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中国「6中全会」はなぜ重要なのか?習近平3期目突入への布石

トウシル / 2021年11月11日 6時0分

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中国「6中全会」はなぜ重要なのか?習近平3期目突入への布石

 現在、中国の首都・北京で、第19期中央委員会第6回全体会議(6中全会)が開かれています。11月8~11日まで4日間の日程。中国共産党が歴史上3度目の「歴史決議」という文書を採択する予定で、極めて重要な政治会議になります。

 習近平(シー・ジンピン)総書記が同会議・決議を通じて「勝負」に出るとはどういうことなのか、今回解説します。

中国は政治の国

 中国には多くの重要な政治会議があります。扱う分野は経済や外交、民族、文化、軍事、党内建設、イデオロギーなど多岐にわたり、会議にも、中央政治局会議、国務院常務会議といった定期的に行われるもの、全国人民代表大会や中央経済工作会議といった年1回行われるもの、そして5年間に1度行われる最重要会議である党大会などがあります。今回の6中全会とは、党大会の間に原則7回開かれる中央委員会全体会議の一つに位置付けられます。

 中国は政治の国。

 しばしば、そんなふうに言い表されることがありますが、私もそう思います。会議が扱うテーマや性質はさまざまであるものの、共通しているのは「政治会議」の一点だといえます。

 つまり、9,000万人以上の党員を抱える世界最大の政党である中国共産党が、政治的に重視する会議、そして政治の方針や戦略を定めることに影響を与える会議であるということです。

 今回の6中全会は、その中でも特に重要な会議です。習近平政権の今後だけでなく、党国体制の中国の方向性そのものを左右するようなインパクトを持ち得ると、私は捉えています。

 会議の結果や中身については、閉幕後に公になる文書、およびそれを取り巻く各種事象を詳細に分析しなければならないため、次回のレポートで検証予定です。

 本稿では以下、今回の「6中全会」がなぜそれほどのインパクトを持ち得るのかを解説します。

焦点は「歴史決議」。習近平が勝負に出る

 最大の焦点は、「党の100年にわたる奮闘の重大な成果と歴史経験に関する決議(歴史決議)」を採択することです。過去に採択された「歴史決議」は二つあります。

 一つ目は、1945年の第6期7中全会で採択された「若干の歴史問題に関する決議」。「整風運動」を背景に党の進路や政策に関する誤りを総括し、一部党幹部に反省を要求したことによって、毛沢東(マオー・ザードン)は最高指導者としての歴史的地位を確立しました。

 そして二つ目は、1981年の第11期6中全会で採択された「建国以来の若干の歴史問題に関する決議」。文化大革命の弊害と後遺症を総括することで、鄧小平(ダン・シャオピン)は最高指導者としての歴史的地位を確立したのです。

 同じく習総書記が「歴史決議」の採択を通じ、毛、鄧両氏の次にあたる「第3世代指導者」という歴史的地位を確立しようとしている最大の根拠は、この二人の指導者の経緯であると思われます。

 ところで、「第3世代」という言葉に違和感を持たれる方もいると察します。過去の総書記だった江沢民(ジャン・ザーミン)が「第3世代」、胡錦涛(フー・ジンタオ)が「第4世代」の指導者であり、習近平は「第5世代」に当たるのではないかという疑問です。実際、習近平を「第5世代指導者」だと位置づける見方や議論もあります。

 マニアックすぎる説明は割愛(かつあい)するとして、結論を言えば、江、胡両氏は、真の意味で「第X世代指導者」には含まれません。

 習総書記とて、江、胡両氏の功績を否定するわけではありません。実際に、あらゆる政治会議で、両氏の功績を称(たた)えてきました。ただ、中国共産党、中国の発展の歴史という大きな視点と枠組みで捉えた場合、実質的には「第3世代」なのです。

 10月18日、中央政治局会議が発表した次の部分を見てみましょう。

「中国共産党と中国人民は英勇、頑強な奮闘で世界に厳かに宣告した。中華民族は『立ち上がる、富む』から、『強くなる』への偉大な飛躍を迎えていることを。中華民族の偉大なる復興は不可逆的な歴史の発展過程に突入していくことを」

 私から見て、習総書記率いる中国共産党指導部が、真の意味での最高指導者は、中国の歴史の中で3人(3世代)しかいないと政治的に定義する状況証拠が、まさにこの部分なのです。

