パウエルよ、お前もか!利益相反疑惑でFRB議長再任に黄信号!?
トウシル / 2021年10月21日 16時42分
パウエルよ、お前もか!利益相反疑惑でFRB議長再任に黄信号!?
パウエルFRB議長、株価下落前に投資信託5億7,000万円売却か
読売新聞の報道によると、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長が株価下落前に投資信託5億7,000万円を売却していたという。
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が2020年10月、保有する株式投資信託を最大500万ドル(約5億7000万円)売却していたと米政治専門メディア「アメリカン・プロスペクト」が18日、報じた。株価下落前のタイミングだったという。報道によると、パウエル氏が投資信託を売却したのは昨年10月1日。新型コロナウィルスの追加経済対策を巡る調整が難航していた時期で、同日に当時のムニューシン財務長官と4回会談していた。
パウエルFRB議長、株価下落前に投資信託5億7千万円売却か…厳しい批判は必至(10月19日 読売新聞)
パウエルFRB議長のトレード
ボストン連銀のローゼングレン総裁とダラス連銀のカプラン総裁がインサイダー疑惑で退任(クビ)になったことは、9月30日のレポート「ウォーレン・バフェットの保有株TOP30と銘柄選択手法」で述べた。
ローゼングレンとカプランはFRBが金融緩和政策を押し進める中、その政策決定に関わる立場でありながら、REIT(不動産投資信託)や株式などの金融商品を取引していたことが「利益相反」にあたるとして問題になっている。
こんな状況ではたしてパウエルは下馬評通りFRB議長に再任されるのだろうか? ウォーレン上院議員に「あなたは危険な人物だ」と指摘され、民主党の急進左派はパウエルの再任に反対している。
仮にパウエルがFRB議長に再任されないとなれば、FRB議長はブレイナード理事になる可能性が高い。バイデンやFRBがやろうとしている温暖化対策は、MMT(現代貨幣理論)とセットになっている。急進左派のアイコンであるオカシオ・コルテスがはっきりとそう述べているからだ。
MMTは政府が自国通貨建ての借金をいくら増やしても財政は破綻せず、インフレもコントロールできるとする理論である。MMT的なハト派の「ブレイナードのFRB」が誕生すれば、徐々にドル安を招来することになろう。
「私のキャリアの中で最もインフレ抑制の危機に瀕している」というラリー・サマーズの警鐘
クリントン政権、オバマ政権において政府の要職を務めたハーバード大学のラリー・サマーズ教授は、国際金融研究所が主催するバーチャル会議で講演し、米国やその他の国の金融政策立案者が社会問題に注意を払いすぎており、1970年代以降のインフレに対する最大のリスクに十分注意を払っていないと警告した。
サマーズは、いわゆる「進歩主義者」は、自分たちの美徳や、より大きな政府への依存をこれまで以上に誇示しようとしているが、それは元財務長官にとっては余計なことだろう。
彼は、米国やその他の国の金融政策立案者が社会問題に注意を払いすぎており、1970年代以降のインフレに対する最大のリスクに十分注意を払っていないと警告した。
「自分たちがどれだけ社会的に関心を持っているかで自分たちの存在感を出そうとしている中央銀行家たちばかりだ」、「彼らは自分がどれだけ社会的に関心があるかで自分の存在感を出そうとしているのだ」、「米国では、私のキャリアの中で最もインフレ抑制の危機に瀕している」と、サマーズは語っている。
サマーズは、現在の労働力不足が賃金を上昇させ、すでに新しいテナントの月々の家賃が、以前のテナントが支払っていた家賃よりも平均して17%上昇していることを説明し、「QE(量的緩和)の有害な副作用」が政策担当者に認識されていないと指摘した。
人種の「公平性」や気候変動という"Woke"(覚醒)が大流行だが、FRBは専門である金融政策に集中するべきだ。
緩和的な財政および金融政策は、今のところ労働者の収入のシェアを増やすのに役立つかもしれない。しかし、時間の経過とともに、同じ要因がより高いインフレまたはスタグフレーションを引き起こす可能性がある。
インフレに対処するために非伝統的な政策を段階的に廃止し、政策金利を引き上げれば、大規模な債務危機と深刻な不況を引き起こすリスクがある。
しかし、緩い金融政策を維持すれば、二桁台のインフレに陥り、次の負の供給ショックが発生したときに深いスタグフレーションに陥るリスクも高い。
中央銀行は事実上独立性を失っており、債務危機を回避するために巨額の財政赤字をマネタイズするしかなくなっている。公的債務も民間債務も急増しており、債務の罠に陥っている。今後、インフレ率が上昇するにつれ、中央銀行はジレンマに直面する。
QEではインフレにならなかったが、MMTという給付金経済をやれば、企業は生産しない。インフレを促すのは自明のことであろう。
この過剰流動性相場の終わりのシグナルはインフレ(スタグフレーション)だ。株価が暴落するのは、スタグフレーションになったときである。
そうなれば、中央銀行は利下げも量的緩和もできない。この先到来する景気後退期に、米国は追加緩和とMMTで対処せざるを得ないであろう。だが、それもインフレになったら不可能となる。
資本主義社会というのは利益(プラス)の分配もするけれど負債(マイナス)の分配もするのである。株価の下落・増税・リストラ・賃金カットなどは負債の分配の過程であって最終段階ではない。
古今東西、歴史が教えてくれることは、「膨大なマイナスの分配にはインフレが必要」なのだ。そして、いつもインフレの犠牲になるのは政府や企業でなく個人である。我々が資産運用をする究極の目的はインフレへのヘッジに他ならない。
