのくちが開く動きになりました。

 新型コロナワクチンの普及率上昇で米景気が急回復する中、ワクチン普及の遅れで緊急事態宣言の発令が続く日本の景気回復が遅れていることから、ワニのくちが開く動きとなりました。

【3】2021年8月中旬~9月17日:ワニのくち閉じる

 米景気が2022年にかけて減速する見通しが出る中、ワクチン普及率が急速に上昇した日本で内需回復が期待できるとして、外国人投資家が日本株を買い戻したため、NYダウの上値が重い中で、日経平均が急反発しました。米国消費が減速する中、日本の消費が回復する期待が出たことが、米国株を少し減らして日本株を買い戻すアクションにつながりました。

 また、日本の政局の見方が変わったことも、外国人の日本株買い戻しにつながりました。菅首相が辞任することで、自民党が衆院選に大敗、政権が一段と弱体化する懸念が低下し、新たに選出される新総裁への期待で自民党支持率が回復、衆院選を乗りきった後、大型財政出動に動く期待へと変わりました。

【4】先週(9月20~24日):恒大ショックで急落後、急反発

 恒大破綻の懸念から、世界的に株が急落。ただし、23日期限の一部社債の利払いを行ったと伝わると、週末にかけて世界的に株が急反発しました。

 ただし、23日期限のドル建て社債の利払いに実施されていないものがあり、30日間の猶予期間内に支払えなければデフォルト(債務不履行)となります。恒大破綻の危機はまだ続いています。さらにその先にも、期限が到来する支払いはたくさんあります。

 年内だけで、9月23・29日、10月12・19・30日、11月8日、12月28日に合計約760億円相当(円換算ベース)の利払いが控えています。ドル建てで約700億円・人民元建てで約60億円の利払いが必要です。

恒大危機続く、中国政府が救済したくない5つの理由

 放漫経営から無謀な拡大路線を進み、巨額の負債を抱えて経営危機に陥った恒大集団をこのまま破綻させると、中国国内に連鎖倒産が広がり、社会不安が広がる懸念があります。

 人民元建て債務に加えドル建て債務もデフォルトとなれば、日米欧の金融機関、機関投資家にも巨額の損失が発生し、世界の金融市場にも混乱を生じます。

 そうならないように、中国政府は何らかの手を打つと考えられます。恒大だけ救済するならば、それに対応できる財務的余力はあると考えられます。ただし、中国政府には恒大を救済したくない事情があります。以下が、その5つの理由です。

【1】恒大の創業者が共産主義青年団(共青団)と親密

 恒大の創業者、許家印(きょ・かいん)氏が、胡錦濤(フー・ジンタオ)前国家主席らを輩出した共青団と親密であることが、習近平(シージンピン)主席が救済に前向きでない要因と考えられている。

【2】モラル・ハザードが広がる懸念

 放漫経営で負債を拡大してきた恒大をまるまる救済すると、「巨大企業は経営危機になると最後は中国政府が救済する」前例となり、同様の理由で経営が悪化している企業にモラル・ハザードが広がる懸念がある。

【3】「共同富裕」の精神に反する

 習指導部は、貧富の格差が極端に開いた現状を是正するため、共同富裕の政策方針を打ち出している。恒大救済は、不動産で大儲けしてきた金持ちを救済することになり、共同富裕の精神に反する。

【4】経済の構造改革に反する

 中国はかつて不動産・製鉄・石炭産業への投資拡大にのめり込み、需要を無視した過剰投資が負の遺産を生んできた。中国はそこから決別し、半導体産業やハイテク・電気自動車などを重点的に強化している。経営の悪化した不動産大手を救済・延命させることは、経済の構造改革に反する。

【5】経営が悪化している不動産大手は恒大だけでない

 恒大だけを救済すれば済むわけではない。もしこれから中国の不動産がさらに大きく下がると、他の不動産大手に危機が広がる懸念もある

恒大処理はどうなるか、1つの仮説

 恒大の債権者や投資者には、大きな損失負担が求められると予想しています。ただし、中国国内に連鎖倒産や社会不安を広げないようにするための軟着陸(ソフト・ランディング)のための手は打つと考えられます。

 ここからお話しするのは、あくまでも1つの仮説で、実際にどうなるかまったくわかりません。恒大関連の投資判断は、すべてご自身の自己責任で行ってください。

 私は以下のように考えています。中国当局は、金融機関や投資家に大きな損失を求める一方、4,000社にのぼる取引先に連鎖倒産が広がらないような処理方法を考えると予想しています。

 まず、金融機関に大きな損失負担を求め、さらに機関投資家、投資家の保有債権も大幅にカットされると予想しています。海外の機関投資家にも大きな損失が発生するかもしません。ただし、海外の金融市場を揺るがすほどの規模にはならないと考えています。

 そして、恒大の資産と債務の大幅削減を進めた上で、最後は公的資金を使って救済する可能性がありそうです。そうすることで、取引先に連鎖倒産が広がることは避けると予想しています。

 このような処理方法は、日本でも例があります。ダイエーの99%減資など、社会的影響の大きい大企業の経営が悪化した時は、金融機関が中心に損失をかぶり、取引先への影響がなるべく小さくなるような方法を選びます。中国政府は日本の金融危機、不良債権処理のやり方をよく研究しており、類似の方法が採られる可能性もあると考えています。

 ただ、繰り返しになりますが、以上はあくまでも私見で、実際にはまったく異なる結果になる可能性もあります。

日本株が長期的に買い場の見方は変わらず

 日経平均が恒大問題をめぐって急落・急騰する可能性はまだ残っています。中国景気が不動産問題で弱含む可能性があることは、日本株にとってマイナス要因です。

 ただし、日本株は中国要因だけで動くわけではありません。米国景気と国内景気の影響も大きいです。米国景気は来年にかけて減速するものの、巡航速度の拡大が続くと見ています。

 また、国内景気はワクチン接種率が急速に上昇した効果で、徐々に回復していくと予想しています。したがって、恒大関連のマイナス影響は続いても、日経平均は3万円を大きく割れることはないと考えます。

 日本株は割安で、長期的に買い場との見方を維持します。時間分散しながら、割安な高配当利回り株に投資していくことが長期的な資産形成に寄与すると判断しています。

 具体的な投資銘柄について、6月に日経BPから出版された拙著「NISAで利回り5%を稼ぐ、高配当投資術」をぜひ参照していただきたいと思います。

▼著者おすすめのバックナンバー
2021年9月22日:恒大ショック、最悪シナリオと最善シナリオを予想。2つの顔を持つ中国

(窪田 真之)

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