「立ち上がる」(毛沢東)、「富む」(鄧小平)を引き継ぐ形で、「強くなる」ことが中国共産党、中国の歩みであり展望なのです。それがアヘン戦争以来、屈辱を受け続けてきた中華民族(=中国人民)にとって最後のピースを埋めることであり、習近平の歴史的任務だという位置づけ、目標設定なのです。

 毛沢東、鄧小平に次ぐ「第3世代」の指導者として、歴史的地位を政治的に確立すること。これこそが、習総書記が中国共産党百周年という節目の年に「歴史決議」の採択を試みるマクロ的動機といえますが、ミクロ的動機もあるのです。

 それは、第3期目への挑戦であり、最高指導者として2期10年を終える2022年秋第20回党大会以降の続投です。

 習総書記はすでに憲法改正を通じて国家主席の任期を撤廃しているため、「終身指導者」になることは制度的には可能です。

 一方で、党内外には、依然としてそれに反対する声や勢力が存在する。習総書記はいまでも「見えない政敵」と常に戦っている。2022年秋以降の続投を現実的に可能にするためには反対勢力を黙らせ、権力基盤の完全強化を狙う。そのために党百周年という最高のタイミングに「歴史決議」を採択するのです。

国家戦略から見る中国経済の新常態

 ここまでは政治の話をしてきました。

 中国は政治の国。

 この考え方からすれば、政治は経済に乗っかり、重なるのです。

 習総書記がこれまで説明したような流れと思惑に基づいて「歴史決議」を採択し、その一つの結果として、2022年秋以降も最高指導者として続投となればどうなるでしょうか。経済の構造や市場の在り方にも深い影響を及ぼすと、私自身は考えています。

 先々週のレポートでは、習総書記の肉声をひもときながら「共同富裕」という国家戦略について解説しました。そこでは、習総書記が2035年、2049年を明確に視野に入れながら、長い目でこの戦略に向き合っていこうとしている姿勢を浮き彫りにしています。

「一つ目の百年目標(共産党結党百周年)」が終了する2021年に、史上3回目の歴史決議を採択する理由は、「二つ目の百年目標(建国百周年)」に設定される2049年を視野に入れているからにほかなりません。そして、そこに向かって2035年を中間地点に伸びていくのが「共同富裕」なのです。

「歴史決議」の採択や習政権の3期目突入に大きく関わる話ですが、「共同富裕」の提唱は、「先富論」を容認する形で高度経済成長を促してきた「鄧小平旧時代」に別れを告げ、「習近平新時代」への歴史的大転換を意味します。

 習総書記は、過去10年間(2011~2020年)で倍増させたGDP(国内総生産)・一人当たりGDPを、これからの15年(2021~2035年)でさらに倍増させる目標を掲げています。

 そのためにはもはや「先富論」では成し遂げられない。「共同富裕」を通じて、いまだ人口の半分以上を占める低所得者層や4億人いるとされる中間層を富ませることで、「経済の底上げ」をしていかなければならないと考えているのです。

 経済の底上げを推進する過程で、経済力と軍事力で米国を超越し、祖国を完全統一(台湾問題の解決)するためには、自らが3期目以降に挑まなければならない。そのためには今のタイミングで「歴史決議」を採択しなければならないという思惑だと私は分析しています。

 これまでも本連載で扱ってきましたが、中国経済・市場における一連の規制強化は、究極的にいえば、習総書記が「共同富裕」を推進するための表象でしかありません。

「先富論」に乗っかって勝ち組となったイノベーション企業の「勝ち逃げ」を許さず、「共同富裕」を推進していくために、富の再分配への行動や貢献を促す場面が常態化していきます。まさに「新常態(ニューノーマル)」です。

 今後、党・政府の市場や企業への監督や管理は続いていきます。時に強化されます。低所得者層や中間層の権利や利益を守ることで、「彼らの富を増やすことでしか、経済の底上げは達成されない」と習総書記が考えているからです。

 こう見ると、習総書記が6中全会を通じて「歴史決議」を採択することと、中国経済の構造や市場の在り方が無関係でないどころか、密接にリンクしている現実が浮かび上がります。最後にもう一度繰り返します。

「中国は政治の国」なのです。

(加藤 嘉一)

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