一過性というインフレが永久的な間違いにつながる…
米国の消費者物価が跳ね上がっている。米労働省が13日に発表した9月の消費者物価指数(CPI)は、前年同月比の上昇率が5.4%と、2008年7月以来の最高を更新した。5カ月連続で5%以上に高止まりしている。
変動の大きい食品とエネルギーを除くと上昇率は前年同月比で4.0%と、前月と変わらない水準であったが、世界的なサプライチェーンの混乱や異常気象などによって供給制約が起き、エネルギーを中心とした商品価格が上昇、物価に影響を及ぼしている。
CPIの推移
CPIを項目別に見ると面白いことが浮かび上がってくる。個別に値上がりが目立つのは、エネルギー(41.7%)、中古車価格(24.4%)、そして肉、鶏肉、魚、卵などの食品価格(10.5%)である。全体のCPI(5.4%)からこの3項目を除くと、上昇率は2.7%にとどまる。
つまり、中古車を購入する予定がなく、ビーガン(完全菜食主義者)であれば、なんとか3%未満のインフレにとどまっているということになる。FRBは、8月に開催したFOMC(米連邦公開市場委員会)において、2%の物価上昇率を目指す政策指針を修正した。
新たな金融政策の目標として「当面の間は2%を上回るインフレ率を目指す」とした。喜ばしいことに目標は今のところ達成されている。
次のグラフは、2000年以降のCPIにおける食品のインフレを示したものである。2000年から2013年にかけて、循環的な食品インフレがあった。
循環的とされているのは、経済成長とともに上昇してきたからである。2014年から2020年にかけて、食品インフレは約2%前後を推移していた。
現在の食品インフレは、先の2つとは異なり構造的なインフレだ。コロナウイルスのパンデミックによって経済が閉鎖されたことでサプライチェーンが一時的に停止を余儀なくされた。
経済の再開に伴い、再びサプライチェーンは動き始めたものの、あらゆるところに歪みは残り、2021年5月に2.1%だった食品インフレはわずか4カ月で二桁台に上昇している。食品価格の高騰は消費者のインフレ期待に直接影響を及ぼす要因だ。
食料品価格の消費者物価指数
FRBはサプライチェーンの問題に直接対処することができない。米国の社会的風潮に便乗して“Woke”(覚醒)したFRBは、この食料インフレをどのように抑えていくのだろうか。
FRB設立前の100年間に起きたインフレは、設立後の100年間に起きたインフレの半分に満たなかったのである。米国がインフレ(スタグフレーション)にならない保証はないだろう。
NZドル相場は9月をボトム(底)に年末まで反発しやすい傾向を持っている!?
株式市場は5月から10月の半ばまではよくてレンジ相場で、買いトレンドが発生しにくい。したがって、株式投資の王道投資手法は「10月末に買って翌年の4月末に売る」という「黄金の半年投資ルール」である。
歴史的にみて、例年7月半ばから9月までは米国株が下げやすく、この時期はクロス円相場の下落に注意が必要な時期である。
NZドル相場が「9月をボトム(底)に年末まで反発しやすい傾向を持っている」ことは、7月8日のレポート「クロス円相場の年間の買い場はどこか!?」で述べたが、今後もまだ買いチャンスはありそうだ。
NZドルのシーズナリーチャート(過去20年の平均)
NZドル/円(日足)
相場に絶対はないが、米国株のシーズナリーチャートとNZドルのシーズナリーチャートから導かれるNZドル投資の確率的な答えは、9月と11月に逆張りのNZドル買いを狙うことだ。
NZドル/円相場は8月の下げに注意しなくてはならない。中期的には9月のボトムが買い場だが、筆者は毎年11月の頭に裁量取引でNZドル/円と米国の株価インデックスを買っている。もちろん、ストップロス注文は必須である。
英中銀も来月の利上げか…
ベイリーBOE(英中銀)総裁は10月17日に、「中期的なインフレやインフレ期待へのリスクが見られれば、BOEは行動する必要がある」と発言した。短期金融市場で高まる年内利上げ観測を否定していない。
このため、ゴールドマンサックスやJPモルガンは18日のリポートで利上げ時期の見通しを11月に前倒しし、来年も追加利上げがあるとの予想を示している。
ブルームバーグの報道によると、JPモルガンのエコノミスト、アラン・モンクス氏は「11月に政策金利が0.25%まで引き上げられ、来年8月までに0.75%に達すると予想している」という。
英国の利上げ観測を受けて、ポンド/円は上昇トレンド相場を展開している。相場はまだ若く、もう一段の上昇があってもおかしくない。
ポンド/円(日足)
10月20日のラジオNIKKEI『楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー』
10月20日のラジオNIKKEI『楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー』は、永倉弘昭さん(楽天証券FX事業本部長)をゲストにお招きして、「円独歩安相場」、「年末までのトレード戦略」、「ドル高が進み過ぎると、WHはパニックに?年明けのドル相場には要注意」、「グリーンフレーションと原油高」、「米中間選挙とドル高相場」というテーマで話をしてみた。ぜひ、ご覧ください。
(*楽天証券のCFDでは、10月4日(月)よりゴールド、シルバーに続き原油のお取引ができるようになりました)詳細はこちらをご覧ください。
ラジオNIKKEIの番組ホームページから出演者の資料がダウンロードできるので、投資の参考にしていただきたい。
10月20日: 楽天証券PRESENTS 先取りマーケットレビュー
(石原 順)
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