値上げに「ぴえん」、見通しに「ぱおん」。家計最適化のためにコモディティ市場を知る
トウシル / 2021年10月19日 5時0分
値上げに「ぴえん」、見通しに「ぱおん」。家計最適化のためにコモディティ市場を知る
10月15日(金)に行ったオンラインセミナーで原油と金、銀の見通しについて述べました。ご覧ください。CFDオンラインセミナー(2021年10月15日開催)
身近な品目の値上げのことを考えると、自然にコモディティ(商品)に目が向く
2021年10月、秋の深まりと同時に、私たちに身近なたくさんの品目の値上げが宣言されました。以下の通り、スーパーマーケットに陳列されている食品のほか、ガスや電気料金、文房具まで、値上がりすることとなりました。
図:直近で値上げが宣言された品目(筆者調べ)
上図のとおり、大手関連企業がこぞって値上げに踏み切りました。図中以外にも、豆腐やパスタ、包装材料などの値上げも、宣言されています。食用油については、今年4月を皮切りに4回目の値上げです。値上げの主な要因は、各種品目の原材料価格の上昇です。
日本は人々の生活に身近な品目の原材料の多くを、輸入に頼っています。以下のとおり、エネルギーはほとんど、食品関連では半分以上、その他、天然ゴムや木材では6割以上を輸入に依存しています。
図:日本の品目別の輸入依存度(2018年)
「原材料輸入大国」とも言える日本は今、各種コモディティ(商品)の国際価格が上昇し、原材料高にあえいでいます(ぴえん)。この各種コモディティの国際価格の上昇による原材料高が、私たちに身近な品目の値上げの主因になっているわけです。
今回は、各種コモディティ価格の上昇が、どのような経路をたどり、わたしたちに身近な品目の価格を上昇させているのか、そして今後の展望(ぱおん)などについて書きます。
各種コモディティ(商品)の国際価格は大きく上昇中
以下は、私たちに身近な品物の値上がりの主因とされている、各種原材料価格の目安になる国際的なコモディティ(商品)価格の上昇を示したグラフです。
図:エネルギーと金属などの価格推移(日足 終値)
(2020年8月3日を100として指数化)
図:農産物の価格推移(日足 終値)
(2020年8月3日を100として指数化)
図:穀物の価格推移(日足 終値)
(2020年8月3日を100として指数化)
このように、幅広いジャンルのコモディティ価格が上昇していることが主因となり、各種末端価格の上昇につながっているわけです。
日本は輸入大国。海外の原材料+為替+運賃など、考慮すべき点は複数
各種コモディティ価格が上昇していることを受け、以下のとおり、日本における輸入価格も上昇しています。この点は、私たちに身近な品目の価格上昇をより強く、裏付けています。
図:日本における輸入価格の変化(2020年8月と2021年8月)
日本が「原材料輸入大国」である理由には、自国で生産をすることが難しい(地理や気象条件などのため)、輸入したほうが効率が良い(人件費などのため)、輸入先との関係維持のため(相手の経済発展に資する)、などが挙げられます。
原材料の生産から日本に住んでいる私たちが消費するまでを、川の流れに例えると、以下のようになります。「原材料輸入大国」は、各種コモディティの国際価格(最上流)のほか、運賃相場や為替(川中)、国内における加工・物流コスト(川中から川下)の影響も受けます。
図:わたしたちに身近な商品が手元に届くまで
先述のとおり、私たちに身近な品目の値上げについて、大手企業は主な理由を、生産地での天候不順による供給障害としていました。つまり、「最上流」で、価格を上昇させる要因が発生したと、しているわけです。
しかし、原材料の生産地と消費者が遠ければ遠い(加工や流通の過程が多い)ほど、最下流の価格の変動は最上流の価格と連動しないこともあります。
仮に最上流で価格上昇が見られても、加工や流通、あるいは小売業者が、安く買いたいと考える消費者の意向に沿うため、価格上昇分を吸収する(業務効率化で別のコストを減らすなど)ことがあるためです。
とはいえ、さまざまな品目で値上げが相次いでいることを考えれば、もはや業者たちが価格上昇分を吸収することが、限界に達していると、考えられます。それだけ、最上流での価格上昇がきついのだと思います。
また、最上流の価格上昇に乗じて最上流価格の上昇以上に末端価格を上昇させることを「便乗値上げ」、末端価格を上昇させなくても内容量を減らす「ステルス値上げ」などが、起きることがあります。こうなると、最上流価格が下落しても、末端価格が下落せずに、最下流の価格の変動は最上流の価格と連動しない場合があります。
「原油高」は続く!?すなわち、身近な品目高も続く!?
原油は「経済の血液」と言われることがあります。先ほどの図に示したとおり、エネルギー(電力を含む)は、川上から川下まで、どの段階でも使われているためです。目下、進行している原油高が、さらに進行すれば、全体的なコスト高につながり、私たちに身近な品目の上昇が継続する可能性があると、筆者は考えています。
図:足元の原油相場の反発要因
「脱炭素」は、世界的な、不可逆的(後戻りしない)ブームです。この「脱炭素」は、これまでの数カ月間、上昇要因として作用し、そして今後しばらく、原油相場をさらに上昇させる要因になると、みています。
図:NY原油価格日足 単位:ドル/バレル
10月15日(金)に行ったオンラインセミナー(後半部分)で、詳細を述べておりますので、ぜひ、ご覧ください。CFDオンラインセミナー(2021年10月15日開催)
原油相場の上昇が、足元のさまざまな品目の値上げに関わり(悲しい=ぴえん)、そして今後もしばらく、高止まりか値上げが続く(さらに悲しい=ぱおん)、可能性があります。家計の最適化のためにも目先、しばらく、コモディティ市場に注目することが、有用だと考えます。
[参考]コモディティ関連の具体的な投資商品例
投資信託
DWSコモディティ戦略ファンド(年1回決算型)Aコース(為替ヘッジあり)
DWSコモディティ戦略ファンド(年1回決算型)Bコース(為替ヘッジなし)
外国株
インベスコDB コモディティ・インデックス・トラッキング・ファンド(DBC)
iPathブルームバーグ・コモディティ指数トータルリターンETN(DJP)
iシェアーズ S&P GSCI コモディティ・インデックス・トラスト(GSG)
[参考]貴金属関連の具体的な投資商品例
楽天証券の純金積立「金・プラチナ取引」はこちらからご参照ください。
純金積立
国内ETF/ETN
1326 SPDRゴールド・シェア
1328 金価格連動型上場投資信託
1540 純金上場信託(現物国内保管型)
2036 NEXT NOTES 日経・TOCOM金ダブル・ブルETN
2037 NEXT NOTES 日経・TOCOM金ベアETN
海外ETF
GLDM SPDRゴールド・ミニシェアーズ・トラスト
IAU iシェアーズ・ゴールド・トラスト
GDX ヴァンエック・ベクトル・金鉱株ETF
投資信託
ステートストリート・ゴールドファンド(為替ヘッジあり)
ピクテ・ゴールド(為替ヘッジあり)
ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)
三菱UFJ純金ファンド
外国株
ABX Barrick Gold:バリック・ゴールド
AU AngloGold:アングロゴールド・アシャンティ
AEM Agnico Eagle Mines:アグニコ・イーグル・マインズ
FNV フランコ・ネバダ
GFI Gold Fields:ゴールド・フィールズ
国内商品先物
金・金ミニ・金スポット・白金・白金ミニ・白金スポット・銀・パラジウム
海外商品先物
(吉田 哲)
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